立体的精密感と分厚い低音が両立した、ハイブリッド型ヘッドホンのQobuz再生

 世界的なヘッドフォンブランド、ハイファイマンは、こんにち極めて多彩なモデルラインナップを擁しているが、やはり同社のシンボリックな要素技術は、平面駆動型振動板であろう。そのテクノロジーの最新の成果が傾注されているのが、このISVARNA(イシュヴァルナ)である。

 

画像1: 『GoldenWave with HIFIMAN』注目モデルで聴くQobuz《ヘッドホンアンプ+ヘッドホン編》

Headphone Amplifier
GoldenWave
SERENADE
¥196,900 税込

●型式:DAC内蔵ヘッドホンアンプ
●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)、デジタル音声入力※系統(同軸、光、USB Type B)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、LAN端子1系統、ヘッドホン出力3系統(3.5mmミニフォーン、標準プラグ、XLR4ピン)
●寸法/質量:W300×H50×255Dmm/3.9kg

 

Headphone
HIFIMAN
ISVARNA
¥468,600 税込

●型式:平面/ダイナミック・ハイブリッド型ヘッドホン
●使用ユニット:フルレンジ平面型ドライバー、低域用ダイナミックドライバー
●出力音圧レベル:93dB
●インピーダンス:16Ω
●質量:462g
●備考:接続用ケーブル3種類付属(3.5mmミニフォーンプラグ1.5m、標準プラグ3m、XLRバランス3m)

● GoldenWaveとHIFMANの問合せ先:(株)HIFIMAN JAPAN EMAIL:info@hifiman.jp

 

 

 本機はハイブリッド型とされるが、その根拠は、前述のフルレンジ平面駆動振動板に加え、ダイナミック型ドライバー(サブウーファー)を搭載していることに依る。つまりマルチドライバー方式ヘッドホンなのである。

 この方式の問題は、極端な近接配置となる2つのドライバーユニットの位相差に人間の耳は敏感なため、それをどう解消するかという点である。今回同社は楕円形状のダイナミック型サブウーファーを開発し、独自の搭載方法と角度を設けて固定することでその課題を克服した。具体的には、アルミ製ヘッドホンハウジング内に、平面型ドライバーと低域用サブウーファーを巧みに配することで、従来型ではウィークポイントとされていた低域の音圧/レスポンスを改善したのだ。ハウジングの後側が前方に比べて分厚くなっているのは、低域用のダイナミック型サブウーファーとクロスオーバー回路を収めるスペースを確保するためだろう。実機を見ればサブウーファーのダストカバーの位置もわかる。

 その他の特徴は、既発モデルのそれに準じる。棒状磁石を横並びに配置した「ステルス・マグネット・デザイン」は、一般に生じがちな前後の音波の乱れを防ぎ、整った放射特性を実現している。その中心部にマウントされたオリジナルの平面駆動振動板は、わずか数ナノメートルの厚さで正確なピストニックモーションを約束する。

 ISVARNAには3種類のケーブルが付属する。1本は3.5mmミニフォーンプラグで1.5m長、もう1本が6.35mmの標準ジャックで3m長、さらに4ピンXLRのバランス端子ケーブル3m長が付属する。

 

画像2: 『GoldenWave with HIFIMAN』注目モデルで聴くQobuz《ヘッドホンアンプ+ヘッドホン編》

GoldenWaveのSERENADEは、USB DAC搭載のヘッドホンアンプ。今回はデラN1A/3に備わる、USB出力時に対応するストリーミング聴取機能を使ってQobuzのハイレゾ音源を再生。ISVARNAを駆動している。

 

 

ヴァイオリン独奏時の空間表現と、屹立して定位する響きに聴き入る

 今回のテストでは同社のヘッドホンアンプGoldenWave SERENADEと組み合わせて試聴を行なった。アンプ回路はAクラス増幅で、オリジナルの「HYMALAYA PRO」R2R DACを内蔵、ストリーミング対応というのもセールスポイントだ。今回はデラN1A/3をネットワークトランスポートとして用いてUSB接続、Qobuzの再生を行なった。

 

画像3: 『GoldenWave with HIFIMAN』注目モデルで聴くQobuz《ヘッドホンアンプ+ヘッドホン編》

 

 まずは標準ジャックの接続で試聴。Hiromi’s Sonicwonderの「Go Go」では、超絶ベーシストのアドリアン・フェローの素早いフィンガリングが骨太に再現された。こうした分厚いベースの音が聴けるということは、低域を受け持つダイナミック型ドライバーがしっかり仕事をしているということだ。

 あいみょんの新譜『猫にジェラシー』から、アルバムタイトル曲を聴いたが、キックドラムのパワフルかつ深く沈んだ響きが実に力強く再現されて驚かされた。ノン・ヴィブラートが特徴の彼女の歌唱も生々しく、ヴォーカル音像の定位も克明。左chのアコースティックギターのストロークは骨太にリズムを刻んでいる。

 以降の試聴は4ピンXLRバランス接続で実施した。あいみょんではバスドラムのピッチがより克明に響き、どっしりとした安定感が加わった。声もグッと前方に張り出してくる。古内東子ではしっとりとした声質が実感でき、平面駆動型ならではの微細なニュアンス描写と精密感が実感できた。「ずっと一緒に」のフレットレスベースによる細かなヴィブラートの揺らぎもしっかりと聴き取れる。

 圧巻は「ショーソン:詩曲」。ヒラリー・ハーンの独奏によるパリ管との共演だ。ハーンが体をくゆらせながら弾いているその音像の動きが曖昧にならず鮮明に捉えられている。オーケストラとの立体的な距離感、アンサンブルの緩急や強弱もクリアーに感じ取れたし、無伴奏となる独奏部での空間部の奥行表現と、屹立と定位する響きに聴き入った。

 平面駆動型は今や多くのメーカー/ブランドが採用しているが、この試聴を通じてハイファイマンがやはりこの道のイノベーターであると再認識した。

 

 

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』

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