エラックから、新製品スピーカー「ELEGANT BS 312.2」(¥385,000、ペア、税込、12月下旬発売)が発表された。新開発されたJET6トゥイーターを搭載した、300シリーズの新しいラインナップだ。そのJET6の特長や今後の展開について、先日開催された東京インターナショナルオーディオショウで来日した、エラックのエキスポート・マネージャー、Holger Wittさんにインタビューを実施した。以下でその内容を紹介する。(StereoSoundONLINE・泉 哲也)

画像: JET6を搭載した「ELEGANT BS 312.2」(¥385,000、ペア、税込、12月下旬発売)

JET6を搭載した「ELEGANT BS 312.2」(¥385,000、ペア、税込、12月下旬発売)

――今回はお時間をいただきありがとうございます。まずは新搭載されたJET6トゥイーターについて詳しく教えてください。

HolgerWitt JET6はエラックの技術チームが新たに開発したトゥイーターです。今回登場した「BS312.2」のように型番に「.2」がついている製品はJET6を搭載したシリーズになります。

 JET5からJET6への一番大きな変更点はリボン振動板の構造で、振動板のプリーツ(ひだ)の折り方が変わっています。振動板の素材はJET5からほとんど変更はありませんが、プリーツ部分についてJET5では厚いひだと薄いひだの2種類を交互に繰り返していましたが、JET6では折り方がもう少し複雑になりました。どのような折り方が一番いいかについて、2〜3年かけて開発・研究を続けてきました。さらに振動板を折る作業は機械ではなく人の手で行っています。

――10年ほど前に御社の工場にうかがって、JETトゥイーターを作っている現場を拝見したことがあります。その時は熟練した女性の職人さんがていねいに作業をしていました。その製造方法は今も同じなんですね。

画像: 新開発のJET6トゥイーター。ユニットサイズや厚みはJET5とまったく同じ

新開発のJET6トゥイーター。ユニットサイズや厚みはJET5とまったく同じ

HolgerWitt そうでしたか。現在は男性の職人も加わって、製造規模も大きくなりました。今回、折り方が変わることによって作業効率が悪くなると、コストアップにつながってしまいます。それを避けるために、製造現場できちんと作業ができるのかの検証も重要でした。

――JET6の場合、1週間でどれくらいの数が生産できるんですか?

HolgerWitt 先般、工場をリニューアルして製造ラインが増えたことと、最近は自社製品以外でもお使いいただくなどして需要が増えたこともあり、生産数はかなり増やしています。年間で8万個くらいは製造していると思います。

――JET6の外観はJET5と同様ですが、振動板構造以外に変わった点はどこなのでしょう?

HolgerWitt 振動板の前にあるフロントプレートの開口部の大きさと、穴の数も変わっています。これは見た目のおしゃれさのためではなく、コイルと合った穴の大きさを探した結果、この形が一番音の広がりがあるということで採用されたそうです。3Dプリンターで100種類ぐらい試作した結果、一番よかったのがこのサイズと形状だったということです。

――音の指向性としては、横方向の拡がりを意識したのでしょうか?

HolgerWitt 縦横両方です。穴の角に丸みを持たせて、どちらにも広がるように配慮しました。

画像: JET6とJET5の一番の違いは、振動板プリーツの折り方とのこと。上はそのイメージ図で、JET6の方がより複雑になっているそうだ

JET6とJET5の一番の違いは、振動板プリーツの折り方とのこと。上はそのイメージ図で、JET6の方がより複雑になっているそうだ

――ドライバーユニットのサイズは同じですか?

HolgerWitt そこは変えていませんので、従来モデルに搭載することもできます。JET6の特長としては、THD(全高調波歪率)をかなり抑えることができました。人間の耳では認識はできないぐらいの違いなんですが、ヴォーカルなどの音がクリアーで鮮明になったという違いを感じることができるかな、と思っています。

――JET6の方向性としては、そういったクリアーな音を狙っていたのですか?

HolgerWitt 狙っていたというよりは、JET5よりもいいものを作ろう、JET5とは違う音を作ろうと試行錯誤をした結果、クリアーな音に行き着いたのではないでしょうか。ただJET5とは違う音と言いながら、エラックの音である必要はあったので、その中で試行錯誤した成果ということです。

――では、新製品のBS312.2について教えてください。

HolgerWitt エラックのDNAともいえる300シリーズは、完璧なスピーカーと言っていいと思うんですが、それをさらによくするために、少し変更を加えています。

 一番大切なのはJET6が搭載されたことです。さらにバイワイヤリング接続への対応とウーファーにも若干の変更を加えています。ウーファーの振動板は変わっていませんが、磁気回路のコイルを変更しました。

画像: 実際に測定してみると、特性の違いも現れているとのこと。特に1〜2kHzでの歪率の減少が顕著だ

実際に測定してみると、特性の違いも現れているとのこと。特に1〜2kHzでの歪率の減少が顕著だ

――スピーカーの場合、トゥイーターが変わると、ミッドやウーファーとのクロスオーバーを調整する必要があると思いますが、その点はどうだったのでしょう?

HolgerWitt ユニット自体は同じですが、BS312.2ではクロスオーバー周波数を調整し直しています。その意味ではネットワーク回路も変更していますね。

 その他の変更点としては、これまで同梱されていたグリルがなくなって、必要な方は、別途お好きなグリルを購入していただくという形にしています。グリルの種類は、ファブリック(布)タイプやパンチングメタルを準備しており、日本ではブラックとグレーのファブリックタイプが発売されます。これらのグリルは前モデルのBS312でも使うことができます。

 また今回、BS312.2用のスペーサーもオプションで発売します。底面にはラバーを取り付けてありますので、テレビ台に置く時なども振動を吸収できます。これもBS312でもお使いいただけます。

――スペーサーは音のチューニング用でもあるんですね。これならBS312のユーザーも試してみたいと思うことでしょう。

HolgerWitt スピーカーは置き場所の影響も受けますから、ぜひお試しいただきたいと思います。

画像: サランネットはオプションとなり、好みの色も選べるようになった(左)。右は棚置きなどの際に使うスペーサーで、こちらも別売となる。ふたつのアイテムとも前モデルのBS312でも使用できる

サランネットはオプションとなり、好みの色も選べるようになった(左)。右は棚置きなどの際に使うスペーサーで、こちらも別売となる。ふたつのアイテムとも前モデルのBS312でも使用できる

――BS312.2はJET6を搭載したことでスピーカーとしての聴こえ方も変わると思いますが、その辺りはいかがでしたか?

HolgerWitt 個人的な見解ですが、BS312に比べて音がクリアーになって、低音が軽くなったという印象もあります。弾みがいい、あまり重くなく、軽やかに鳴るという感じです。

――東京インターナショナルオーディオショウでは、JET6を搭載した新製品として、「VELA」シリーズも展示されていました。

HolgerWitt 「VELA」の他に「SOLANO」シリーズでもJET6搭載機を準備しています。これらのモデルに関してはJET5がJET6になっただけで、他のユニットやクロスオーバーネットワークは変更していません。具体的な発売スケジュユールは私にはわかりませんが、日本では来年の春頃から順次登場するのではないでしょうか。

画像: インタビューに対応いただいた、エラックのエキスポート・マネージャー Holger Wittさん

インタビューに対応いただいた、エラックのエキスポート・マネージャー Holger Wittさん

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