6月4日発売『ステレオサウンド No.231』の特集は、毎年冬号恒例「ベストバイコンポーネント」で上位に選出された製品の魅力を探る「ベストセラーモデル 選ばれる理由」です。ステレオサウンドオンラインでは、本特集の内容を順次公開してまいります。今回は、フェーズメーションのフォノカートリッジ『PP2000』の人気の理由を探求します。(ステレオサウンド編集部)
画像1: フェーズメーション『PP2000』【ベストバイコンポーネント 注目の製品 選ばれるその理由】

フェーズメーション PP2000 ¥550,000
● 発電方式:MC型
● 出力電圧:0.3mV(5cm/sec、1kHz)
● 内部インピーダンス:4Ω
● 適正針圧:1.7~2.0g
● 自重:14.3g
● 問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)フェーズメーション営業部. ☎ 045(710)0975
● 発売:2015年
● 試聴記掲載:197号

 

   

PP2000は、硬質感のない瑞々しい音で、しかも生気を伴った精緻さがある。エネルギッシュに躍動する音も誇張感は皆無で、自然かつ芳醇だ

 昨今、オーディオ界は、ご存じの通り大変なアナログブームのさなかにある。アナログレコード再生は、実際やるとなると何かとややこしく、カートリッジの取付けやトーンアームの調整など、あれこれ手を煩わせるところが少なくない。CD再生やネットワークオーディオ再生に比べて、多くの点で面倒なところがあるにもかかわらず、人気が衰えるどころか、逆にじわじわ増しているという現状。その理由は、面倒くさい、ややこしいところも含めて、アナログ再生が抜群に楽しいからに他ならない。加えて、きちんとやれば、音がとても良いことが最大の理由である。

 「音が良い」のであれば、誰もが情熱を傾けるようになるのは必定。ところが、1982年にCDが登場すると、アナログ再生は一転して下火となってしまった。それまでアナログレコードで音楽を再生して楽しんでいたオーディオファイルは、CDやSACDで聴く、ノイズが無くダイナミックレンジが大きく、再生周波数帯域も広大で、S/Nも良好という音にすっかり慣れ親しんでしまったのかもしれない。しかし、そんな耳になってしまっても、当時と比べていろんな点で目覚ましい進化を遂げた現代のアナログ再生で聴くことができる音の生々しさには、格別なものを感じるに相違ない。

 CD/SACD再生から、再びアナログ再生に戻る人が年々増えている。私もアナログ再生はとても音が良いと、あらためて実感している。あと4、5年という一過性のブームではなく、もっと長い間、一般的な音楽再生の手段として定着することだろう。これは、CD/SACD再生を経て、デジタルファイル再生や、Roonを介したストリーミング再生にも注力した経験を経て、アナログ再生に回帰した私の偽らざる実感である。アナログオーディオは今後も間違いなく不滅である。

 

一台のADプレーヤーは言うなれば、私たち一人一人の音楽や音に対するセンスの集大成

 アナログレコード再生には、アナログレコードプレーヤー(ADプレーヤーとも言う)が必要だ。このADプレーヤーは、ターンテーブル、トーンアーム、フォノカートリッジといった様々なコンポーネントで構成されるが、これらの中から吟味したものを各人自由に組み合せて、世界で一台だけという自分仕様のアナログレコードプレーヤーが完成する。さらに様々なコンポーネント(フォノイコライザーやMC昇圧トランスなど)の選択や組合せ次第で、出てくる音が素晴らしくもなり、感心しない音にもなる。

 つまり、どこを替えても音が変るとなると、一台のADプレーヤーは、言うなれば、私たち一人一人の音楽や音に対するセンスの集大成ということになる。他の人が愛用する一台のADプレーヤーシステムを見せてもらえば、その人の音の好みや性格、オーディオ的なスキルの高さまで解ってしまうのである。食の世界において、『美味礼讃』で知られるブリア=サヴァランの名言だが、「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人か言い当ててみせよう」と一緒であろう。

 フォノイコライザーやMC昇圧トランスまで含めると、音の良さに寄与する要素がさらに増えて、選択に迷う。無論、それぞれにお金がかかるのだが、それも含めてオーディオとは何と贅沢な趣味であることか。お金がかかることについては、それもまた楽しからざるやで、その製品の価格を良しとするか否かは、人それぞれということだ。料理であれ何であれ、その道を極めんとすれば、製品の価格や性能に悩むのも、楽しさの一つ、ここは大いに悩んでみよう。

 

画像3: フェーズメーション『PP2000』【ベストバイコンポーネント 注目の製品 選ばれるその理由】

EA2000 ¥3,300,000
● MM/MC対応型
● 入力感度/インピーダンス:0.1mV/1.5~40Ω(MC)、2mV/47kΩ(MM)
● 寸法/重量:アンプ部・W214×H118×D368mm/6.1kg、トランス部・W214×H118×D265mm/4.5kg、電源部・W214×H118×D352mm/7.8kg
● 発売:2020年
● 試聴記掲載:217号

画像4: フェーズメーション『PP2000』【ベストバイコンポーネント 注目の製品 選ばれるその理由】

 

画像5: フェーズメーション『PP2000』【ベストバイコンポーネント 注目の製品 選ばれるその理由】

EA320 ¥270,000
● MM/MC対応型
● 入力感度/インピーダンス:0.13mV/470Ω(MC)、2.5mV/47kΩ(MM)
● 寸法/重量:W286×H93×D252mm/3.9kg
● 発売:2022年 
● 試聴記掲載:222号

 

 

フェーズメーションPP2000は、現代ハイエンドオーディオの究極的な音を聴くことができる

 では、一体全体、何を買えば良いのか。即答は困難だ。だが、安心されたい。そんな人のために『ステレオサウンド』は毎年「ベストバイコンポーネント」を選出し、賢く喜ばしい購入の一助となるべく努めている。そこで、アナログレコード再生に話は戻るが、ターンテーブル本体は、各人にデザインの好みもあろう。サイズの制約も、価格も大概高価であり、予算も人それぞれというわけで、比較的買いやすく、交換も割と容易なのが、フォノカートリッジである。

 私が最初におすすめしたいのが、2015年に発売されたフェーズメーションのMCカートリッジ、PP2000である。このPP2000は、ステレオサウンドグランプリ2015をデビューした年に受賞した。前身のPP1000で確立した高性能をベースに、各部を総合的にブラシュアップ。カンチレバーには無垢材のボロンを採用。ベースとボディはアルミニウムにDLC処理を行なって、振動減衰への配慮も万全だ。

 ベストバイコンポーネントの順位においても、発売以来9年になるが、「フォノカートリッジ部門」で、毎年ほぼ1位か2位、少なくとも5位以内という申し分のない成績である。さらに本機は、ステレオサウンドでの試聴テスト時のリファレンスにも採用されている。このことも市場で高人気の一因であろう。

 私自身も長年手元に置いて愛用するMC型カートリッジであり、アナログレコードを再生しているとはにわかに思えない、驚くほどバックグラウンドノイズが静かで、鮮度の高い音がハイスピードで飛び出す。温かくて優しいという、一般のアナログ再生に対するイメージをあっさり覆す、現代ハイエンドオーディオの究極的な音を聴くことができる。透明で三次元的に音場が広大に現出し、マジックのごとく、どんなジャンルの音楽も極めて精緻にパノラミックにステージが現われる。

 弦楽合奏や歌声など、オーガニックであって欲しい音は、硬質感のない瑞々しい音で、しかも生気を伴った精緻さがある。エネルギッシュに躍動する音も誇張感は皆無で、自然かつ芳醇。アナログディスクの音を、堪能したいならば、本機の選択は大正解だ。

 

低価格のMCカートリッジ+フォノイコライザーの組合せなら断然PP200+EA220!!

 価格レンジが驚くほど広いMCカートリッジだが、「ベストバイ」ということならば、同社のエントリークラスのフォノイコライザーEA220が昨年登場したことにより、俄然注目度が上がったMCカートリッジ、PP200に注目してほしい。

 このPP200は低価格(11万円)ながら、音質は極めて素直で、ナチュラルな質感と絶妙な温度感が素晴らしい。加えて、入手しやすい価格も喜ばれて、フォノイコライザーのEA220とともに極めて人気が高い。アナログは世界的なブームだが、その価格も世界的にハイパーインフレ気味と言いたいほど高価な製品が多い。そんな世情もあって、PP200とEA220の人気がさらに高まっている。

 もちろんそれだけではなく、この2機種の人気を押し上げているのは、フェーズメーションというブランドの信頼性によるところが大きい。エントリークラスであってもそこは変らない。このことは、趣味の世界では極めて大切なことである。人にものをすすめる場合、ブランドには期待を裏切らない信頼と安心が必要だ。これは大事なことと考える。

 

PP200 ¥110,000
● 発電方式:MC型
● 出力電圧:0.3mV(5cm/sec、1kHz)
● 内部インピーダンス:4Ω
● 適正針圧:1.7~2.0g
● 自重:10.3g
● 発売:2020年
● 試聴記掲載:217号

 

画像9: フェーズメーション『PP2000』【ベストバイコンポーネント 注目の製品 選ばれるその理由】

EA220 ¥110,000
● MM/MC対応型
● 入力感度/インピーダンス:0.12mV/470Ω(MC)、2.5mV/47kΩ(MM)
● 寸法/重量:W220×H57×D228mm/2.6kg
● 発売:2023年 
● 試聴記掲載:227号

 

 

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本記事は『ステレオサウンド No.231』
特集「ベストバイコンポーネント注目の製品 選ばれるその理由」より転載

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