Amazon Music、Apple Music、そしてQobuzと、ロスレス/ハイレゾ対応の音楽配信サービスも含めて、ほぼ完璧にサポートし、音質と機能性の高さで高い評価を得ているEversoloのネットワークプレーヤー。ここで取り上げるDMP-A10は、同社の持てる技術、ノウハウ、そして物量も存分に投入して開発された最高級モデルだ。

Network Audio Player
Eversolo
DMP-A10
¥825,000 税込
●型式:ネットワークオーディオプレーヤー
●接続端子:アナログ音声入力3系統(RCA×2、XLR)、デジタル音声入力7系統(同軸×2、光×2、USB Type A、USB Type B、ARC)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、サブウーファー音声L/R出力端子1系統(RCA/モノーラル出力設定可能)、デジタル音声出力3系統(同軸、光、USB Type A)、LAN端子2系統(RJ45、SFP)ほか
●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、Amazon Music、Apple Music、Deezer、Spotify、TIDALほか
●対応アプリ:Eversolo Controlアプリ
●備考:楽曲データ保存用SSDスロット(M.2 NVMe 2280ベイ×2)あり、Roon Ready対応、付属マイクを使ったルームコレクション機能
●寸法/質量:W430×H117×D310mm/12.5kg
●問合せ先:(株)ブライトーン TEL. 050(6877)6043
見た目はどっしりとして重量感があるが、実際の本体重量も12.5㎏と重い。アルミニウム・ダイキャスト製の重厚なシャーシ設計で、高精度のCNC技術を駆使して仕上げられたという凝ったフォルムからも、高級精密機器ならではの精巧さが見て取れる。
回路設計では音質の天敵とも言えるノイズ対策として、高度なシールド設計を取り入れているのが特徴的だ。回路基板からのノイズを電気的に絶縁し、さらに各回路間の干渉を徹底して抑えることで、音声信号のピュアな伝送を確保しているという。また本体前面の6.5インチ・タッチパネルもシールド対策は万全だ。
音質への影響が大きいクロックへのこだわりもそうとうなもの。44.1kHz系と48kHz系、2種類のオーディオ水晶発振器(実際の動作は45.1584MHzと49.152MHz)を搭載しているが、独自の温度制御技術によりそれぞれが一定の最適温度点で動作できる仕組みを導入。温度変化による周波数変動を制御し、位相ノイズの発生を抑えるのが狙いだ。
この他にも、光ファイバー経由でネットワークに接続できるSFP端子の搭載、オーディオ信号用端子に伝導性に優れた銀メッキ単結晶銅線の採用、付属マイクでの測定により最適な試聴環境を提供する音響補正機能、高S/Nを追求した2系統のリニア電源回路、完全バランス型アナログプリアンプ回路などなど、音質改善に向けた技術、工夫が目白押しだ。
なお汎用のUSB光学ドライブを接続することでCDのダイレクト再生とデータ取り込み(リッピング)が可能。底面に備わるストレージベイにSSDを追加して音楽データを保存し再生することもできる(最大4Tバイト×2枚まで対応)。DACチップはESSテクノロジー製の最新世代「ES9039PRO」としている。

デジタル/アナログともに非常に豊富な入出力端子を装備する。ステレオ構成のサブウーファー出力やSFPポートなどの搭載にも注目したい
微妙なニュアンスを克明に描く緻密な質感こそ高級機の証だ
エバーソロの専用操作アプリ「Eversolo Control」を用いて、Qobuzの音楽ファイルを聴いてみよう。本機では多彩な音質補正機能を備えているが、今回は基本、すべて「オフ」として試聴している。曲は「ヴィヴァルディ:3つのヴァイオイリンのための協奏曲 第1楽章/アンネ=ゾフィー・ムター」、「ラデツキー行進曲/ムーティ指揮ウィーン・フィル」(『ニューイヤーコンサート2025』より)、「テンプテーション/ダイアナ・クラール」などを再生した。
超多機能かつ高品位を両立したネットワークプレーヤーで2024年に日本上陸、大きな話題となったエバーソロ。本機はその最高峰製品で、品位を極めて高度に追求している。操作/設定アプリ「Eversolo Control」は、本機でも当然対応しており、スムーズかつストレスフリーな使い勝手も目指す

こだわりの強い技術内容からして、大上段に構えて、「どうだ」という分かりやすいサウンドを描き出すのかと思いきや、やや様子が違う。持ち前の分解能の高さ、ノイズレベルの低さをこれみよがしにひけらかすようなところはなく、特定の色合い、クセっぽさを感じさせないニュートラルな聴かせ方で、表現が落ち着いて、大袈裟にならない。
ピアノ、ヴァイオリンの響きは清々しく、ベースの低音も気持ちよく伸びているが、響きの厚みや、押し出しの強さを強調するのではなく、反応の良さ、スピード感で楽しませるという印象だ。音は太すぎず、細すぎず、中肉中背の絶妙なバランスで、旋律を淡々と刻んでいく。豊富な情報量をベースにした、その落ち着きぶり、静謐さ、安定感と、やはりただ者ではない。
ダイアナ・クラールのヴォーカルはゆったりと、温かく深みがある。クールなテイストで淡々と歌っていくが、そのなかでも細かな息づかい、微妙なニュアンスの描写が克明で、ヴィブラートの細かな震えも、ザラつかず、しっかりと描き上げていく。荒っぽさ、とげとげしさを感じさせない緻密な質感は、まさに高級オーディオ機器の証と言っていいだろう。
響きの透明感、緻密さと、そしてアタックの素早さと、オーディオ機器としての素姓のよさは折り紙付きだ。しかも基本的な情報量に余裕があり、音の粒子まで感じさせるような分解能の高さも持ち合わせている。まさにエバーソロの最高峰に相応しい堂々とした表現力。持ち前の高度な調整機能を使いこなすことで、さらに上の世界が目指せるという楽しみもある。
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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』