1992年の釜山を舞台にした物語。よってアイフォンなどは出てこないし、テレビはブラウン管。だが描かれている物事は今もどこかの国において現在形で行われているのではないか、そんな生々しい濁りがある。
主人公のヘウンは“クリーンな政治家”として地元でも人気があり、党の公認候補も約束されている。そこで、国会議員選挙への出馬を画策するのだが、そこに横やりを入れてきたのがスンテという年上の男だ。スンテは国を動かすこともできる黒幕であり、そのパワーを知っているヘウンは自分より遥かに年上である彼に礼は欠かさなかったつもりだ。それなのに、なんだというのだ。どうして公認候補を俺から、急に、どこの馬の骨かわからない男に替えるのか。でも俺は勝てるはずだ、地元で人気があるからな。結果、ヘウンはスンテが絡んでいる「極秘文書」を入手し、ギャングから資金を得て無所属で出馬する。大衆の反応も良い。なのに、大衆の気持ちは「得票」に反映されなかった。どうしてだ?
交響曲にたとえると、ここまでが第1楽章という感じ。この後、策略、暴力、団結、裏切りなどが渦を巻いて、第2楽章、第3楽章のような感じで発展してゆくから面白くてたまらない。実にスリリングなどんでん返しもあり。悪党オールスターズのようなキャラクターたちのなかで、誰がいちばんの悪党なのか、観終えたあとにじっくり考えてみるのも一興だと思う。
パク・ソジン扮する「ソン記者」の存在感にも注目したい。ヘウン役は売れっ子チョ・ジヌン、スンテ役はイ・ソンミン、監督イ・ウォンテ。
映画『対外秘』
11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国公開
キャスト:チョ・ジヌン、イ・ソンミン、キム・ムヨル
監督:イ・ウォンテ
2023 | 韓国 | 韓国語 | 116分 | カラー | スコープ |英題:THE DEVIL'S DEAL| 5.1ch | 字幕翻訳:鷹野文子 |
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
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