コンパクトなフォルムでハイクォリティなサウンドが楽しめるシステムとして人気の高い「BLUESOUND」。ワイヤレス・マルチルーム・ハイレゾミュージック ストリーマーの「NODE」、そこにプリメインアンプ機能を追加した「POWERNODE」「POWERNODE EDGE」、さらにCDリッピング機能を備えたNASの「VAULT2i」やワイヤレススピーカーなどをラインナップしている。

 NODEとPOWERNODEは、クアッドコア1.8GHz ARM Cortex A53プロセッサーと384kHz/32ビットプレミアムDACを搭載(POWERNODE EDGEは192kHz/24ビット対応)。NASからの音楽データ再生はもちろん、eARC対応HDMI入力や、光デジタル、アナログの入出力等を備え、様々なソースを楽しむことができる。さらにLAN経由でインターネットラジオやオーディオ・ストリーミングの再生も可能だ。BluetoothコーデックのaptX HDにも対応する。

 またスマートフォン、タブレット、デスクトップコンピューター用に提供されている独自の操作アプリ「BluOS」も同ブランドの特徴だ。このアプリを使っての音楽再生はもちろん、ホームネットワーク経由で複数のデバイスを接続し、家のどこでも音楽を同期させたり、異なる音楽を同時に再生したりといった楽しみ方が可能だ。最大192kHz/24ビットのロスレス音楽を、遅延なくワイヤレス伝送することもできる。

 先般、そんなBLUESOUNDのプロダクトマネージャーであるMatt Simmonds(マット・シモンズ)氏が来日、同ブランドの歴史や今後の展開についてインタビューする機会を得た。以下でその詳細を紹介したい。

画像: BLUESOUNDのプロダクトマネージャー、Matt Simmonds(マット・シモンズ)氏

BLUESOUNDのプロダクトマネージャー、Matt Simmonds(マット・シモンズ)氏

――BLUESOUNDはスタイリッシュなフォルムや音質のよさで、近年日本でも多くのオーディオファンの注目を集めています。まずはブランドのコンセプトや成り立ちを教えていただけますか。

マット BLUESOUNDが目指しているのは、モダンであることと、先進的であるということです。BLUESOUNDは誕生10周年を迎えるブランドで、今年50周年を迎える「NAD」と「psb SPEAKERS」というふたつがベースになって誕生しました。どちらもLenbrook(レンブロック)という会社が所有するブランドです。

 Lenbrookは45年前に私の祖父が始めた会社です。カナダでハイファイブランドの輸入代理店としてスタートし、1984年にpsb SPEAKERSを、1999年にNADを買収しました。今では両ブランドの製品設計も同じ部署が手掛けています。

――最近はオーディオ趣味の流れも変わってきています。BLUESOUNDはいち早くその潮流をつかんでいたようにも思います。

マット われわれは、15年前からデジタルソースに着目してきました。2005年にYouTubeが、2007年にはiPhoneが登場しました。特にiPhoneの誕生はターニングポイントで、これにより消費者が動画や音楽を鑑賞するスタイルが大きく変わり、メーカーとしてその変化に直面することになったのです。今後どうするかを考えていかないと、オーディオが斜陽産業になってしまうだろうと判断しました。

画像: 2013年に発売されたBLUESOUNDの第一世代モデル

2013年に発売されたBLUESOUNDの第一世代モデル

――いつまでもアナログ技術だけではやっていけないと。

マット ハイファイメーカーは、変わるか、滅びるかという決断が必要だったのです。そのために新たな光が当たる部分を見つけなければいけませんでした。

 われわれもNADをどうすべきかを模索しました。もちろんデジタル対応は避けられませんでしたので、ひとつの方法として外部から買ってきたモジュールセットを商品に組み込むという手段を考えました。メリットとしては短期間で製品を形にできるということと、開発の投資額を安く抑えられるという点があります。一方でネガティブな面として、機能が限られてしまうので、やりたいことがすべてはできないということがありました。

 さらにもうひとつ重大な問題として、メーカーが供給をやめてしまうと、継続性がなくなってしまう可能性があります。というのも、以前あるモジュールを搭載した製品を出そうとしたんですが、発売前にそのモジュールを製造する会社がなくなってしまったのです。そういう経験を踏まえて、チップ開発から自分たちで手掛けていこうと決断しました。

 その際にNADやpsb SPEAKERSブランドで製品を出すのではなく、新しいブランドとしてBLUESOUNDを設立しました。近年の売上では、BLUESOUNDがNAD、psb SPEAKERSを抜いて一番に成長しました。

画像: こちらは現行の第二世代モデル。本国ではサウンドバーもラインナップしている(日本では未発売)

こちらは現行の第二世代モデル。本国ではサウンドバーもラインナップしている(日本では未発売)

――BLUESOUNDでは、ブランド誕生の頃からチップやデジタル回路を内製していたんですね。

マット その通りです。新ブランドとしてすべてゼロから開発しています。ハードウェアもそうですし、ソフトウェアに関してもひじょうにお金はかかるのですが、それでも自社開発することにしました。もちろんスタッフの確保もたいへんでした。最初は少人数でしたが、開発セクションや目的に合わせたエンジニアを徐々に増やしていきました。

 こうして完成したのがBLUESOUNDの第一世代機です。ファンクションとしては今の製品とまったく同じですが、デザインはかなり違っていました。ハイファイモデルだけど従来の製品とは違う新しさを出したいと考えて、ニューヨークのデザインセンターにお願いしました。最新モデルでも同じ会社が手掛けています。

 BLUESOUNDのミッションとして、“HiFi for a wireless generation”を掲げて、よりハイファイで、多くの人が手の届きやすいブランドを目指しました。その一方で、従来のオーディオファイルに対しても、ストリーミングとは何かということを理解していただけるような商品を目指しています。

 日本市場では2019年に「NODE 2i」を発売しましたが、デザインは第二世代から変わっていません。第二世代機からは、第一世代機に対するユーザーの意見を聞いた上で、現在のニーズにフィットしたデザインにしています。

画像: 今年の2月に発売された「POWERNODE EDGE」(市場想定価格¥99,000、税込)は、最大192kHz/24ビットのハイレゾ音源の再生に対応し、プリメインアンプ機能も備える

今年の2月に発売された「POWERNODE EDGE」(市場想定価格¥99,000、税込)は、最大192kHz/24ビットのハイレゾ音源の再生に対応し、プリメインアンプ機能も備える

――BLUESOUNDが誕生した2013年当時は、ハイレゾ再生といってもダウンロードした音源を使うのが主流でした。しかしBLUESOUNDでは当時からハイレゾストリーミング。しかもワイヤレスでの再生を意識していたのですね。

マット 当時は、ワイヤレス再生はできるけれどハイレゾには非対応という製品も多かったのですが、BLUESOUNDではハイレゾ再生ができることを重視していました。当時から、ワイヤレスであってもハイレゾを扱うようになると考え、この機能は絶対必要だという確信を持っていたのです。

 開発チームとしてはNADとエレクトロニクス面での開発をシェアしていますし、psb SPEAKERSがスピーカー一体型モデルの設計を受け持っています。また目的別のソフトウェア開発チームも準備しています。アプリケーションや箱の開梱時の感動を含めて、ドイツの専門チームがユーザー体験についての研究を担っています。

 今日では、BLUESOUND用に開発したモジュールがNADの製品に入っていますし、先日発表されたpsb SPEAKERSの製品にもBluOSが搭載されています。ワイヤレスに親しんできたオーディオファンは、クォリティとともに利便性を求めています。BLUESOUNDの製品はそのどちらも兼ね備えているのがポイントです。

 またBLUSOUNDの製品は、本格オーディオの第一歩という重要なポジションも担っていると考えています。ヘッドホンリスニングから始まって、BLUESOUNDの製品を使うことで、再生機器を変えることで音が良くなるという経験をしてもらえたら、そこからアップグレードしていってもらえるのではないでしょうか。

画像1: BLUESOUNDが、新たな操作アプリ「BluOS 4.0」をリリース。ブランドの歴史と進化点をプロダクトマネージャー、マット・シモンズ氏に聞いた

――さて操作用アプリのBluOSは、BLUESOUND以外の製品でも採用されるなど、ひじょうに高い評価を集めています。

マット BLUESOUNDはハードウェアのブランドで、BluOSはそのための制御ソフトです。弊社では、ハードとソフトのふたつを同時に手掛けてきているということも重要なポイントです。

 BluOSはオープンアプリで、モニターオーディオやDALIといったブランドの製品にも採用いただいていますが、弊社から売り込んだわけではありません。操作用アプリとしての価値を高めることで、各ブランドの方からBluOSを搭載したいというオファーをいただいています。

――それだけのアプリとなると開発もたいへんだと思います。BluOSの開発でもっとも苦労した点はどこでしょう?

マット 基本的にはソフトウェア全般です(笑)。日本ではあまり使われていませんが、最大64部屋のマルチルームで使えるという機能の搭載がひじょうにたいへんでした。またネットワーク環境はユーザーの部屋ごとに異なりますので、そこにどう対応するかが難しかったですね。

 また、これも大きな特徴として、BluOSそのものはハードウェアの世代を超えて使えます。つまり、BLUESOUNEの初代モデルでも最新世代でも、同じように操作できるのです。もちろんハードウェア的な対応が必要な場合は別ですが、アプリのアップデートを重ねることによって、どの世代のNODEでも同じように操作できるのは重要だと考えています。

画像2: BLUESOUNDが、新たな操作アプリ「BluOS 4.0」をリリース。ブランドの歴史と進化点をプロダクトマネージャー、マット・シモンズ氏に聞いた

――今回、そのBluOSが進化するそうですね。

マット はい、BluOS 4.0をリリースします。もちろんこのバージョンでも初代モデルから操作可能です。変更点としては、ユーザーの体験をさらに高められるように、メニュー下部に新しいボタンを追加しました。これまでは画面のあちこちから操作していましたが、今回はボトムに集約して、操作性を向上しています。

 まず「Home」ボタンを新設しました。今までのBluOSでは、今どの画面に居るのかが分かり難かったんですが、これを押せばホーム画面にダイレクトに戻れるようになりました。

 「Favorites」は、「Playlists」「Albums」「Artists」といったカテゴリーから、よく聞くジャンルを中心に並べ替えることができるものです。ここに関しては、現在のメニューを少しモディファイして搭載しています。

 「Players」では、再生している機器によってボトムのアイコンも変えています。「Search」は、これまではひとつの項目で検索したら、次に別の項目を入力するのにバックを押してトップ画面に戻らなくてはいけませんでした。しかし今回は「Search」ボタンを押すことでダイレクトに戻ることができます。

 最後は「Now Playing」で、再生中の楽曲と「Play Queues」をワンタッチで切り替えることができます。またジャケット画像の下にサンプリング周波数とビットレート、音声フォーマットが表示されるようになりました。この機能については、日本だけでなく、世界中からリクエストがあり、搭載を決めました。

 「News & Update」というユーザーコミュニケーションを目的とした機能も追加しています。ここでは、弊社からのアップデート情報などのお知らせする予定です。ただ、BluOSは複数のブランドで使われていますので、ブランドによって機能の詳細が違ってくる可能性もあり、断言はできないのですが。

画像3: BLUESOUNDが、新たな操作アプリ「BluOS 4.0」をリリース。ブランドの歴史と進化点をプロダクトマネージャー、マット・シモンズ氏に聞いた

――BluOS 4.0は日米で同時にリリースされるんですか?

マット 現在最終作業を進めていますが、英語版と日本版は同時にリリースできる予定です。モバイル用のBluOSは世界20数ヵ国の言語に対応しており、BluOS4.0もそれに準じていきます。PC用は引き続き英語版のみになります。

 他社製品との互換性についてもよく質問されますが、BluOSはセキュリティの観点からUPnP(※)に対応していないのです。ローカルファイルに対してアクセスできないといった質問もいただきますが、そこは現状では難しいですね。またUPnPを使うとソフト制作のハードルも上がるので、その点も問題です。 ※UPnP:ユニバーサルプラグアンドプレイの略。ネットワークに接続している機器同士を接続するための機能

――最近のストリーミングでは空間オーディオも注目を集めていますが、BLUESOUNDの製品は空間オーディオに対応する予定はありますか?

マット もちろんです。いつ始められるかは決まっていませんが、内蔵CPUは空間オーディオ信号を処理できる能力を持っていますし、先程申し上げたようにBluOSは自社開発ですので、今後対応していくことになるでしょう。その際には本体のソフトウェアアップデートで対応して、初代モデルから空間オーディオを楽しんでいただけるようにしたいと思っています。

――最後に、今後のBLUESOUND製品の予定を教えてください。

マット 弊社の製品は基本的にはソフトウェアでアップデートできるので、そんなに頻繁にモデルチェンジする予定はありません。今後もマーケットの流れを見て、ハードウェアの大きな変更があったらモデルチェンジを考えるといったラインナップ拡充を考えていきます。

――今日はありがとうございました。(取材・まとめ:泉 哲也)

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