『ヒトラーの贋札』から15年余り。ステファン・ルツォヴィツキー監督の最新作『ヒンターラント』が9月8日から新宿武蔵野館ほかで全国公開される。

 主人公のペーターは元刑事。第一次世界大戦の兵士でもあったが、敗戦により、戦後はロシアの捕虜収容所に閉じ込められてきた。それを終えてようやく故郷に戻ることができたのはいいが、「勝てば官軍」なんとやらで、敗残は敗残だ。家に戻っても、いるはずの家族もなく、「戦後の世の中の流れ」にもついていけない。酒場で飲んでいると、管楽器やドラムの入ったバンドがリズミカルな音楽を演奏していた。「これは何だ?」「ジャズよ」「なんだその音楽は。戦前にはワルツとオペレッタしかなかったのに」。時は1920年、アメリカでは“ジャズ・エイジ”が始まろうとしていた頃だ。

画像: 戦友の怪死の真相を暴くべく、帰還兵が動き出す。彼につきつけられた現実とは……

 全編ブルーバック撮影であるのも、この作品の特徴だ。今から100年前の。「時代劇」と言っても過言ではない時代の物語であるというのに、妙に近未来的であり、ひんやりするほどのリアリティがある。絵画/3次元、映画/舞台、クリアにミキシングされた音/場内のアンビエンスの差を取り払ったかのようなスケールの大きな世界は「めくるめく」と表現するにふさわしく、「戦友の怪死の犯人を捜す」という、決して目新しくもないであろうテーマが、これほど新鮮な物語として体験できるのかと目と耳を見張った。

 人を殺し建物や土地を壊滅させるばかりでクリエイティヴなものはなにひとつ残さなかった兵士というもの、戦争というもののむなしさを改めて知る。

映画『ヒンターラント』

9月8日(金)公開

監督・脚本:ステファン・ルツォヴィツキー
配給:クロックワークス
(C)FreibeuterFilm/Amour Fou Luxembourg 2021

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