ネットワーク伝送のノイズ低減こそ、Qobuz高品位再生の最大の勘所である
世界で初めてオーディオ用サーバーの世界のドアを開いたDELAは、今やQobuzを受信するに必要なあらゆるデバイスをトータルに供給する、ネットワークオーディオの総合メーカーに成長した。母体となっているバッファローブランドの無線LANルーター、DELAブランドのオーディオ用ハブ、同サーバー/ネットワークトランスポート(以下、DELA流の表記に従ってミュージックライブラリーと称す)、同オーディオ用LANケーブル、そして光アイソレーション関連機器……と、まさにDELA製品だけで堂々のQobuzシステムが組めるのである。ないのは最終のUSB DACだけだ。
本記事ではサーバーのN100、ハブのS100/2、光アイソレーションのOP-S100、OP-SFPの音再現力を検証した。LANケーブルはDELAのC100、ハブは視聴室常設のバッファローBS-GS2016/A。USB DACはデノンのSACD/CDプレーヤーのDCD-SX1 LIMITEDのDAC入力を活用する。Qobuz音源は「チーク・トゥ・チーク/情家みえ」、「中央フリーウェイ/荒井由実」に加え、ペルトコスキ指揮ドイツ・カンマーフィルの『モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」』から「第1楽章(以下、ハフナー)」。
DELA

写真(左)N100-S20-J、(右)S100/2
Network Audio Transport / Music Server
N100-S20-J
¥198,000 税込
●型式:ネットワークオーディオトランスポート/ミュージックサーバー
●ストレージ容量:SSD 2Tバイト
●接続端子:USB Type A端子3系統(USB2.0×3)、LAN端子2系統(RJ45)
●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、TIDALほか
●対応アプリ:OpenHome対応アプリ、UPnP/DLNA対応アプリ
●備考:Roon Ready対応
●寸法/質量:W215×H61×D269mm/約3kg
●ラインナップ:HDD 1Tバイト仕様(N100-H10-J、¥151,800税込、在庫限り)あり
Switching Hub
S100/2
¥168,000 税込
●型式:スイッチングハブ
●接続端子:LAN端子9系統(100Mbps対応RJ45×2、1,000Mbps対応RJ45×6、SFP×2[1,000Mbps RJ45端子1系統とSFP端子は共用])
●寸法/質量:W215×H61×D270mm/約2.5kg
●カラリング:シルバー、ブラック
●問合せ先:(株)バッファローサポートセンター TEL. 0570(086)086
接続 ① N100でQobuz再生、爽快な勢いがほとばしるサウンド
N100はハーフサイズのミュージックライブラリー。DELAのミュージックライブラリーは、OpenHome対応によりアプリはLINN Appやリン製KAZOO AppなどでQobuzのストリーミング再生が外部DACと連動して使用可能。
「チーク・トゥ・チーク」はシンプルにして、レンジ感の天井が高く、ヌケがクリアーだ。雑味が整理され、すっきりとまとまった印象。HiVi視聴室常設のフルサイズ機N1A/3(生産完了)に比べると、どちらのグレードが上か下かというより、音の進め方が異なるのが面白い。N1A/3は情報量が多く、エッジを鮮明にし、くっきりと音像を描く。一方、N100はやや細身の印象だが、音の構造が丁寧に整理整頓され、クリーンなすがすがしさが感じられる。ピアノがエレガントで、ヴォーカルの伸びも清涼。
「中央フリーウェイ」も明瞭で、粒立ちが細やか。ユーミンの尖鋭さも過度に強調されることなく、明快で、すきっとした声質だ。ダブルトラックの歌声も伸びやかで、心地好い。「ハフナー」は爽快な勢いがほとばしる、清冽な音だ。やや編成が小さくなったような印象も。

接続 ① - ② N100で購入音源の自動ダウンロード機能を試す
DELAのミュージックライブラリーはe-onkyo music時代から購入した音源ファイルの自動ダウンロードが可能だった。同機能はQobuzでも受け継がれて、Qobuzアカウントがあれば、自動的にダウンロードしてくれる。ミュージックライブラリーの機能で一旦アカウントにログインし、自動ダウンロード機能を有効にすると、そのアカウントデータに紐づいて、自動ダウンロードを行なう。アカウント設定時の本体での細々としたボタン操作は不要になったことが新しい。


DELAのミュージックライブラリーでは、Qobuzのダウンロードストアで購入した音源を自動でダウンロードできる「自動ダウンロード」機能を実装している。この機能を使うには、本体の自動ダウンロード設定でアカウントの登録が必要だが、Qobuzのストリーミング機能をすでに使っている場合は、そのアカウント情報が再利用できるので、本体ボタンを操作しての文字入力が不要になった。文字入力を省略できるのは、非常に便利だ。あとはパソコンやスマホを使い、音源を購入すれば、自動で購入した音源がダウンロードされる仕組みだ
DELAのミュージックライブラリーは、ストリーミングサービスのリアルタイム再生と、購入音源を内蔵ストレージにダウンロードしたうえでの再生の両方が可能だ。一般的には、このふたつにはネットワークプレーヤーとダウンロード用PC(と内蔵ストレージ)の2台が必要で、サーバーにコピーする手間もかかる。でもDELAのミュージックライブラリーなら1台でこなせることに加え、この自動ダウンロードもサポートするのである。その意味でまさにQobuzを最大限に楽しめるコンポーネントといえよう。帰りの通勤電車内で、Qobuzのウェブサイトにて音源データを購入し、帰宅するとDELAのミュージックライブラリー内にダウンロードされている。DELAのミュージックライブラリーは1時間おきにQobuzに購入楽曲の有無をサーバーにチェックしているという。今回も視聴室で試したが、実にスムーズなダウンロードの動作であった。

DELAの「ミュージックライブラリー」とは、ネットワーク接続されたストレージ内の音楽ファイルをネットワーク機器に配信する「ミュージックサーバー」(=NAS)の機能を備えつつ、自身とUSB接続されたD/Aコンバーターと一体化してネットワークプレーヤーとして動作する「ネットワークトランスポート」機能の両者を包含した存在を示す製品ジャンル。そのほか、CDドライブとの連携で、CDダイレクト再生機能を実装したり、ストリーミングサービスの再生機能を備えたり、非常に多機能な存在である。使い勝手も考え抜かれており、ネットワークオーディオファンにとって極めて有益な製品群だ。ハードウェア構成やストレージ種類/容量などで様々なグレードの製品が用意されている。N100は、1TバイトSSDを搭載したハーフサイズ筐体の製品だ
接続 ② S100/2ハブの効果、鮮明がキーワードの音質
S100/2はDELAのオーディオ用スイッチングハブS100をベースに電源回路を強化し、さらにポート仕様を変更したハーフサイズモデル。HiVi視聴室常設のハブ、バッファローBS-GS2016/Aと比較した。LANポートは、100Mbpsと1Gbpsが選べる。ミュージックライブラリーはN100。曲は「チーク・トゥ・チーク」。まず「100Mbpsポート」にC100ケーブルを繋ぎ聴く。非常に清涼な質感。伸びがクリアーで、細身のヴォーカルの表情が豊かだ。「鮮明」がキーワードか。「1Gbpsポート」はわずかにニュアンスが異なるが、やはり優秀な音だ。低音がリッチで発音が優しい。ヴォーカル音像は少し遠ざかるがジェントルで、ヌケが良い。

DELAは2014年の創業時からネットワークオーディオの高品位の鍵として、ネットワークハブ(=ネットワークスイッチ)の存在を重視していた。その第一世代がバッファローの業務用ハブをオーディオ再生用にカスタマイズしたBS-GS2016/A。その系譜を受け継ぐ製品として2019年にオーディオ/AV用にオリジナル設計を施したS100を、翌2020年には電源分離型S10をリリース。S100/2は、S100の電源を強化するとともに、ポート仕様を変更して2022年に登場したモデルとなる。なお、2024年にはハブのフラッグシップモデルS1(¥1,430,000税込)をリリース。驚異的な品位向上効果と、ポートの速度設定を前面ボタンで自在に設定できる新機軸を打ち出し大きな話題となっている

S100/2は、RJ45端子が8系統(100Mbpsポート×2+1,000Mbpsポート×6)、さらにSFPポートを2系統を備えている(ポート8は、1,000MbpsRJ45とSFPで共用)。最大で192kHz/24ビット/FLAC形式の音源データの転送となるQobuz再生なら、100Mbpsで十分な速度を確保できるので、100Mbps対応ポートがノイズの点で有利かもしれない。パソコンやWi-Fiルーターなど1,000Mbps対応機器との接続は、1,000Mbpsポートの接続が望ましいとしている
接続 ③ OP-S100光絶縁セットは効果抜群。低ノイズを実感
伝送系の途中に光ファイバーを介在させ、銅線ケーブルが伝送するノイズをシャットアウトする「光アイソレーション」がネットワークオーディオ愛好家の中で話題となっている。DELAはその推進役を果たしているが、Qobuz再生ではどんな効果があるのかを試す。DELAは、様々な形態で光アイソレーション効果を享受できるアイテムを提供している。ポイントは標準的な通信機用インターフェイスのSFP(Small Form Factor Pluggable)ポート。専用トランシーバーの使用により、電気信号と光信号の変換が可能になる。
SFPポートがないネットワークプレーヤーやトランスポートの場合は、2台のSFPポートがあるハブを使い、1台目のハブでLANから光変換→光伝送→2台目のハブで光からLAN変換→LANでサーバーに出力というルートがある(接続・で試す)。最もシンプルなのは、OP-S100とSFP対応ハブとの組合せだ。OP-S100はハブS100のオプション(型番のOPはその意味)扱いとなる光接続セット。光とLANの間のメディアコンバーターBMC-GT-M550M2、SFPトランシーバー、光ケーブルの3アイテムをセット化している。
今回は試していないが、SFPポートを持つプレーヤーやトランスポート(たとえばリンのKLIMAX DSM/3など)を使ったケースでは、ルーターからSFP対応ハブ(DELA S100/2など)の間に、前段で光接続セットOP-S100を使いノイズを減らしたうえで、ハブからSFPポートのプレーヤーはダイレクトアタッチ方式のSFPケーブルのC1で繋ぐというやり方が良い。通常のLAN接続に比べ、経路中のPHYと呼ばれる回路が省略される分、音質向上の可能性があるからだ。
ではOP-S100を使ってみよう。DELAはハブから見て上流のインターネット側で使うのを推奨している。光でノイズ遮断された信号がハブに入るため、ハブの動作がより効率的になるからだ。今回はその接続で使った(接続・)。ルーターからのRJ45端子のLANケーブルをOP-S100に接続→SFPコネクターとSFPトランシーバー(モジュール)内部で光に変換→光ファイバーケーブルで伝送→ハブS100/2のSFPポートにSFPトランシーバー経由で入力。ミュージックライブラリーN100とはRJ45端子のLANケーブルで繋ぐ。
接続・S100/2ハブを聴いた際に聴いた1Gbpsモード時の音との比較だ。素晴らしいではないか。接続・も良かったが、OP-S100を充てがうとこんなに音が良くなるとは……。まず透明度が違う。ベースの質感が格段に上がり、ヌケがクリアーに。ヴォーカル音像のエッジが屹立し、ピアノ音がよりラブリーになった。ノイズレベルが下がるとは、こういうことだと凄く実感した。

Network Switch Option
OP-S100/050
¥69,300 税込
●セット構成:光メディアコンバーター、光ファイバーケーブル(マルチモード2芯、5m)、SFP光トランシーバー(1,000Mbps対応)
●寸法/質量:光メディアコンバーター・W71×H27×D95mm/220g
●ラインナップ:光ファイバーケーブル長0.5m~50mの各種セット品あり
SFPポートを備えたS100/2などのハブと、(SFPポートが備わらない)一般的なネットワークプレーヤーと電気/光変換により、低ノイズ化の実現を目指すオプション品だ

接続 ④ 2つのハブとOP-SFPで光絶縁。さらに音質向上。圧倒的に素晴らしい
前述した、2ハブ+光ファイバーを試してみよう。ルーター→LANケーブル→ハブBS-GS2016/AのSFPポート/SFPトランシーバーで光変換→光ファイバーで伝送→ハブS100/2のSFトランシーバーで電気変換→SFPポートに接続→S100/2のRJ45端子でLAN出力→N100ミュージックライブラリーに送る、という系だ。つまり2つのハブを連携して良質なメディアコンバーターとして使う贅沢なやり方だ。DELAでは「OP-SFP」というSFPトランシーバー2個と光ファイバーケーブルのセット品を用意し、この接続を実現する。
さらに素晴らしい。「チーク・トゥ・チーク」は音の進行にたっぷりとした余裕感が与えられ、進行自体も緻密な音展開だ。質感はより高級になり、発音が優しく、稠密になった。レンジの天井が上がり、周波数的にも、音場的にも見渡しがよりクリアーになった。
「ハフナー」ももの凄く細やか。これまでの再生ではアグレッシブさが前面に押し出されていたが、音場の空気感が実に豊かになり、弦の質感が倍音レベルまで到達。潤いさえ感じられた。しかも演奏の闊達さは不変なのである。
「中央フリーウェイ」もヴォーカルの尖鋭さが身を潜め、しなやかな質感になった。ディテイルはさらに精密に。中央高速をベンツのSクラスで巡行しているようだ。OP-S100での光絶縁は、たいへん効果があったがノイズ遮断性能は、ふたつのハブと「OP-SFP」を活用する手法の方がさらに優れていることが分かった。

SFP Module / Optical Fiber Cable
OP-SFP/050
¥73,700 税込
●セット構成:光ファイバーケーブル(マルチモード2芯、5m)、SFP光トランシーバー(1,000Mbps対応)×2
●ラインナップ:光ファイバーケーブル長0.5m~50mの各種セット品あり
SFPポートを備えた機器同士をつなぐオプション品として、SFPトランシーバー2個と光ファイバーケーブルを組み合わせたセット品も用意されている。今回は本品を使ってバッファローのBS-GS2106/AとDELA S100/2のSFPポート経由での接続を行なった
光アイソレーションの効果は絶大。大元の音に「近づける」意義は大きい
「Qobuz再生の注目グレードアップアイテム」ページに掲載したアクセサリー活用のイントロダクション記事でも、W-Fiルーター直挿しから始めて、オーディオ用ハブやLANケーブルと使っていくと、格段に音質が向上してきた。本稿ではさらに細かく追求し、より効果が上がり、特に光アイソレーションには感動した。それはQobuz音源再生にハイエンド性が加わったと聴いた。
しかし「加わった」という言い方は正しくはないだろう。現象的には音質は格段に向上したが、実は大元のQobuzサーバーにある音源のオリジナルのレベルに「近づいた」という言い方が正解であろう。その意味でQobuz音源は、これほどクォリティが高いのかが認識できた。ネットワーク再生では伝送系のノイズ削減/低減こそ最重要というテーゼを身を持って示したDELAのモノづくりに大いに感動した。