高音質ワイヤレス通信方式WiSA(Wireless Speaker and Audio)が、「フォーマット2.0」とでも形容できる、新展開を開始したことが、CESでの取材で分かった。コンベンションセンター近くのエンバシイ・スウィートホテルに構えたWiSAデモルームには、ひっきりなしにテレビ、スピーカー、サウンドバーなどのメーカー関係者が訪れていた。
WiSA技術は、もともとがアメリカのベンチャー企業Summit Wirelessが開発した音声を非圧縮、高品質で無線伝送する技術が元になり、2013年にコンソーシアムが結成され、業界のデファクト・スタンダードを目指して活動が始まった。これまでは「WiSA・HT(ホームシアター)」規格があり、世界ではディナウディオ、KEF、B&Oなどのもっぱら高級オーディオメーカーが、参入し、高品位なワイヤレススピーカーを商品化していた。
新展開はテレビ、サウンドバー、ワイヤレススピーカーシステム……などの入門からミドルクラス製品にWiSAを採用するのが目標だ。つまり普及だ。
10年前にWiSAを始めた時は、スピーカーにアンプや無線回路を内蔵するなど、当時としては “非常識” であった。だから普及はなかなか難しかった。しかし、今やWiFi、ブルートゥース、そして各メーカーの独自伝送方式……とワイヤレス・アクティブスピーカーが全盛になりつつある
これまでの「WiSA・HT」規格はそのまま継続し、新たに立ち上げるのが「WiSA・E」。Eは「EMBEDDED」の略。つまり「埋め込み」だ。
これまでのWiSA・HTでは、WiSA会社(Summit Wirelessの後継)が提供するWiSA・LSI(カスタムASIC)を使わなければならなかった。新たな「WiSA・E」は汎用ICに、リナックス、もしくはアンドロイドベースのソフトウェアを埋め込んで使う。それは大きなコストダウンになり、スピーカーやサウンドバーメーカーもWiSAを採用しやすくなるだろう。
ではWiSA・HTとWiSA・E(さらに細かくいうと、ENTERPRISE規格)では何が異なるか。伝送周波数帯の5GHz、8つのチャンネル数は変わらない。ビット数も24ビットと同じ。サンプリング周波数はWiSA・HTがマルチチャンネルで、96kHz/24ビットまで。WiSA・Eはマルチチャンネルでは48kHz固定、2チャンネルでは192kHz/24ビットまで。遅延は、WiSA・HTの5ミリ/秒がWiSA・Eでは20ミリ/秒と少し遅くなる。
エンバシイ・スウィートホテルのWiSAデモルームを訪れたメーカー関係者は、とても興味深そうに対応していたから、製品化も積極的だろうと判断した。登場が楽しみだ。