マランツから、“音質追求” をメインコンセプトとしたストリーミングプリアンプ「LINK 10n」(¥2,200,000、税込)が11月下旬に発売される。
同社では今年8月に “理想の音” を追求したフラッグシップラインナップとして「10」シリーズのプリメインアンプ「MODEL10」と、SACD/CDプレーヤー「SACD 10」を発表、今月下旬に発売予定だ。新製品のLINK 10nはこれらに連なるラインナップで、現在の音楽再生で主流となっているデジタルファイル再生を最高品質で再生しようというモデルとなる。
製品の仕様としては、MODEL 10と同じフルバランス・プリアンプ回路構成(フォノイコライザーも同一)と、SACD10と同じディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」の最新バージョン、HEOS built-inによるネットワーク再生機能、アナログフィルターを搭載する。
そのMMMは、前段となるMMM-Streamに内蔵されたオーバーサンプリングフィルターで、入力されたPCM信号を11.2MHz DSDに変換し、さらにノイズシェーパー処理も行う。続いて。後段のMMM-ConversionでそのDSD信号をアナログFIRフィルターでダイレクトにD/A変換するというシンプルな回路を採用している。
これによって原音に忠実なアナログ信号を再生できるという仕組みで、アナログフィルターについてもSACD 10と同様に、1ch用タイプを8基搭載することで、出力電流を3倍にアップ、抵抗値は3分の1まで下げることができ、結果としてノイズ抑制も実現できている。
ちなみにLINK10nについては5年前から企画が進んでおり、その当時からは材料費などのコストがかなりアップしてしまったという。しかし、先述のように既発売モデルの資産を流用するなどの工夫により、製品化を達成している。筐体もMODEL 10やSACD 10を流用するなど、思い切った決断も行われているが、そのぶん音質と利便性については一切妥協していないとのことだ。
細かな違いとしては、プリアンプ基板はMODEL 10が二階建て構造だったのに対し、LINK 10nではスペースの関係から一枚基板に作り直したという。ヘッドホンアンプはMODEL 10、SACD 10と同じ回路で、ゲイン調整が可能だ。
接続端子は、アナログ音声入力×2(RCA、XLR)、フォノ(MM/MC)、ARC対応HDMI端子、デジタル音声入力✕3(同軸、光×2)、USB Type-A、USB Type-B、LAN、アナログプリアウト✕2(RCA、XLR)、アナログ音声出力✕2(RCA、XLR)、サブウーファー出力、デジタル音声出力✕2(同軸、光)、ヘッドフォン出力を搭載する。
上記のようにLINK 10nにはアナログ音声出力とアナログプリアウトが搭載されており、お使いのシステムに応じてこれらの使い分けを推奨している。既にお気に入りのプリアンプをお持ちであればアナログ音声出力(ラインアウト)をプリアンプにつなげばいいし、LINK 10nのプリアンプ機能も活用したい場合はプリアウトをパワーアンプにつなぐことになる。
ネットワーク再生機能では、Amazon Music、AWA、Deezer、Spotify、SoundCloudなどの音楽ストリーミングサービスに対応。さらにBluetooth(コーデックはSBC)やAirPlay2からの楽曲再生にも対応済みだ。
もちろんNASやUSBメモリーに格納した音源の再生や、PCとつないでUSB DACとしての使用も可能。その際のハイレゾ信号については、USB Type-Bからは最大384kHz/32ビットのPCMとDSD 11.2MHzまで、同軸/光デジタル入力からは最大192kHz/24ビットのPCMが再生できる。
HDMI ARC端子からは192kHz/24ビットのPCM(2ch)を受付可能。ARC対応テレビとつなぐことで、放送はもちろんブルーレイなどのパッケージソフトもマランツクォリティで楽しむことができる。HDMI CECにも対応済で、テレビのリモコンでLINK 10nの電源やボリュウム操作も可能だ。
LINK 10nの説明会に参加し、実際のサウンドを聴かせてもらった。今回は2台のMODEL 10に音声出力からL/R信号をそれぞれ接続し、MODEL 10のボリュウム連動機能を使って、B&W「801 D4」を駆動している。
まずNASにつないでネットワーク経由で上原ひろみの「シルヴァー・ライトニング・スイート」(96kHz/24ビット)を再生してもらう。ピアノのタッチが明瞭で、スピード感のある力強い演奏が再生される。思わずリズムを刻みなくなるノリのよさが魅力だ。米津玄師の「地球儀」(96kHz/24ビット)では、米津らしいちょっとせつないトーンの声や息遣いがていねいに再現されている。
同じく96kHz/24ビットで、ドヴォルザーク/ロサンゼルス・フォルハーモニック「新世界より」は、ステージがスピーカーの奥側にゆったり広がる印象で、ひじょうに静かな空間に力強い演奏が響いてくる。低音の力感、バイオリンの高音の伸びも細やかに描き出す。
続いてLINK 10nをUSB DACとして鳴らしてみる。Mayo Nakano Piano TrioのDSD11.2MHzから「MIWAKU」を再生すると、こちらも広大なステージが眼前に出現し、音の密度も濃い。ピアノと弦楽器の音の絡みがひじょうにリアルで、演奏の熱さが音から伝わってくる。高さ方向の情報もきちんと出てくる。
サウンドマスターの尾形好宣氏によると、LINK 10nでは特に個性を持った音作りにはしていないとかで、確かにソースに忠実な印象のサウンドが楽しめる。「10」シリーズとの組み合わせはもちろん、他のブランドのアンプと組み合わせた場合でも、それらの持ち味を活かした音楽体験を提供してくれることだろう。