1970年代初頭の空気が甦ってくる! 大瀧の瑞々しい感性が詰まった名アルバム

 貴方が好きな大瀧詠一のアルバムは? と問われれば多くの方が、超大ヒットアルバム『A LONG VACATION』(1981)と答えるに違いない。しかし、ぼくは違う。1972年に発売されたファースト・アルバム『大瀧詠一』が一番好きだ。

 『A LONG VACATION』や『EACH TIME』(1984)の深いリヴァーブを特徴とするキラキラした極彩色のゴージャスな響きには、拭い去ることのできない商業音楽の残滓が感じられ、個人的には居心地が悪いのである。しかし、ファースト・アルバムには20代半ばの大瀧の瑞々しい感性がモノトーンのオーガニックな響きの中に閉じ込められていて、聴いているとなんだか切ない気分になる。

『アーリー大瀧詠一/大瀧詠一』
DVD-ROM+CD 2枚組 192kHz/24ビット(WAV)

(キングレコード/ステレオサウンド SSPD-001~002)¥8,800 税込

[収録曲]
1.空飛ぶくじら
2.恋の汽車ポッポ(第1部)
3.外はいい天気だよ
4.田舎道
5.指切り
6.びんぼう
7.乱れ髪
8.あつさのせい
9.空飛ぶウララカサイダー
10.ココナツ・ホリディ

●監修:和田博巳
●マスタリングエンジニア:辻裕行(ソニー・ミュージックスタジオ)
※DVD-ROMはデータディスク仕様なので一般のDVDプレーヤー等では再生できません
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 ここにご紹介する『アーリー大瀧詠一』は、大瀧が1970年代前半にキング/ベルウッド・レコードで録音した初期の名作をコンパイルした1982年発売のアルバムで、それを2016年にステレオサウンド社が和田博巳さんの監修のもとリマスタリング、CDに加えて192kHz/24ビットWAVファイルを記録したDVD-ROMを封入したパッケージ・ソフトである。収録曲は、大瀧名義のシングル曲から2曲、はっぴいえんどのラスト・アルバムから2曲、そして先述のファーストから4曲、はっぴいえんど解散コンサートから2曲という構成だ。

 和田博巳さんのライナーノートによれば、全曲オリジナル・マスターテープを用いてのデジタル・マスタリングとのこと。ハイレゾファイルについては、コンプレッションとリミッティングはまったく行なっておらず、CDはわずかな調整を施したという。実際に聴き比べてみると、ハイレゾファイルが勝るのは、立体的なソニックステージ、ニュアンスの豊かさだ。とは言ってもその差はわずかで、CDを聴いても1970年代初頭の空気が甦ってくる音の鮮度の高さが実感できる。とくにすばらしいのは、大瀧のバラード・シンガーとしても魅力が横溢した「外はいい天気だよ」「指切り」「乱れ髪」の3曲。眼前で大滝さんが歌ってくれているかのようなイリュージョンが得られる再生を目指したい。

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