優れた使い勝手と高音質を両立。シンプルで確かな満足度を備えた逸品

 ネットワークオーディオの普及に伴ない、様々な形態で、Qobuzを含めた音楽配信サービスに対応するオーディオ機器が登場してきている。注目したいのは、価格レンジの幅広さと機能性、モデルサイズ(内容や規模)が豊富に揃っていることで、自身のキャリアや懐事情、あるいはシステム構成等から様々なアプローチが叶う。

 今回ここで組んだのはエントリー向けでなく、オーディオのキャリアを問わずに強くおすすめでき、そうかといって大規模で高額なハイエンドではない、シンプルではあっても確かな満足度をもたらしてくれるプランである。

 仏アトールのネットワークプレーヤーMS120は、PCMで最大192kHz/24ビット、DSDでは5.6MHzに対応したコンパクトなモデル。DACチップを含めた使用パーツの銘柄等、詳細は未発表のようだが、構成部品の約80%をフランス国内から調達し、ノルマンディーの本社工場で生産されている。アナログ/デジタル回路各々に専用電源回路を配している他、デジタルボリュウムではなく、100ステップのスイッチ抵抗式アナログボリュウム内蔵という点もミソ(バイパス機能あり)。ピュアAクラスのディスクリート回路がそれに組み合わせられている。

 

画像1: 『ATOLL MS120』注目モデルで聴くQobuz《ネットワークプレーヤー編》

Speaker System
AUDIOVECTOR
QR1SE
¥330,000(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:AMT型トゥイーター、152mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:3kHz
●出力音圧レベル:86dB/W/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W190×H325×D232mm/6.5kg

 

Power Amplifier
MA100
¥93,500 税込

●型式:ステレオパワーアンプ
●出力:60W×2(8Ω)、80W×2(4Ω)
●寸法/質量:W320×H83×D230mm/4.0kg

 

Network Audio Player
ATOLL
MS120
¥253,000 税込

●型式:ネットワークオーディオプレーヤー
●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA×2)、デジタル音声入力6系統(同軸×2、光×2、USB Type A×2)、アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN端子1系統(RJ45)ほか
●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、Amazon Music、Deezer、Spotify、TIDALほか
●対応アプリ:ATOLL Signature 2アプリ
●備考:Roon Ready対応、MQAデコード対応、Bluetooth対応
●寸法/質量:W320×H94×D210mm/3.0kg

●ATOLLとAUDIOVECTORの問合せ先:PROSTO(株)TEL. 03(5542)3545

 

 

MS120のプリアンプ機能を活用し、シンプルな構成でQobuzを楽しむ

 今回はこのプリアンプ機能を活用すべく、同社のステレオパワーアンプMA100を用意した。MS120と同一幅の筐体に収められたのは、MOS-FETプッシュプル構成の出力段で、60W×2(8Ω)をギャランティする。モノブリッジ接続対応という仕様も頼もしいアンプである。

 このアトールのペアに組み合わせるスピーカーには、同じ輸入元が取り扱うデンマークの専業メーカー/オーディオベクターのQR 1SEを準備した。1979年創業の同社のスピーカーは現在3つの製品ラインを擁しているが、QR SEシリーズはスタンダードな製品群のようだ。最大のセールスポイントは、ハイルドライバーを範としたオリジナル設計のAMT(Air Motion Transducer)の採用。2kHz〜40kHzという広帯域を1ユニットでまかなうことができ、その高域限界は102kHzにまで及ぶという。ウーファーは2層の航空グレードアルミ材を柔軟なダンピング材で挟んだ3層構造。この他、スリットのような細い穴のQポート・バスレフ方式や、クライオ(極低温)処理によるパーツや配線材の採用が特徴といってよい。

 

今回はiPhone用純正アプリ「ATOLL Signature 2」を使ってMS120でQobuzを再生。Qobuzなどの音楽配信サービスの操作はもちろん、MS120の入出力端子の選択、設定、音量調整なども一括して操作可能。レスポンスもよく非常に使いやすい。iPad用、Android用アプリもあり

画像3: 『ATOLL MS120』注目モデルで聴くQobuz《ネットワークプレーヤー編》

 

 

澄み切った声の抜けがよく、スピーカーとの相性も抜群

 MS120の対応ストリーミングサービスは多種におよび、特に海外メーカー製では珍しいAmazon Music Unlimited対応が見逃せない。その専用アプリもオーソドックスな構成の画面から直感的に理解でき、使い勝手もいい。

 女性ジャズヴォーカルのサマラ・ジョイは、澄み切った声の高音域の抜けがよい。この辺りはオーディオベクターQR1 SEのハイルドライバーの貢献度が高そうだ。ウーファーとのつながりもよく、音色的な整合性も取れているし、音離れのよさはエンクロージャー内部のブレーシングや箱全体のディフラクション(回折)性能のよさが奏功しているのだろう。

 「フォーレ:ペアレスとメリザンド」の第4曲では、スケール感こそやや控えめだったが、オーケストラのアンサンブルの立体感、ハーモニーの精密さなど、アトールMS120の非凡さが感じ取れた。

 一方ケイト・ブッシュでは、高域に特徴がある彼女ならではの声がきつくならず、クリアーさと実体感がしっかりとしている。ミック・カーンが繰り出すウネウネとしたフレットレス・ベースのリズム等、ローエンドに切れのある印象は、QR 1SEのウーファーとバスレフダクトのチューニングの妙か。

 日本のフュージョン・バンド、プリズムの名演「KARMA」では、ベースとドラムのコンビネーションによるヘヴィなビートが実に心地よく、その上を疾走するようなギターの早弾きメロディが爽快だ。

 デジタルファイル再生に関しては、これまであまり目立たなかったといってよいアトールだが、MS120の登場によって注目を集めるであろうことは想像に難くない。

 

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』

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