テクニクスは、ネットワークオーディオアンプ「SU-GX70」(¥220,000、税込)を今月末に発売する(早いお店では今週末頃から展示予定)。そして先日、SU-GX70の魅力が体験できるプレス向け説明会が開催された。

 SU-GX70は、豊富な入力端子を備え、デジタルのハイレゾ音源からアナログレコード、さらには音楽ストリーミングサービスも楽しめるプリメインアンプだ。

画像: 「SU-GX70」のシルバー仕上げ

「SU-GX70」のシルバー仕上げ

 昨今の音楽エンタテインメントを取り巻く動きとして、アナログレコードの人気の拡大や、ストリーミングサービスの普及が注目されている。テクニクスでもこの動向を捉えており、これらのソースをリビングでシームレス、かつ手軽に楽しむための製品としてSU-GX70を企画したという。ちなみに型番の “X” は “Crossover”(クロスオーバー)を意味している。

 そのために、テクニクスの製品として初めてARC対応HDMI端子を搭載した。これにより、ARC対応テレビからの音声信号をHDMIケーブル経由で受け取れるわけで、放送や動画ストリーミングサービス、あるいはブルーレイディスクといったパッケージメディアのサウンドをSU-GX70のクォリティで楽しめるようになる。もちろんその際にHDMI CEC機能を使ってテレビのリモコンで音量調整が可能なこともポイントだ。

 そのHDMI端子には、パナソニックのディーガ等で培ってきた音質改善技術も投入されている。そもそもHDMI ARCは「オーディオ・リターン・チャンネル」という名前の通り、機器側から映像信号をテレビに入力し、そこに乗重して音声信号を戻す仕組みになっている。つまり動作としてはSU-GX70から映像信号を送り出し、テレビから音声を受け取っていることになる。

画像: HDMI ARC端子はリアパネル左下段に搭載。スピーカー端子はバナナプラグ対応だ

HDMI ARC端子はリアパネル左下段に搭載。スピーカー端子はバナナプラグ対応だ

 そこでポイントになるのが、どんな映像信号を出力するかだ。4Kはもちろん2Kの映像信号でも高帯域伝送が必要になるため、音声信号に対するノイズの影響は見逃せない。そこで今回は映像のフレームレートを480pに下げ、さらに映像の中身にも配慮している。

 単純に考えると黒い映像がよさそうだが、伝送信号(Y/Cb/Cr)のビット配列で見ると黒色よりも濃い緑系(8ビットすべてに『0』が並ぶ)の方が安定しているのだという。そこでSU-GX70では濃い緑の映像を出力している。ちなみに接続したテレビでSU-GX70からの映像が表示される場合は、自動的に黒い画面に切り替えて、ユーザーが違和感を覚えないよう配慮されている。

 さらにテレビから戻された音声信号はHDMI伝送LSIを通さずに、デジタル信号を受け付けるDIR(デジタルオーディオ・インターフェイス・レシーバー)に入力することでジッターも低減しているそうだ。

 なおSU-GX70のHDMI ARC端子はリニアPCM信号のみの対応なので、組み合わせるテレビによっては出力フォーマットを設定する必要がある。またサンプリング周波数/ビットレートについてはテレビ側が対応しているスペックに設定されるそうで、現行テレビの場合ほとんどが48kHz/24ビットになるようだ。

画像: HDMI ARCで扱う映像信号の内容まで踏み込んだ音質改善策を盛り込んでいる

HDMI ARCで扱う映像信号の内容まで踏み込んだ音質改善策を盛り込んでいる

 その他の接続端子はデジタル入力×2(光、同軸)とアナログ入力×2(RCA)、フォノ入力(MM)、USB Type-A/B、LAN端子で、出力端子はアナログプリアウト(RCA)とヘッドホン出力(6.3mm)など。Bluetoothによる音楽再生やFM放送の試聴も可能という。

 アナログ入力は上位モデル「SU-R1000」をベースとして再設計された左右対称レイアウトのディスクリートで構成されている。フォノイコライザー回路もディスクリートで構成されており、MMカートリッジに特化した設計にすることで上位モデルに近いクォリティを目指している。

 対応デジタル信号(最大)については、同軸デジタルがPCM 192kHz/24ビット、光デジタルはPCM 96kHz/24ビット、USB Type-A/BとLAN端子からはPCM 384kHz/32ビットとDSD11.2MHzを受け付けてくれる。

 それらの音声を再生するパワーアンプ部は独自のフルデジタルアンプ「JENO Engine」を採用(出力は80W×2、4Ω)。パワーアンプの電源をプリアンプから独立して搭載する「Twin Power Supply Circuit System」が使われている。組み合わせるスピーカーに合わせて最適なアンプ駆動を実現する「LAPC」(Load Adaptive Phase Calibration)により、位相反転のないインパルス応答に優れたサウンドを再現できるとのことだ。

画像: ネットワークやHDMI ARCからのソースを再生しない場合はそれらの回路の電源をオフにできる

ネットワークやHDMI ARCからのソースを再生しない場合はそれらの回路の電源をオフにできる

 またネットワークやHDMI ARCを使わない場合は、それらの回路の電源をシャットアウトしてデバイスやアンテナからのノイズを排除することで音質改善を行う「Pure Amplification Mode」も準備している。これにより、電源の余裕も向上できるそうだ(ネットワーク回路とHDMI回路は別々にオン/オフ可能)。

 この他、設置環境を測定し、最適な音質に自動調整してくれる「Space Tune」機能も搭載済。SU-GX70はリビングでの使用も想定されているので、こういった環境適応化機能は喜ばれるだろう。

 本体サイズはW430×H98×D368mm、重さ約6.6kgというもの。高さを抑えることでテレビラック等にも収納しやすいよう配慮している。フロントパネルは7mm厚のアルミ・ヘアライン仕上げで落ち着いたイメージを演出、ユーザーが触ることも多いボリュウムノブも高い質感と快適な操作感のためにアルミ無垢材が奢られている。本体カラーはシルバーとブラック。

画像: テクニクスのプレーヤーと組み合わせたシステムで、ハイレゾからアナログレコード、ブルーレイなどの様々なコンテンツを試聴

テクニクスのプレーヤーと組み合わせたシステムで、ハイレゾからアナログレコード、ブルーレイなどの様々なコンテンツを試聴

 説明会会場にはSU-GX70を中心に、SACD/CDプレーヤー・ネットワークプレヤーの「SL-G700M2」、アナログレコードプレーヤー「SL-1200G」、スピーカー「SB-G90M2」を組み合わせたシステムが準備されていた。

 この環境でSU-GX70でDSD11.2MHzのクラシック音源(フロントのUSB Type-A端子に装着したメモリーから再生)や音楽CD、アナログレコードを聞かせてもらう。これらのソースに共通しているのが、音場のS/Nの高さだ。DSD11.2MHz音源では各楽器の細かい情報も綺麗に再現されるし、空間に広がる響き、反響感もしっかり聞き取れる。

 CDは音の輪郭が明瞭で、キレのいい印象になる。中域が充実したサウンドで、ギターの弦も力強く、低域の充実感も得られている。アナログレコードもとてもクリーンな音として再現され、内蔵フォノイコライザーもていねいに音作りされていることがうかがえる。

画像: ブックシェルフスピーカー「SB-C600」と組み合わせたシステムも展示

ブックシェルフスピーカー「SB-C600」と組み合わせたシステムも展示

 さらにBDレコーダー「DMR-ZR1」で再生し、65インチのビエラ経由でHDMI ARCから入力した音楽ブルーレイも確認させてもらった。イギリスの古城で演奏されるギターや男声ヴォーカルには独得の艶感があり、映像の美しさと相まってしばし作品世界に引き込まれる。

 SU-GX70は明後日から東京国際フォーラムで開催されるOTOTEN2023のテクニクスブース(ガラス棟G602)にも展示されるとのことなので、会場を訪れた方はぜひそのパフォーマンスを確認していただきたい。その他にも様々なセミナーも準備されている(関連リンク参照)。

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