PDNは、同社が輸入販売を手掛けているBLUESOUND(ブルーサウンド)の新展開についての説明会を開催した。ブルーサウンドは先日、フラッグシップモデルの「NODE ICON」(市場想定価格¥220,000、税込)を発表、そこにはMQAが開発した技術が搭載されていることも注目を集めた。

 そもそもブルーサウンドブランドを展開しているカナダLenbrook(レンブロック)社が2023年にMQA Labsの資産を買収しており、これらの技術が具体的な製品にどのように搭載されていくのか、注目しているオーディオファンも多かった。NODE ICONはその第一弾として「QRONO d2a」テクノロジーを搭載、他にも音声補正機能「Dirac Live Ready」にも対応するなど、様々な技術を採用してきていた。

画像: ブルーサウンドのプロダクトマネージャー、Matt Simmonds(マット・シモンズ)氏にインタビューを実施

ブルーサウンドのプロダクトマネージャー、Matt Simmonds(マット・シモンズ)氏にインタビューを実施

 今回、ブルーサウンドのプロダクトマネージャー Matt Simmonds(マット・シモンズ)氏が2年ぶりに来日、NODE ICONに始まるブルーサウンドの新展開について紹介してくれた。

 ブルーサウンドは今年でブランド誕生12年目を迎える。もともとデジタルソースに着目しており、近年はストリーミングサービスの充実に伴って同社製品でQobuzなどの高品質な音楽配信を楽しんでいるユーザーも増えているそうだ。

 マット氏によると、ブルーサウンドはPC系から誕生したのではなく、ハイファイブランドがベースとなっている点が重要だと考えているそうだ。また同社では、ハードウェアだけではなく、プラットフォームとなるBluOSも自社で製作・実現していることもポイントとのことだ。

 実際にBluOSアプリは、同社製品の初代機を含めて80モデル以上、さらに多くの他社製品(380機種以上あるとか)にも採用されており、オーディオ再生用のアプリとしての評価の高さを誇っている。言語も23ヵ国語以上対応しているそうで、今後もさらなる展開を図っていくそうだ。

画像: MQA Labsが開発したテクノロジーを4つの機能に分類している

MQA Labsが開発したテクノロジーを4つの機能に分類している

 ちなみに2年前にはBluOS 4.0をリリースしているが、その反響についてマット氏は、「市場からはひじょうにいいリアクションをいただいています。特にBluOS 4.0では、より直感的な操作でストリーミングを楽しんでいるというお話もうかがっています。また定期的にアップデートを行うことによって、カスタマーからの信頼を得ています」と話していた。

 MQAについては、もともとのスタッフも含めて買収しており、それらの技術的、人的資産を活かして製品的に組み込んでいくとのことだ。そこではMQA Labsが開発していた技術を「MQA FOCUS」「MQA」「MQA AIRIA」「MQA QRONO」の4つに分けて別個に搭載、ライセンスしていく。

 ちなみにMQAでは、自然なサウンドの再現には音が空気中をいかに自然に伝わるかがポイントで、そのインパルスレスポンスを正確にするためには時間精度(タイムドメイン)が重要だと考えているそうだ。

画像: MQAが考える、デジタル音声でのタイムドメインでの問題点。A/D変換を行う際にどうしても音のつながりに段差が生じて滑らかさが失われ、同時に左右の定位にもズレ(違和感)が発生するとのこと

MQAが考える、デジタル音声でのタイムドメインでの問題点。A/D変換を行う際にどうしても音のつながりに段差が生じて滑らかさが失われ、同時に左右の定位にもズレ(違和感)が発生するとのこと

 ただし、近年のデジタルオーディオではどうしても時間精度が狂いがちで、結果として音が不鮮明になり、ぼやけてしまう事が多いという。その理由として、サンプリング周波数が44.1/48kHzのデジタルデータでは600マイクロ秒(5000分の3秒)ほど、192kHzでは120マイクロ秒(25000分の3秒)前後の間隔で音を分割しているため、音の滑らかさが失われるという。

 これに対し人間の耳と脳は、8マイクロ秒(125000分の1秒)まで識別できるそうで、音に間隔が生じる(波形が階段状になる)ことが、音のぼやけにつながっている可能性があるとマット氏は説明してくれた。MQAではこれらの問題を認識した上で、いかにアナログに近づけていくかということを目指しているのだ。

 そのための技術が先に書いた4つの中の「MQA FOCUS」と「MQA QRONO」で、それぞれA/D、D/A変換に関連したものとなる。

画像: 今回は「MQA FOCUS」と「MQA QRONO」について詳しく解説していただいた

今回は「MQA FOCUS」と「MQA QRONO」について詳しく解説していただいた

 まずMQA FOCUSは、A/D変換のフィルタリングを最適化することで、時間精度を高めるもの。詳細は明かされなかったが、デジタル変換した場合でも、音の不鮮明さ、ぼやけを抑えてくれるようだ。なおMQA FOCUSはA/D変換のチップに組み込んで使う必要があるとかで、同社では今後チップメーカーと協業してこの技術を採用した製品を送り出していきたいと考えているようだ。

 もうひとつのMQA QRONOは、NODE ICONに搭載済みの技術で、D/A変換時のプリ/オーバーシュートを抑制し、正確な時間精度を実現する。こちらもフィルタリング処理によるものというが、チップに実装する必要はなく、アルゴリズムをFPGA(プログラム可能な集積回路)などにインストールして、DACチップの前に配置すればいいとのことだ。

 ただしMQA QRONOのアルゴリズムはDACチップごとに最適化しており、汎用的なチップは準備しないとのこと。つまりセットメーカーがMQA QRONOを採用しようと思ったら、その機器に搭載しているDACチップチップに合わせたアルゴリズムを選ぶことになるわけで、この「最適化」というステップが高品質のキーになっているのかもしれない。

画像: 新生「NODE」シリーズに共通の特長

新生「NODE」シリーズに共通の特長

 先に書いた通り、MQA QRONOが搭載されているのは現時点ではNODE ICONのみだが、ハイレゾ愛好家の多くはポータブルプレーヤーでそれらの楽曲を聞くことも多い。そこでマット氏にMQA QRONOがこれらのプレーヤーに搭載されないのか聞いてみた。

 すると、「MQA QRONOは汎用性が高い技術なので、色々なところで使って欲しいですね」というコメントだった。具体的な製品は決まっていないのかもしれないが、今後MQA QRONOが様々な分野で展開されていく可能性はあるようだ。

 続いて、ブルーサウンドの新NODEシリーズについても説明が行われた。同ブランドからは、昨年12月に「NODE NANO」が、続いて今年2月にNODE ICONが発売されている。実は本国では両者の間に新世代「NODE」もラインナップされており、日本でも近日中の登場が期待できそうだ。

 3モデルに搭載されたDACチップはESSの「ES9039Q2M」と共通で、NODE ICONでは2基使いとしている。ヘッドホン出力(接続)は、NODE NANOはBluetooth再生で、NODEは6.3mmヘッドホン端子がひとつ、NODE ICONは同じく6.3mmをふたつ備えている点が異なっている。

画像: 左から「NODE NANO」「NODE」「NODE ICON」

左から「NODE NANO」「NODE」「NODE ICON」

 他にも、電源はNODE NANOが汎用USB Type-Cアダプターで、NODEはDC出力のフィルターを加えた内部電源、NODE ICONにはESSの専用チップ(ローノイズレギュレーター)を組み合わせて品質を向上させたタイプが使われている。

 なおNODEとNODE ICONにはARC対応のHDMI端子も搭載されており、対応テレビとHDMIケーブルでつなぐことでホームシアター的な使い方もできる。両モデルともリニアPCMに加えてドルビーデジタルのダウンミックス機能を搭載したとのことで、DVDなどの5.1chを手軽に2chで楽しむこともできそうだ(ドルビーTrue HDには非対応)。

 もうひとつ、NODEとNODE ICON はDirac Live Readyで、別途ライセンスとマイクを購入すれば自分のオーディオルームに最適化したサウンドでストリーミングなどを楽しむこともできる。NODE ICONの購入者の中にはこの機能を試したくて選んだ人もいるそうで、オーディオファンの間では比較的手軽にDirac Liveを体験できる製品として注目されているのかもしれない。

 最後にマット氏に新生NODEシリーズのそれぞれのおすすめポイントを聞いてみた。

画像: 3モデルのリアパネル

3モデルのリアパネル

 「NODE NANOは、ストリーミングエッセンシャルという呼び方をしています。小型サイズで、ウォールマウントの金具もついていますので、家の中のどこにでも設置していただけます。自宅にストリーミングを追加したいという方なら、誰にでもお使いいただけるお求めやすい価格も実現しています。

 新世代NODEは、質にもこだわるモダンカスタマーに向けた製品として、外部入力やサブウーファー出力、HDMI(ARC)端子などを備えているのが特長です。

 NODE ICONは、上質なサウンドを求めるユーザーに向けたNODEの最上位モデルで、本当にいい体験ができる、本質的にもデザイン的にも保証できる製品です」と各製品の特長を完結にまとめてくれた。

 せっかくの機会なので、マット氏に4.4mmバランスヘッドホン出力を搭載して欲しいこと、カラーバリエーションも増やして欲しいと打診してみた。

 4.4mmバランス出力については他からも言われているようで、やや苦笑いをしながら頷いていた。カラーバリエーションは「レッドは中国でも受けるかな?」という返事で、日本での販売台数がもっと増えていけば可能性はゼロではないのかな、と感じた次第だ。

画像: - YouTube youtu.be

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