上杉研究所が、オーディオ評論家としても知られた上杉佳郎氏から、ビクター出身の藤原伸夫氏に引き継がれたのは2011年のこと。藤原氏は生粋のオーディオファイルであり、上杉研究所を主宰してからは真空管アンプの可能性を一途に追求している。Bluetooth通信でアナログ的な操作感を実現したリモコンに始まり、プッシュプル動作で出力トランスでの波形合成が必要ないサークロトロン回路の導入や直熱3極管300Bのノイズレス交流点火、最近ではDSオーディオ製の光カートリッジ専用フォノイコライザーアンプなど、話題に事欠かない快進撃を続けている。その藤原氏は、遂に真空管OTLアンプを手掛けてしまった。既に姉妹誌である季刊『ステレオサウンド』の2024年グランプリを受賞しており、昨年12月からの発売。『管球王国』では、白色シャーシが美しい特別仕様のウエスギU・BROS333OTLリミテッド・エディションを頒布する。

画像: 『管球王国』特別仕様であるLimited Editionはシャーシがパールホワイト、トランスケースが黒のレザー調塗装で仕上げられ、リア部に「UESUGI Limited Edition」のプレートが付される。上写真の手前の筐体は、アンプ使用時の装着が必須で放熱のための機能部品である真空管保護グリルを外した状態。

『管球王国』特別仕様であるLimited Editionはシャーシがパールホワイト、トランスケースが黒のレザー調塗装で仕上げられ、リア部に「UESUGI Limited Edition」のプレートが付される。上写真の手前の筐体は、アンプ使用時の装着が必須で放熱のための機能部品である真空管保護グリルを外した状態。

格別のサウンドが期待できるが、希少な存在といえるメーカー製OTL機。定番的出力管の6C33C-Bを活かす

 出力トランスを持たないOTLの真空管パワーアンプは、格別の魅力的なサウンドを聴かせる。いっぽうで、メーカー製の真空管OTLアンプはなかなか見当たらず、調べるとスウェーデン製があるくらいだ。しかも、公称8Ω程度の現代スピーカーを鳴らすのに相応しい出力管も限られている。その意味でも、OTLで定番といえる6C33C-B真空管のシングルプッシュプル動作で40W(歪率5%)出力を獲得している、ウエスギのU・BROS333OTLは稀有な存在といえる。本機はフルバランス構成でAB2級動作のサークロトロン回路になっており、正極と負極に独立している100V専用設計の電源トランスも大きい。1台当たり320Wの消費電力であるが、無信号時はA級100Wクラスの半導体アンプと同等の200Wまで抑えられている。

 私は昨年10月に一度聴いているのだが、本誌試聴室で再びU・BROS333OTLの音を体験することができた。音源の送り出しはアキュフェーズDP1000とDC1000の組合せで、プリアンプはウエスギのU・BROS280Rである。スピーカーシステムのB&W 801D4シグネチュアは公称8Ωだが、最小3Ωという難物だ。パワーアンプの本誌リファレンス機は、サークロトロン回路を採用しているKT120プッシュプル・モノーラルのウエスギU・BROS120R。それを組み合わせた状態で試聴音源をひととおり聴いて、次にU・BROS333OTLを繋いで鳴らすことにした。

画像: 試聴はシャーシとトランスケースの塗装が通常仕様のウエスギU・BROS333OTLで行なった。組み合わせたプリアンプはウエスギU・BROS280R、リファレンス・スピーカーはB&W 801D4シグネチュア。デジタルディスク/ファイルの再生にはSACD/CDトランスポートとD/AコンバーターのアキュフェーズDP1000+DC1000の組合せとDELAのNAS N1-S38-Jを使っている。

試聴はシャーシとトランスケースの塗装が通常仕様のウエスギU・BROS333OTLで行なった。組み合わせたプリアンプはウエスギU・BROS280R、リファレンス・スピーカーはB&W 801D4シグネチュア。デジタルディスク/ファイルの再生にはSACD/CDトランスポートとD/AコンバーターのアキュフェーズDP1000+DC1000の組合せとDELAのNAS N1-S38-Jを使っている。

深く沈み込む低音は聴き応え十分で、グルーヴ感の豊かさも心地いい。コントラスト高く、金属弦の響きも新鮮

 若い時分にフッターマンやカウンターポイントを、15年ほど前には独アインシュタインの真空管OTLアンプの音を聴いたことがあるけれども、本誌リファレンスの機器環境で改めてU・BROS333OTLの音を聴いてみると、遮るものが皆無と断じられる開放感の抜群な音は異次元感覚‼ B&Wの801D4シグネチュアを朗々と鳴らすだけでなく、血の通った生命感溢れる音。説得力に満ちた美音なのだから凄い。

 SACDで聴く石川さゆり「ウイスキーが、お好きでしょ」は、声色の生々しさが素晴らしく、色彩的にも鮮やかな表情の変化は聴いていて愉しい。先ほど聴いたU・BROS120Rとは音の直接的な到達感で違いが大きく、ワイドレンジぶりも圧倒的なのだ。イーグルスのライヴ音源で聴く「ホテル・カリフォルニア」も圧巻のパフォーマンスだった。音ヌケの良さはもちろんのこと、グッと深く沈み込むパーカッションの低音も聴き応え十分。一般的な半導体アンプよりも低音域がゆったりしているためか、グルーヴ感の豊かな心地よさもある。ハイレゾ音源のリヴィングストン・テイラー「イズント・シー・ラヴリー」で印象的だったのは、弱音部分でも音に力強さが宿っているように感じられること。ヴォーカルもそうだが、アコースティックギターによる金属弦の響きも新鮮で、コントラストの高い音が得られた。

 放熱に関してもよく考えられている。所有したくなる魅惑的な音を奏でる真空管OTLアンプだ。

画像: 中央の真空管保護グリルはフロント側の裏面にガラスを嵌め込んで周囲4辺が閉じられ、チムニー構造による放熱でアンプ使用時のシャーシ内温度を大幅に低下させる。アンプ使用時はグリルを装着する必要がある。

中央の真空管保護グリルはフロント側の裏面にガラスを嵌め込んで周囲4辺が閉じられ、チムニー構造による放熱でアンプ使用時のシャーシ内温度を大幅に低下させる。アンプ使用時はグリルを装着する必要がある。

U・BROS333OTL Limited Editionはステレオサウンドストアでお求めいただけます

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