初代機の登場から36年、6世代目となる英国モニターオーディオのGOLD Series 6Gは、同社の最高峰、HYPHN、Platinumシリーズに続く高級ラインであり、その先進的な内容と充実したラインナップを鑑みても、いま最も注目されているスピーカーシステムの1つといっていいだろう。
最大の注目点は、高域用ユニットとして最新世代のハイルドライバー型トゥイーター、MPD III(Micro Pleated Diaphragm 3rd Generation)トランスデューサーを搭載したこと。上級機の開発で培った技術、ノウハウを積極的に活かし、歪みを抑えつつ、ワイドレンジ化を実現。再生帯域を60kHz(-6dB)まで拡張している。
同時にコーンの放射面を完全な正方形とすることで、水平、垂直の両方向で均等な音の拡がり、拡散が可能になり、理想に近い音場特性を獲得。またウェーブガイドの最適化により、指向性が制御され、音場感と感度の向上に寄与している。
中域、低域を担当するユニットの振動板には、新たな金属コーン技術、HDT(ヘキサゴナル・ダイアフラム・テクノロジー)が投入された。これは上級モデルのRDT IIIコーン同様、振動板上に六角形のパターンを非対称に配置するというもので、Silver 7Gシリーズで採用されている既存のRST IIコーンに対して、共振周波数は約10%上昇するという。
振動板の素材には剛性と耐久性に優れるC-CAM(セラミック・コーテッド・アルミニウム/マグネシウム合金)を採用。ちなみにこのHDT C-CAM 振動板は、モニターオーディオ史上、最も強力で、精密な動作が可能だという。
HDT C-CAMウーファーは203mm径(GOLD 500-6G、GOLD 100-6G)と152mm径(GOLD 300-6G、GOLD C250-6G、GOLD 50-6G、GOLD On Wall-6Gで採用)の2種類を製品サイズの違いによって適宜搭載している。
さらに最小機GOLD 50-6Gと壁掛け用GOLD On Wall-6Gは2ウェイ構成となるが、両機以外モデルはミッドレンジとして76mm径のHDT C-CAMドライバーを採用した3ウェイ構成を採用している。
高域と中域の2基のユニットは「ミッドポッド」という鉄製のサブバッフルを介して取り付けられている。低域ユニットを含めて、全ユニットは、キャビネット前方からネジ止めはされておらず、鋳造アルミニウム製の軽量シャーシにスルーボルトを介して、キャビネット後方から固定されている。
このシステム全体の強度を高める独自の手法は、モニターオーディオが近年積極的に用いる技術であり、引き続き採用している。ユニット周辺に一定の空気の流れを確保して、動きに対するストレスを低減している点も見逃せない特徴である。
GOLD 100-6Gは、小気味よいサウンドで声の表現が絶品だ
まず、3ウェイのブックシェルフ型システム GOLD 100-6G。ブックシェルフ型としては2ウェイのGOLD 50-6Gも用意されているが、本機は203mm径HDT C-CAMウーファーやエンクロージュアの角の回析対策を施したミッドポッドの取り付けなど、GOLD 500-6Gの技術を受け継いだ上位機種となる。
視聴室のリファレンスシステムとの組合せで、ヴォーカル、ピアノ、クラシックと、聴き慣れた楽曲が再生してみたが、そのサウンドは小気味よく反応する低音と、スムーズな空間の拡がりが特徴的だ。開放的な聴かせ方だが、音調としては適度な湿り気が伴ない、入力信号に的確に反応する俊敏さを感じさせる。
最も感心したのは、女性、男性を問わず声の表現に優れていること。SACD『Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics-/今井美樹』(ユニバーサル/ステレオサウンド)から「シンデレラ・エクスプレス」を再生したが、独特の艶を感じさせる透き通った彼女の歌声についつい聴き入ってしまった。
時折、響きの消え際で、かすかなザラツキ、ぎこちなさを感じたため、試しにターミナル部分の純正の金属製ジャンパープレートを取り外し、編集部制作のジャンパー線と交換。これが大正解。そうしたクセっぽさは見事に解消され、より清々しい空間描写が楽しめるようになった。以降、他の機種の試聴もジャンパー線に交換して、行なうことにした。
優秀なS/N感。きめ細かな響きが持ち味のGOLD 300-6G
次は152mm径HDT C-CAM ウーファーを2基搭載したGOLD 300-6G。GOLD 500-6G同様、3ウェイ4スピーカーのフロア型システムだが、ウーファーがひと回り小さくなり、MPD IIIとミッドレンジを収めたミッドポッドもエンクロージャー内に収まっている。
雑味のない透明感に溢れたサウンドが清々しく、堂々として、軽やかだ。中域から低域にかけてのグラデーションの描き分けもスムーズで、音階の描写も大味にならない。高さ方向、奥行方向への空間描写も実に意欲的で、きめ細かな響きが目の前にフワッと拡がる。随所でスピーカーシステムとしてのS/Nの良さを感じさせてくれるサウンドだった。
さすが最上位機。実に堂々とした落ち着きのある音で、空間描写も巧みなGOLD 500-6G
シリーズの最上位となるフロア型モデル、GOLD 500-6G。203mm径HDT C-CAMウーファー2基と、76mm径HDT C-CAMミッドレンジ、MPD IIIトゥイーターで構成されている3ウェイ4スピーカーだ。
外観は複雑な形状を持つPlatinumとは異なり、スクエアなボックス型だが、そのサイズ、形は定在波対策も含めて、巧みに計算されたもの。内部の要所には補強材が配置され、エンクロージャーとしての強度を高めている。
ちょっと不思議なのは、MPD IIIとミッドレンジの両ユニットをマウントした鉄製ミッドポッドの先端がエンクロージュア内に収まりきらず、わずかに突き出ていること。これは音質対策の一環で、エッジ部分の回折の影響を最小限に抑えるのが狙いだという。GOLD 100-6Gでも同様の手法を採用している。
実に堂々とした落ち着きのあるサウンドで、音離れがいい。中低域の描写にも余裕があり、バスドラがよく弾み、ベースが躍動する。
そして新鮮だったのが、空間の拡がりが豊かで、しかも高さ、左右、奥行方向と、ほぼ均等なスケール感で、ストレスなく拡がることだ。チョ・ソンジンのピアノも緻密な響きが均等に拡がるため、収録ホールの状況がより鮮明に感じとれ、演奏自体のリアリティも増す印象だ。MPD IIIトゥイーターの効果だろう。
臨場感に富んだ、雄大なライヴ空間を体験。サラウンドで組んで際立つバランスの高さ
最後にGOLD 500−6G、GOLD 300-6G、GOLD 100-6GにセンタースピーカーGOLD C250-6Gに、イクリプスのサブウーファーTD725SWMK2を加えた5.1chシステムでUHDブルーレイ『アリー/スター誕生』を再生。アリーのピアノ弾き語りで始まる「Always Remember Us This Way」を聴いたが、レディー・ガガ演じるアリーの歌の巧さが際立つ。
囁くように歌う声には、かすかなエコーが加わり、空間としての広さを演出しているが、その場の気配、ニュアンスが生々しいこと。そして歓声の中、彼女の歌声は押し消されることなく浸透し、ステージ中央から客席へと拡がっていく。ここまで臨場感に富んだ、雄大なライヴ空間の体験は貴重だ。
スケールに富んだ一体感のある空間描写は、音響設計のコンセプトが共通のGOLD-6Gシリーズでサラウンドシステムを組んだ成果。特にサブウーファーを除く全スピーカーが、MPD IIIトゥイーターと76mm径HDT C-CAMミッドレンジを同じ位置関係に収めたミッドポッドを装備した3ウェイ構成であり、放射特性を含めた音響特性のスムーズな融合が図られた恩恵が大きかったように感じた。
製品スペック