アンコアホテルのサムスン・ディスプレイスウィートを訪れるのは2023年から2年連続だ。2022年に登場し、3年目を迎えた2024年版QD-OLEDの取材のためだ。

 登場から2年でも性能は大きく向上したが、3年目の今回はさらに向上したことが分かった。ディスプレイパネルづくりでは毎年、画期的な技術を開発し続けられるわけではない。QD-OLEDも2022年に基本をスタートさせ、次に製造、回路、画質を磨くというプロセスが続いている。

 2024年バージョンは、完成度を格段に上げた。まずピーク輝度は2022年モデルが1545nits、2023年モデルは2096nits、そして2024年モデルは3000nitsに向上した。

画像: 「Quantun Enhncer」という画像ICにより、信号処理による強力な画質向上を目指す

「Quantun Enhncer」という画像ICにより、信号処理による強力な画質向上を目指す

画像: 「Quantun Enhncer」により、平均300/ピーク3000nitsを達成

「Quantun Enhncer」により、平均300/ピーク3000nitsを達成

 昨2023年の技術的な進歩は、①QD-OLEDの青色発光層に新材料「OLED Hyper Efficient EL」を適用して光源効率を向上、②ビッグデータに基づくAI技術により、各画素の情報をリアルタイムに収集し、それを用いて発光を最適化する「インテリセンスAI」――だったが、2024年はアルゴリズムを刷新、Quantun Enhncerという画像ICを開発し、信号処理による強力な画質向上を目指した。

 まず輝度は、平均300nits/ピーク3000nitsを達成。ピークの値もさることながら、平均値の高さ、そしてこのふたつが、消費電力が等しいことに注目。LOHASなどを考慮すると、省エネルギーも大事な要件だ。

 実は、このところLGディスプレイのWOLED方式とサムスンディスプレイのQD-OLED方式は、同じパフォーマンス値で推移している。2023年のピーク輝度はWOLEDがMETAによりかさ上げされ、前年の1300nitsから、2100nitに向上。QD-OLEDは、前述したように2096nitsだった。つまり、昨年時点で、ほとんど並んだ。2024年は、なんとWOLEDもQD-OLEDもまったく同じ3000nitsを表明。

画像: これまでの77、65、55インチに、49と34インチが加わる

これまでの77、65、55インチに、49と34インチが加わる

画像: QD-OLEDでは、色の正確さも訴求ポイントだ。標準のカラーリファレンス、PANTONEとの比較デモ

QD-OLEDでは、色の正確さも訴求ポイントだ。標準のカラーリファレンス、PANTONEとの比較デモ

画像: 有機ELモニターのソニーBVM-X300をリファレンスにした、QD-OLED映像との色の比較デモ

有機ELモニターのソニーBVM-X300をリファレンスにした、QD-OLED映像との色の比較デモ

 ここまでは白色の輝度の話だが、違うのがRGBの各色のピーク輝度を合算したカラー輝度。QD-OLEDはRGB発光だから、カラー輝度と白輝度は、基本的に同一になる。例えば2023年のQD-OLEDは赤427、緑1441、青186で、合計2054nits。これは白輝度とほとんど同一だ。2024年版QD-OLEDの各色の輝度は発表されていないが、RGBの合計で約3000nitsになるはずだ。

 WOLEDは、Wの存在が色再現に影響するが、それでも2024年のWOLEDは、2023年の730nitsから倍増し、1500nitsになった。でもQD-OLEDとの差はあるので、LGディスプレイのこれからの色の追い込みが見物だ。

 QD-OLEDでは、色の正確さも訴求。今年は初めて標準のカラーリファレンス、PANTONEとの比較デモを行った。ゴッホやクリムトなどの名画をQD-OLEDディスプレイで表示し、PANTONEでの原画の色番号と、ディスプレイの色が同一であることを訴えていた。同じ意味で、定番の有機ELモニター、ソニー「BVM-X300」をリファレンスにした、QD-OLED映像との色の比較もデモされていた。

画像: Flex In & Out Flipという、表と裏がディスプレイという360度折り畳み式のスマホ用パネル

Flex In & Out Flipという、表と裏がディスプレイという360度折り畳み式のスマホ用パネル

画像: 横長に伸びるFlip Hybrid

横長に伸びるFlip Hybrid

 昨年になかった展示としては、製造が順調に進んでいることが動画で示された。QD-OLEDではQD部をインクジェットで作る。ピコリットル(10のマイナス12乗リットル)ほどの小さなインキ滴を赤用と青用のサブピクセルに向けて正確に、しかもハイスピードで適下させなければならない。この工程は当初は試行錯誤が続いていたが、現在では良品率が格段に上がったとしている。

 このように性能は上がったが、でも採用メーカーはあまり増えていない。テレビではサムスン、ソニー、シャープの後にどこが続くかが注目だ。

 サムスンディスプレイはスマホ向けの有機ELパネルの大手メーカーでもある。こちらはQD-OLEDではなく、完全RGB発光だ。今年のハイライトはFlex In & Out Flipという、表と裏がディスプレイという360度折り畳み式のスマホ用有機ELパネルだ。これまでは折りたたみ時に情報を見るために外側にもう1枚のパネルが必要だったが、Flex In & Out Flipは、ディスプレイがひとつで済む。その合理性をブースではアピールしていた。タブレットでは、横の伸びるFlip Hybridパネルも面白い。

画像: OLDIESとOLEDを掛けた楽しい展示。中には小さなOLEDパネル

OLDIESとOLEDを掛けた楽しい展示。中には小さなOLEDパネル

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