エバーソロのフラッグシップモデル「DMP-A10」が話題だ。同社製品はミュージックストリーマーやUSB DAC、プリアンプとしても使える多機能性と音のよさでネットワークオーディオ愛好家から注目を集めている。さらにDMP-A10には、最上位モデルとして様々な音質チューンが加えられているということもあり、弟機の「DMP-A8」とどれくらい音の違いがあるのか気になっている方も多いようだ。そこで今回は、DMP−A8を愛用している西村明高さんのオーディオルームにDMP-A10を持ち込んで、両モデルのサウンドをじっくり確認してもらった。アドバイザーとして麻倉怜士さんにも同行いただいている。(まとめ:泉 哲也、写真:土屋 宏)
ハイフィデリティ・ミュージックストリーマー/プリアンプ:エバーソロ DMP-A10
¥825,000(税込)※2025年3月31日までは発売キャンペーン価格¥770,000(税込)で販売

●内部メモリー:4GDDR4+64GeMMC
●DACチップ:ES9039 PRO
●オーディオプロセッサー:XMOS XU316
●オペアンプチップ:OPA1612
●SSD:M.2 NVME 3.0 2280サポート(最大4Tバイト2枚まで。SSDは同梱されていません)
●接続端子:HDMI(ARC)、デジタル入力✕4(同軸✕2、光✕2)、USB Type-B、デジタル出力✕2(同軸、光)、USB Type-A、アナログ入力✕3(XLR、RCA✕2)、アナログ出力✕2(XLR、RCA)、サブウーファー出力✕2、USB3.0✕2、SFP、RJ-45(10/100/1000Mbps)
●対応ハイレゾ信号:最大DSD512、PCM 768kHz/32ビット
●対応ミュージックサービス:Tidal、Qobuz、Highresaudio、Amazon Music、Deezer、Radio Paradise、TuneIn Radio、Apple Music、KKBOX、WebDAV、UPnP
●ストリーミング:Roon Ready、Squeezelite、DLNA、Tidal Connect、他
●寸法/質量:W430✕H117✕D310mm /12.5kg ※WiFi機能及びBluetooth機能は使えません

西村さんが「作った人は天才」と評したEversoloControlアプリ。今回はDMP-A8とDMP-A10の両方を登録し、ここから操作機種を切り替えて比較試聴を行っています

西村さん(右)は愛用のiPad miniで、EversoloControlアプリを使いこなしていました
――今日は西村さんのオーディオルームにお邪魔して、エバーソロDMP-A8とDMP-A10の聴き比べを行いたいと思います。西村さんは現在DMP-A8を愛用中で、音にも満足されているそうです。一方で、上位モデルのDMP-A10の音も気になっているということで、今日はご自宅の再生環境で両機の違いを確認していただきます。さらに、機材の使いこなしや音質についてのアドバイスを麻倉怜士さんにお願いしています。
西村 貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
麻倉 よろしくお願いします。でも今日はびっくりしました。西村さんは、テレビやケーブルテレビ局に電子番組表を提供するXperiの社長さんで、私も20年ぐらいのお付き合いになります。これまでビジネス関係のインタビューはよくありましたが、オーディオの話は一度もしたことがなかった。
西村 麻倉さんには、お仕事関連で長くお世話になっています。でも不思議なことに、趣味のオーディオの話をする機会はなかったんですよね。
麻倉 編集部から取材の相談があった時も、“え、あの西村さん?” と半信半疑だったんですが、いざお邪魔してみたらすっごく真剣にオーディオに取り組んでいて、それが一番の驚きでした。アナログレコードはあるし、ハイレゾ再生もできるし! 西村さんがこんなにマニアだったなんて(笑)。
西村 小学生の頃からオーディオに興味があり、ガレージを眺められるオーディオルームが欲しいと思っていました。この家を建てる時に8畳の空間を確保して、自作も楽しめるような部屋を作りました。メインスピーカーはJBL「4365」です。個人的に4インチのコンプレッションドライバーが重要なアイテムなので、このモデルを選びました。スピーカーを置いている床は基礎からコンクリートで立ち上げて、他の床面とは縁切りして振動が伝わってこないようにしています。
小学生からの夢を叶えた!? 西村さんの “男の夢の城”

西村さんのオーディオ&シアタールーム。約8畳の専用室で、趣味の自作から、アナログレコード、12cmメディア、ハイレゾ、サラウンド再生まですべてを楽しむことができる

ソファの後ろにはアナログレコードやSACD、CDなどが並ぶ。プロジェクターはパナソニック「TH-AE3000」を愛用中
<西村邸の主なオーディオシステム>
●ミュージックストリーマー:エバーソロ DMP-A8 → DMP-A10
●レコードプレーヤー:アコースティックソリッド Solid Machine Small R
●カートリッジ:オルトフォン SPU Ethos、デノン DL-103R
●ヘッドアンプ/フォノイコライザー:フィデリックス LIRICO、LEGGIERO、自作モデル
●SACD/CDプレーヤー:マランツ SACD 30n
●AVアンプ:マランツ CINEMA 30
●パワーアンプ:ニュープライム STA-9、300B管球式パワーアンプ
●スピーカーシステム:JBL 4356、アルテック、アンソニーギャロ Reference、他
麻倉 4365の上にアルテックも重ねてありますが?
西村 これは完全に道楽で(笑)、ユニットが好きだったので特注で箱を作ってもらいました。300B真空管式パワーアンプにつないでありますので、今日も音を聴いていただくことはできます。
麻倉 アナログプレーヤーはどこのブランドですか?
西村 ドイツ、アコースティックソリッドの「Solid Machine Small R」で、色と形に一目惚れして導入しました。トーンアームにはオルトフォンのカートリッジ「SPU Ethos」を取り付けて、フィデリックスのヘッドアンプ「LIRICO」とフォノイコライザー「LEGGIERO」につないでいます。AVアンプのマランツ「CINEMA 30」をプリアンプとして使い、パワーアンプのニュープライム「STA-9」にRCAケーブルでつないでいます。
もうひとつのトーンアームにはデノン「DL-103R」を取り付けています。こちらは自作のフォノ/プリアンプ、パワーアンプをつないでいて、スピーカーセレクターで切り替えて4365をドライブします。その他に12cmディスク用にSACD/CDプレーヤー「SACD 30n」を、CINEMA 30にRCAケーブルでつないでいます。
麻倉 かなりこだわったシステムですね。さらにホームシアターも楽しめると。
西村 CINEMA 30を使って、7.0.2のサラウンド環境も整えてあります。
麻倉 電源ユニットもお使いなんですね。
西村 200Vの電源も引いてあるので、ステップダウントランスを使って各製品に給電しています。このトランスは117Vも出力できます。わが家のSTA-9はアメリカ仕様なので、117Vで使っています。「DMP-A10」「DMP-A8」もユニバーサル電源対応とのことでしたので、117Vにつなぎました。
麻倉 よく考えられたシステムですね。音を聴かせてもらうのが楽しみです。ところで、西村さんは既にDMP-A8をご自宅で使っているとのことでしたが、導入のきっかけは何だったのでしょう?
西村 麻倉さんもレビューされていましたし、DMP-A8はどのサイトでも評価が高いじゃないですか。また調べてみたら、AndroidOSの制約をスルーしてビットパーフェクトで再生できるなど、面白い仕様になっていました。
もともと僕自身がコンピューター畑の人間なので、USBやLANでつないで、各機器をクロックで合わせてといった大掛かりなシステムはあまり信じていないんです。絶対どこかでジッターが発生しているはずだと考えてしまう。それなら音源から再生機、プリアンプまでワンボックスに収めれば
内部接続はI2C等で直結されているはずだし、それらをひとつのクロックで制御した方が絶対音がいいはずだと。

パワーアンプニュープライム「STA-9」はオーディオラックの下段に設置。XLR入力にはDMP-A8(今後はDMP-A10)を、RCA入力にはCINEMA 30をつないで、ソースに応じて切り替えている

4インチコンプレッションドライバーの音が好きという西村さんは、JBL「4365」をメインで愛用している。上段のアルテックはユニットだけ入手して、箱はカスタムで作ったそうです

スピーカーを設置する部分の床面は、基礎からそのままコンクリートを充填している
麻倉 なるほど、かなり綿密にリサーチして選んだわけですね。結果としてDMP-A8の導入は成功でしたか?
西村 もちろんです! 最初はDMP-A8のRCA出力をCINEMA 30につないでいました。それもいい音だったんですが、よく考えたらSTA-9にはXLRバランス入力もついていたんです。しかもスイッチでXLRとRCAが簡単に切り替えられる。そこで、DMP-A8とSTA-9を直結したら、シンプルでピュアなオーディオシステムとして完結できるんじゃないかと思いつきました。
さらにDMP-A8にSSDを追加して、ここに音源を保存すれば一台でハイレゾ再生環境が完成できるじゃないですか。試してみたら、この部屋で初めて“ハイエンドの音”が再生できたんです。
麻倉 なるほど、その経験があって余計DMP-A10が気になったわけだ。
西村 DMP-A8で充分だと思っていたんですが、上位モデルが出てくるとやはり……。また個人的にはESSの音が好きなので、DMP-A10はDACチップにES9039PROを使っている点も気になりました。
麻倉 ではそろそろ西村邸の音を聴かせていただきましょう。
西村 緊張しますね(笑)。まずはアナログレコードも含めた音を聴いていただきます。 宇多田ヒカルの「Beautiful World」のレコードを準備してありますので、最初にカートリッジ2種類の音をお聴きください。その後、USBメモリーに保存した同じ曲の96kHz/24ビット音源をSACD 30nで再生します。さらにDMP-A8、DMP-A10のSSDにも同じ音源を入れてありますので、この順番で再生します。
麻倉 同じ曲を5種類の再生系で聴くわけですね、これは面白い。
西村 アナログレコードを、DL-103R、SPU Ethosの順番で再生します。
麻倉 これだけ音の違いがわかると、聴き比べる楽しみが増しますね。DL-103Rはめりはりのあるヴォーカルでしたし、SPU Ethosでは低域がぐんと伸びてきて、声量も豊かでした。
西村 DL-103Rの再生系では自作フォノイコも使っているので、私には良し悪しが判断しにくいのですが、SPU Ethosでは低音の出し方を割と頑張っていましたね。さすが針圧4mgだけあるなって感じがしました。

アコースティックソリッド「Solid Machine Small R」に、オルトフォン「SPU Ethos」とデノン「DL-130R」の2種類のカートリッジを取り付けて、音の違いを楽しんでいる

電源にもこだわりのある西村さんは、オーディオルームに200Vを準備し、ステップダウントランスを使って各機器に最適な電圧で供給している

正面に置かれたラックには、自作パワーアンプなどを収納。天板においてあるミニカーは、これまでの西村さんの愛車遍歴だそうです
――次にSACD 30nで96kHz/24ビットのハイレゾ音源を再生します。
麻倉 ちゃんと低域も伸びているし、ワイドレンジな頑張った音ですね。これも充分素晴らしい。すっきりした印象の、ハイレゾらしい音が楽しめます。
西村 ではDMP-A8につなぎかえます。内蔵プリアンプ機能を使って、XLRバランス出力をSTA-9に直結、音源もSSDに保存したものを使います。
麻倉 DMP-A8の音はかなりクリーンで、こんなにS/Nがいい曲だったっけと思ってしまいました。宇多田ヒカルの声にも実体感が出てきています。
西村 DMP-A8では、大きめの音量でもうるさくならないんです。音が混濁したところもないし、音数が増えてもちゃんとひとつひとつを聴き取ることができる。
――DMP-A10につなぎかえましたので、こちらもお聴きいただきます。
麻倉 DMP-A8もいいんだけど、聴き比べるとDMP-A10はさらにベールが剥がれたような感じがしたのと、ヴォーカルの基音と倍音がちゃんと聴き分けられるようになりました。
この曲は、宇多田ヒカルが声を伸ばす時の表現が凄く豊かなんですが、DMP-A10ではそういう部分までよく出てきます。基本的な音数も多いんだけど、さらに表情の豊かさとか、ボーカリストとしての個性が感じ取れました。こんなにシンプルなシステムなのに、この音は驚きです。
西村 スピーカーはともかく、DMP-A10とSTA-9のサイズでこんなにハイエンドな音が出せるって、恐ろしいことだと思います。
麻倉 西村さんのオーディオルームは、環境がしっかり整えられているので、再生機器による違いも凄くよくわかりますね。
ここからは、DMP-A8とDMP-A10で色々な音源を聴きましょう。私が主宰しているUAレコードの今年の新譜として、情家みえさんのヴォーカル集第二弾を作っているんです。今日はその44.1kHz/16ビットのCD用音源をUSBメモリーに保存してきましたので、その中から「ラバー・カンバック・トウ・ミー」を聴いてください。

ハイレゾファイルからストリーミングまで、様々なソースでDMP-A8とDMP-A10の違いを確認していただいた
――DMP-A8とDMP-A10の順番で再生します。
麻倉 どちらも魅力的ですね。情家さんの歌声の特徴として、艶っぽいところと、苦みのところの二面性があって、両モデルともそういったニュアンスがよく出ているのに感心しました。
さらにDMP-A10では歌い手のノリのよさも感じられるようになります。この曲は冒頭と最後のメロディラインが同じなんですが、実際に歌っていると、声の出方、テンポなどが違ってきます。DMP-A10では、情家さんの声もサスティーンが長くなって、そこから色々な情感も感じ取れます。情家さんのヴォーカリストとしての成長がうかがえました。
楽器の出音も変化して、ピアノが高級に聴こえた。今回使っているのはスタンウェイのフルコンサートピアノですが、DMP-A10ではその重厚さを感じます。ドラムのスネアのキレ、ベースの伸びなども表現力が付いてきます。
楽曲の構造もまったく違う印象で、DMP-A8がスタンダードな再現だとすると、DMP-A10は高級感というか、質感が全体的によくなっています。その上で、躍動感などの表現が付いてくるので、格が違う感じがするんです。
DMP-A8はアナログとデジタルの電源が各1基なのに対し、DMP-A10はアナログ電源を2基搭載していますよね。クロックも44.1kHz用と48kHz用を別々に搭載するなど細かい違いが、音に現れているのかもしれません。
――この曲は麻倉さんも収録に立ち会われたわけですが、スタジオの音に近い再現ができていたということでしょうか?
麻倉 スタジオ以上に好ましいかもしれない(笑)。録音スタジオでは、モニター的な正確性の高い再現が求められます。それに対し、今日の音はエンタテインメントというか、いい響きがついている。この艶っぽさは、スタジオではあまり感じられませんでした。
西村 僕は、DMP-A10の方がステージが広がっているように感じました。スピーカーの横幅いっぱいまで音場が広がるんです。DMP-A8はもうちょっとコンパクトにまとまっている感じがします。

EversoloControlの操作画面。左のバーでソースを選ぶことで、内蔵SSD(ユーザーが追加する)に保存した音源から各種ストリーミングまで簡単に再生できる。確かにこの快適さは魅力です
麻倉 同じく情家さんの音源から「アルフィー」も聴かせてもらえますか。
西村 このデータですね。では再生します。
麻倉 DMP-A10の魅力が際立ちますね。DMP-A8の音もよかったんだけど、さらにベールが2枚ぐらい剥がれて、表情の多彩さみたいなものが出てきます。情家さんは、気持ちよさだけじゃなくて、苦味とかかすれも歌に込めているんです。そこのかすれにも艶が乗ってくるのが、DMP-A10のよさですね。音楽的な表現、歌い手のパーソナリティまで分かるのが素晴らしい。
DMP-A8が、完成度の高い、素直ないい音を聴かせてくれるのに対して、DMP-A10は、そこをベースに歌い手の機微や演奏のテクニックもわからせてくれる。この差が上位モデルとしての魅力といえそうです。
――両モデルとも音楽ストリーミングの再生もできますので、配信の音も聴いてみましょう。
西村 Amazon Musicで、ノラ・ジョーンズの「Don’t Know Why」(44.1kHz/16ビット)を再生します。
麻倉 DMP-A10は配信も凄いね。ベースの倍音が出て安定感が増してくるし、演奏のアクセントも凄くよく分かります。ヴォーカルもクリアーだし、ピアノの伸びもいい。ノラ・ジョーンズも歌に感情を込めるんですが、その気持ちの入れ方がここまでわかるかって感じですね。
西村 配信の44.1kHz/16ビットでこの音が聴けるのであれば、充分かもしれません。
麻倉 今日は無線ルーターからメタルのLANケーブルでDMP-A10につないでいますが、この間にオーディオ用のハブを加えるとS/Nが改善されると思います。また、DMP-A10は光LAN(SFP)入力もついているので、光変換してネットワークにつなぐというのもいいですね。
西村 そうなんですか、そこはノーケアでした。ぜひ試してみたいと思います。
ルーム音響補正機能で、西村邸の音はどう変化した?

DMP-A10に付属しているルーム音響補正用のマイクをつないで、西村邸オーディオルームの測定を行ってみた。今回はエバーソロ側で準備しているフラットカーブをターゲットにしたものと、同じ補正内容でボリュウムレベルを若干大きくした2種類の補正カーブを作成した

ルーム音響補正のオン/オフや、どの補正カーブを適応するかは、EversoloControlの「DSP」項目から行う。内蔵SSDやUSB DACといったソースごとに補正内容を選べるなど、カスタマイズの自由度も高い
――次に、DMP-A10に搭載されたルーム音響補正機能も体験していただきます。ブライトーンの福林さんにもおいでいただきましたので、測定をお願いしたいと思います。
福林 よろしくお願いします。DMP-A10にはルーム音響補正用のマイクが付属していますので、これで測定を行うことで再生時の特性をフラットに補正できます。測定結果のカーブは複数メモリーでき、PCを使えば補正カーブの編集もできます。
今日はDMP-A10にプリセットされているフラットターゲットカーブに合わせた補正を行いました。またその状態ではボリュウムが少し下がったように感じたので、音量を持ち上げたカーブも準備しました。最初はルーム音響補正オフで、次にオン、最後に音量をアップした状態で聴いていただきます。
西村 192kHz/24ビットのハイレゾファイルからノラ・ジョーンズ「Seven Years」を再生します。
麻倉 ルーム音響補正のオン/オフはどうやって切り替えればいいんでしょう?
福林 アプリから操作可能です。メニューから補正のオン/オフにと、どの補正カーブを適応するかを選ぶだけで大丈夫です。
西村 エバーソロのアプリは使いやすいですよね。UIも論理的だし、作った人は天才だと思います。Apple Musicなどのプレイリストが引き継げればもっといいんですが、それは今後のアップデートに期待したいですね。
麻倉 西村さんのお部屋にはもともと極端な癖がなかったので、かなりいい状態で音楽が再現できていたと思います。DMP-A10のルーム音響補正機能を入れると、それがさらにフラットになるという変化でしょうか。
西村 そういっていただけると嬉しいです。変化量としては少ないとのことですが、音の印象は変わっていますね。テスト用のスィープ信号(20Hz〜20kHz)もありますので、これも再生してみます。
麻倉 なるほど、ルーム音響補正オフだと特定の帯域でちょっとだぶつくようなところもあったけど、補正をいれたらすっきりしました。一方で低域の量感は補正オフの方が好ましいところもあるから、曲によって使い分けるといいかもしれません。

取材に協力いただいた、Xperi Inc.シニアバイスプレジデント(日本担当)Xperi株式会社 代表取締役社長の西村明高さん。麻倉さんとは20年近いおつきあいとのことですが、オーディオ談義は今回初めてとのことでした
――今日の西村邸でのDMP-A8とDMP-A10比較試聴はいかがでしたでしょうか。
麻倉 どちらも魅力的ないい音でしたが、やはり品格の違いはありましたね。具体的には、DMP-A8はきわめて真面目に、高品質な音を聴かせてくれます。それに対しDMP-A10は、その向こうにある音というか、歌っている人の思いまで再現してくれるんです。そこまで聴き取れるのが、再生機としてのベーシックな力の差だと思いました。
西村 ハイエンドオーディオの世界は奥が深いということはわかっています。でも僕としては、DMP-A10とSTA-9があれば、その領域に少しは入れるんじゃないかと感じています。“エバーソロ、恐るべし”です。
麻倉 DMP-A10は、西村邸に導入決定ですか?
西村 そうですね、買うことは決めています(笑)。電源も強化されているのと、クロックもふたつ搭載しているなど、僕が気になる点はほぼ解消されていますから。また筐体が強化されているのも嬉しいですね。
麻倉 西村さんの “男の夢の城” はまだまだ進化していきそうですね。最後に、アルテックの音も聴かせてもらうことはできますか?
西村 もちろんです。ではDMP-A10のRCA出力を300Bパワーアンプにつないで、アルテックの音をお聴きいただきます。美空ひばりの「川の流れのように」を再生します。
麻倉 DMP-A10は、真空管アンプとの組み合わせでも活躍しそうですね。音の表情も変わって、どことなく懐かしい音として楽しめました。やっぱりアルテックは声がいいですね。今日はありがとうございました。
西村 こちらこそ、とても楽しい時間でした。ありがとうございました。