シャープから、有機ELテレビの新ラインナップ2シリーズ4モデルが発表された。「量子ドット有機EL(QD-OLED)パネル」を搭載した「FS1」シリーズと、「S-Brightパネル」を搭載した「FQ1」シリーズで、価格と発売時期は以下の通り。
●AQUOS QD-OLED
4T-C65FS1 市場想定価格60.5万円前後(9月16日発売)
4T-C55FS1 市場想定価格44万円前後(9月16日発売)
●AQUOS OLED
4T-C65FQ1 市場想定価格47.3万円前後(8月5日発売)
4T-C55FQ1 市場想定価格33万円前後(8月5日発売)
同社では今年6月に4K液晶テレビ3シリーズ9モデルを発売、42インチから75インチまで充実のラインナップを揃えてきた。今回の有機ELテレビは、従来の「ES1」「EQ1」シリーズの後継機で、画面サイズは55インチと65インチ。どちらもパネル等を進化させて有機ELの画質を追求したモデルとなっている。
FS1シリーズは高輝度、広色域、広視野角を実現する量子ドット有機ELパネルを新搭載した。有機ELパネル自体は青色発光で、その光を前面に備えられた量子ドットフィルター層で偏光してRGBを得ている。これにより、白色発光パネル+カラーフィルターに比べてより純度の高い色を得ることができるわけだ。
さらに有機ELパネルの発光層とパネル面の温度分布をリアルタイムに解析し、発光量を画素単位で厳密に制御する「クライマックスドライブ」回路も搭載されている。これにより量子ドット有機ELパネルの持つ輝度、色再現性を最大限に引き出すことができ、画面全体が暗い映像での漆黒からきらめきまで、明るいシーンでは豊かな色彩とリアルな映像を再現できるという。
量子ドット有機ELパネルでは高いピーク輝度も実現できるが、同時に放熱対策も欠かせない。そこでFS1シリーズでは放熱シートとアルミ製放熱プレートを組み合わせた独自の2層式放熱構造「クールダウンシールドII」を採用している。これによりパネルの温度上昇と温度ムラを抑えることができ、リビングでも不満のない明るさを獲得したという。従来は有機ELパネルと放熱シートの間に隙間があったが、今回は炭素素材のシートをパネルの裏に直接貼り付けているので、放熱効果もかなり改善されたという。
FQ1シリーズでは、発熱を効率的に抑える「クールダウンシールド」構造の高輝度有機EL「S-Brightパネル」を搭載。有機ELパネルの輝度特性を最大限に引き出す独自制御技術も「Sスパークリングドライブ EX」に進化して、漆黒の中の花火や星などもダイナミックな表現で映し出してくれる。
それらのパネルと組み合わせる映像エンジンは「Medalist S4X」(FS1シリーズ)、「Medalist S4」(FQ1シリーズ)を採用。100万以上の映像を学習したAIが人物の顔や空などの情報を検知し、その情報と再生するコンテンツのジャンルに合わせて色彩、輝度(明暗)、精細感を自動的に調整してくれる画質モードの「AIオート」も搭載済だ。
加えて内蔵されたセンサーで再生環境の明るさを検知し、それに応じて最適な画質に自動調整する「環境センシング」機能も備えており、明るい環境では暗部階調を持ち上げ、輝度のダイナミックレンジを拡大させて見やすい映像に調整してくれる。暗めの環境では暗部階調をなめらかに再現できるよう調整してくれるそうだ。
他にも8Kテレビ用に培った「超解像アップコンバート」や映像本来の美しさを解析して復元する「オブジェクト プロファイリング」機能も内蔵している。S4XとS4の大きな違いは、「量子ドットリッチカラー」で、これは量子ドット有機ELパネルで自然で豊かな色を再現するための機能だ。
サウンド面では両モデルとも「AROUND SPEAKERSYSTEM PLUS」を搭載しており、ドルビーアトモスの再生が可能。画面上部に搭載されたハイトスピーカーは視聴者方向に20度の傾きを持って配置されており、天井の反射を利用して高さ方向の情報を再現、フロントL/Rからの直接音との組み合わせで豊かな方位感を演出している。
使用ユニットはフロントL/Rがそれぞれフルレンジユニット2基+トゥイーター、トップL/Rがウーファー+トゥイーターで、さらに画面中央背面にサブウーファーという合計11基を搭載している。FS1ではこれを合計85Wの、FQ1では合計75Wのアンプで駆動している(出力はどちらもJEITA)。
なお「Medalist S4X」や「Medalist S4」にはコンテンツの内容に合わせて音質を自動調整する機能もついているので、「AIオート」を選んでおけば、ニュースやドラマでは人の声を聞きやすくし、スポーツでは臨場感を高めるといった効果を加えてくれるそうだ。
音声操作の「Googleアシスタント」やスマホの画面を大画面で再生できる「Chromecast build-in」、ビデオ通話アプリ「Google Meet」といった機能も備えている。また、スマホウォッチなどのアプリと連携して歩数や心拍数、体重、血圧などの変化をわかりやすく表示してくれる「AQUOSヘルスビューアー」も搭載される。
市販のUSBカメラをつないで使う「リビングカメラ」アプリも進化し、YouTubeとミラー機能(テレビの前の様子を画面に表示する)が同時に使えるようになった。YouTubeでダンスやヨガの動画を再生しながら、自分のポースを確認するといった使い方を想定しているようだ。
接続端子はHDMI入力4系統(eARC対応1系統)、AV入力1系統(3.5mmミニジャック)、デジタル音声出力1系統(光)、ヘッドホン/アナログ音声兼用出力1系統、USB 3系統(録画用1系統)、LAN端子1系統を搭載。内蔵チューナーはBS4K/110度CS 4Kチューナーが2基で、外付けUSB HDDへの録画機能も搭載済だ。
なおシャープではこれまで高画質モデルとしてミニLEDバックライトを搭載した「XLED」シリーズをラインナップしている。このXLEDと今回のQD-OLEDをどう差別化していくのか聞いてみたところ、それぞれ特性が異なることもあるので、ユーザーの用途に合わせて提案していきたいとのことだった。
ホームシアターなどの画質にこだわるならQD-OLED、家族でリビングで楽しむならXLEDといったイメージだろうか。いずれにせよ高画質テレビの選択肢が増えるのはオーディオビジュアルファンにとっては嬉しいはず。シャープ製QD-OLEDテレビの画質に期待しよう。