2023年から、アンコアホテルのサムスンディスプレイ・スウィートに通っているが、毎年、大きな成果が得られている。今年も、予想以上だった。
「2025QD-OLED」とネーミングされた今年のQD-OLEDは何と、ピーク輝度が4000nitだ! これまで2023年が2000nits、24年が3000nitsと来て、25年は4000nitsを実現したのである。それは、ベースになる青色の有機EL発光層の材料を変えたことが大きく効いている。
有機ELパネルの開発テーマは、発光層の材料開発とアルゴリズム(信号処理)が一年おきに入れ替わる。2023年は青色発光層に新材料「OLED HyperEfficient EL」を適用して光源効率を向上した。2024年はアルゴリズムを改良。信号処理による強力な画質向上を目指し、Quantum enhancerという画像ICを開発した。ここでピーク輝度3000nitsを達成。そして今2025年は再度、材料を改革したのである。新材料「OLED HyperEfficient EL3.0」を採用し、光源効率を向上させ、4000nitsを実現した。
QD-OLEDのメリットは高輝度に加え、RGB発光による、高い色純度だ。加法混色のRGB発光では、各色の輝度が合計された値が、白の輝度となる。つまり赤輝度+緑輝度+青輝度=白輝度となる。各色そのものが明るいから、基本的に彩度が高く、色再現がよい。「2025 QD-OLED」の各色輝度は発表されていないが、RGB合計で約4000nitsになるはずだ。
サムスンディスプレイは近年、ゲームやコンテンツ作成、医療用途などのQD-OLEDモニターディスプレイに力を入れており、イノベーションが仕掛けられている。まずピクセル密度。27インチモニターでは、2023年製品が110PPI(QHD)だったが、2025年に160PPI(UHD)になり、近い将来には220PPI(5K)に進む予定という。これはQD-OLEDの量子ドットフィルターを製造するインクジェット印刷工程で、ターゲットを精細化した成果だ。フレームレートも27インチモニターで500Hzと最速だ。
モニターにおけるQD-OLEDの強みが、RGB発光による色再現。特定用途のモニターディスプレイでは、色の正確さが鍵になるから有利だ。昨年は標準のカラーリファレンス、PANTONEとの比較デモを行っていた。ゴッホやクリムトなどの名画をQD-OLEDディスプレイで表示し、PANTONEでの原画の色番号と、ディスプレイの色が同一であることを訴えていた。
今年は、ネットサイトで買った商品が、モニターでの色と実物で違ってはならないとして、QD-OLEDモニターでは実物と同じ色相、彩度であることをアピール。サイズは27/31.5/34/49型の多様に展開する。
森林アートが面白い。「QDジャングル」と称し、テレビ用の高輝度QD-OLEDパネルとモニター用のQD-OLEDパネルにて、ジャングルの豊かな色を訴えるメディアアート空間だ。サムスンディスプレイの毎年のスウィートは、こんな目を楽しませる仕掛けがユニークだ。昨年はクレヨンしんちゃんだった。
テレビメーカーによる新しいテレビ用のQD-OLEDパネルの搭載が楽しみだ。