ホームシアターの象徴と言えば、なんと言ってもプロジェクターとスクリーンによる大画面体験に尽きる。最近は薄型テレビの大画面化も進んでいるが、100インチ超の高画質を楽しみたいと思ったら、プロジェクター&スクリーンに勝る物はない。

 そんな画質にこだわる層に、今注目して欲しいプロジェクターといえば、ビクターのD-ILAデバイス搭載機だ。同社では1997年のD-ILAデバイス誕生以来、数々の名機を多く送り出してきている。特に2019年に登場した「DLA-V9R」では独自の「8K/e-shift」による8Kクォリティの高精細映像を実現、後継機の「DLA-V90R」も高い評価を集め、25周年モデル「DLA-V90RLTD(リミテッド)」はリリース直後に完売するほどの人気だった。

 今回はそんなD-ILAプロジェクターに魅せられた3人の男達のホームシアターを訪問し、それぞれがどんな点が気に入ってD-ILAプロジェクターを選んだのか、またどんな風に楽しんでいるのかを紹介する。(編集部・哲)

潮さんの “悪魔のささやき” に魅了され、気がついたら「DLA-V90RLTD」を導入していました。

画像: DLA-V90RLTD購入者にのみ進呈される、シリアル番号が刻印された記念プレートと共に

DLA-V90RLTD購入者にのみ進呈される、シリアル番号が刻印された記念プレートと共に

D-ILAプロジェクター DLA-V90RLTD ¥3,300,000(25台限定、販売終了)

 「D-ILA」デバイスは、1997年に誕生し、昨年25周年を迎えた。ビクターではそれを記念した特別仕様モデルとして「DLA-V90RLTD」を発表、国内25台限定で発売された。厳選したパーツを組み合わせることでネイティブコントラスト比150,000:1(DLA-V90Rは100,000:1)を実現、特別外装として記念モデルを象徴する専用ロゴとシリアルナンバーを刻印したシルバークローム仕上げのセンタープレートも採用されている。

「DLA-V90RLTD」の主なスペック
●表示デバイス:0.69型ネイティブ4K D-ILAデバイス×3(選別品)
●画素数:水平4096×垂直2160画素
●表示解像度:水平8192×垂直4320画素(8K/e-shiftX、4方向シフト)
●レンズ:口径100mmオールガラスレンズ、2倍電動ズーム・フォーカス
●レンズシフト:上下100%、左右43%(電動、16:9投写時)
●光源:レーザーダイオード
●明るさ:3,000ルーメン
●ネイティブコントラスト:150,000対1
●接続端子:HDMI入力2系統(48Gbps、HDCP2.3、CEC対応なし)、トリガー端子、LAN端子(制御用)、他
●ファンノイズ:24dB(低モード)
●消費電力:440W(エコモード時0.3W)
●寸法/質量:W500×H234×D528mm(脚部含む)/25.3kg

画像: DLA-V90RLTDのイメージグラフィック。D-ILAパネルやレンズ部などの光学系には厳選したパーツが使われているのが従来モデルとの一番の違い

DLA-V90RLTDのイメージグラフィック。D-ILAパネルやレンズ部などの光学系には厳選したパーツが使われているのが従来モデルとの一番の違い

 今回と次回の2回にわたり、ビクターのD-ILAプロジェクター、V9シリーズにはまってしまった男達の物語をお届けします。

 これは面白い企画ですね。ビクターは、長年家庭用プロジェクターとはどうあるべきかについて取り組み、数々の独自技術を開発してきました。そんな努力の積み重ねが今日の評価につながっているのは間違いない。

 そんな潮さんはご自宅で「DLA-V9R」を愛用されていますし、実は僕も先日自宅のプロジェクターを「DLA-V90R」に入れ替えました。そして潮さんともお付き合いの長い清水さんが、なんとD-ILAデバイス誕生25周年記念モデル「DLA-V90RLTD」を導入しました。

 V90RLTDは国内25台限定生産という貴重な製品です。それを手に入れたとは、凄い事ですよ。

 清水さんは、月刊HiViの「潮晴男のAVルーム・クリーニング大作戦」に応募してくれた熱心な読者で、その後も度々取材にお付き合いいただき、気がついたら足掛け28年お世話になっています。

 ホントに長いことお付き合いただいて、ありがたいです。

清水 こちらこそオーディオビジュアルで困った事があると、いつも潮さんにアドバイスをいただいて、助かっています。ホントにどれくらい背中を押されたことか(笑)。

 そこで本企画では、われわれの大画面生活に大きな影響を与えた潮さんにホームシアターを訪問してもらい、それぞれの環境でD-ILAプロジェクターの実力を最大限に引き出すアドバイスをいただきます。今日はその前編として、清水邸にお邪魔しました。

 清水さんのお家を初めて取材させてもらったのは1995年でした。当時は3管式プロジェクターと業務用モニターをお使いで、その調整方法を教えて欲しいという依頼でした。

清水 当時はレーザーディスクをソニーのBVMモニターで見ていましたが、少しでも綺麗な画像が欲しいという思いが強かったですね。

画像: 清水さんは、これまで登場してくれた雑誌をきちんと保存してくれている(左)。「こんなにお世話になったんだっけ〜」と改めて感動する潮さんでした

清水さんは、これまで登場してくれた雑誌をきちんと保存してくれている(左)。「こんなにお世話になったんだっけ〜」と改めて感動する潮さんでした

 それからしばらくして、今のご自宅を建てる際にこしらえた専用ホームシアターも取材させていただきました。2000年の事で、この時は3管式プロジェクターの三菱「LVP-2001」をお使いでした。

 LVP-2001は天吊したままになっているんだね(笑)。

清水 そうなんです。今となっては取り外すのがたいへんで、そのままになっています(笑)。

 そのLVP-2001の真下、AVラックの上段にV90RLTDが置かれていますが、固定画素型としては本機で3代目だそうですね。

清水 さすがに3管式では辛くなったので、4Kネイティブパネルを搭載した反射型プロジェクターを導入し、その後にビクター「DLA-X990R」に入れ替えました。X990Rは、e-shiftを使って4Kを再現しているということであまり期待していませんでした。しかしイベント会場で確認したら、すごく絵作りが上手だったので気に入ってしまいました。

 それが2018年頃とのことですから、V90RLTDは約5年振りのリニューアルということですね。

清水 X990Rの絵を気に入っていたので、このままでもいいやと思っていたんです。でもある時、潮さんがV90RやV80Rを紹介するイベントがあるということで、それを見に行きました。そしたら「8K/e-shiftX」の映像が凄かったんです。

 e-shiftは本当に素晴らしい技術です。僕もV9Rを導入した際の最大の要因が8K/e-shiftでした。

 実は、当初はレーザー光源を搭載した「DLA-Z1」を導入しようと思っていたんですが、本体サイズが大きくて入らなかった(笑)。で次のモデルを待っていたところV9Rが登場したんです。ランプ光源なのでどうしようかと思ったんだけど、8K/e-shiftの絵を見たらそんな思いも吹っ飛びました。

 個人的には、2Kパネルを使ったe-shiftでは解像度感に物足りない印象がありました。しかし4Kパネルを使った8K/e-shiftは元の情報量が違うので、8K変換したら凄い世界が再現されるんです。それを体感して、これならと思ってV9Rの導入を決めたわけです。

スクリーン上で8K相当の映像を描き出す「8K/e-shiftX」とは

画像1: “これが「DLA-V90Rリミテッド」の究極映像美だ! 国内25台限定モデルの大画面に、ただただ感動しました” ビクター、D-ILAプロジェクターに魅せられた男達(前)

 「e-shiftテクノロジー」は、ビクターが自社プロジェクターに搭載してきた高解像度化技術。投写時に画素を半分シフトすることで、スクリーン上での解像度を倍増させている。DLA-V90RLTDやV90R、V80Rに搭載されている8K/e-shiftXでは、画素をそれまでの2方向から、上下左右の4方向にシフトさせることで、より精密な8K映像を再現できるように進化を果たした。

清水 V90Rのイベントで見せてもらった8K/e-shiftXによる自然風景なんて、本当にその場にいるようでした。映画ソフトでも、これは映画館を遥かに凌駕しているじゃん、と感動しました。

 現在家庭で楽しめる高画質映像ソースとしては、パッケージも放送も4Kが中心なわけで、プロジェクターも4K解像度で充分じゃないの、と思いがちです。

 しかし8Kにアップコンバートする事によるメリットとして、8K/e-shiftXでは、8Kの全画素を表示でき、より精細感が向上して見通しが良くなるだけでなく、最大240Hzの時間分割方式のe-shift動作により、ランダムノイズが分散して細かくなるように見えます。特に大画面になればなるほど、その恩恵を得られます。

 さて、清水さんは8K/e-shiftXの映像をイベントで見て感動されたとのことでしたが、そこからV90RLTDを導入するまでのいきさつを教えてください。

清水 イベントでV90RやV80Rの絵を見て衝撃を受けたのが2021年の事で、そこから8K導入計画が始まりました。とはいえ当初は予算的にV80Rかなぁと思っていたんです。

 そうこうしているうちにV90RLTDが登場して、どんなものなのか気になって仕方がなかった。そこで潮さんに相談したところ、「V90RLTDは別物だよ。悩んでいるなら決断するしかない」って言われて、気がついたらオーダーしていました。本当に潮さんの “悪魔のささやき” は怖いですね(笑)。

 V80Rも素晴らしい製品で、ビクターの現行ラインナップでもコストパフォーマンスは一番高いと思います。V90Rとのハードウェア面での違いは投写レンズくらいですし、どちらを選ぶかはユーザーのこだわりしかない。でも清水さんや哲のように長年大画面に親しんできたユーザーだったら、そこを外してはいけないと思ったんだよね。

 確かに投写レンズはプロジェクターの肝となるアナログ部品で、大画面になるほど違いが出てきますよね。

清水 実際の映像でも、コントラスト感などに差があるから困るんです。

 さらにV90RLTDは特別仕様モデルとして、D-ILAパネルや光学系に選別パーツを採用し、150,000:1のネイティブコントラストを実現しました。数値的にもV90Rから5割アップしていますが、実際の映像になるとここまで違うのかと驚くほどです。

画像: シアタールームにはV90RLTDと並んで、3管式プロジェクター「LVP-2001」の姿も。V90RLTDは高さ1.5mほどのラックに設置されており、水平投写に近い状態を確保している

シアタールームにはV90RLTDと並んで、3管式プロジェクター「LVP-2001」の姿も。V90RLTDは高さ1.5mほどのラックに設置されており、水平投写に近い状態を確保している

 ではそろそろ清水邸のV90RLTDの映像を見せていただきましょう。スクリーンはキクチ「MALIBU」で、アスペクト比4:3の100インチです。

 ここは気になるね〜。スクリーンはLVP-2001導入時から変えていないとのことですが、V90RLTDと組み合わせるには圧倒的に小さい。

清水 実はX990Rの頃から16:9映像の左右が少しはみ出した状態で投写しているんです(苦笑)。今回も、全予算をV90RLTDにつぎ込んでしまったので、スクリーンは次の宿題にしてください。

 投写している画面サイズは16:9アスペクト換算で100インチ前後です。V90RLTD側は、「スクリーン補正」をオンにして、「スクリーンゲイン」も設定してあります。

 V90RLTDは水平投写に近い設置ですね。レンズの美味しいところを使うという意味でもこれは理想的だ。しかも「画素調整」をしなくてもRGBの画素ピッチが綺麗に揃っています。さすがの精度です。

 まずは清水さんが最近よく見ているというUHDブルーレイ、ビコム『8K空撮夜景 SKYWALK』のチャプター13「有楽町・丸の内・東京駅」を再生しました。プレーヤーはパナソニック「DP-UB9000」です。

 『8K空撮夜景〜』は僕も愛用しているディスクですが、V90RLTDの映像には度肝を抜かれました。画面全体が立体的で、なんと言っても絵が深い! 有楽町の空撮シーンは空気が澄んできて、さらに遠くまで見渡せている。色数もうちのV9Rで見るよりも多いかもしれない。

 色の濃い部分から薄い部分まできちんと描き分けつつ、グラデーション、諧調再現もきちんとできています。また、立体感も凄かった。ビル群を見下ろすシーンで、このビルは本当に高いなぁと怖さを感じた。

清水 同じシーンで、ビル越しに地上を走っている車の一台一台まで見分けられるんです。X990Rではさすがにこんなところまではわかりませんでした。この違いが立体感再現につながっているんじゃないでしょうか。

画像: 「ホームシアター」2000年冬号でも清水さんの新築シアターの様子を紹介させていただいた(右)。「この頃はフィギアもなく、床が見えていたんですけどね〜」と懐かしむ清水さん

「ホームシアター」2000年冬号でも清水さんの新築シアターの様子を紹介させていただいた(右)。「この頃はフィギアもなく、床が見えていたんですけどね〜」と懐かしむ清水さん

 この作品は8K撮影なので、4Kに変換しても情報が残っているんでしょう。それが8K/e-shiftXで復元されている、そんな印象です。限定モデルというだけあって、絵に “特別感” がありますね。清水さんも相当の覚悟でV90RLTDを導入したわけだから、“特別” じゃないと困るでしょうけど(笑)。

清水 そういってもらえると嬉しいですね。潮さんのおかげで、特別感を味わわせていただいています(笑)。

 なお、『8K空撮夜景〜』は「HDR10+」で収録されています。今日は映像タイプ、画質モードとも「HDR10+」とし、「LDパワー」のみ「低」(初期値は『高』)に変更しました。

清水 V90RLTDを導入したら、とにかく画面が明るくなって、ほとんどのソースで「LDパワー」を「低」にしています。このディスクもその点を変更しただけで、他は調整しなくても満足できる映像が楽しめました。

 確かにこの画質モードもよくできています。特に細かい映像調整をしなくても問題はありませんでした。

 続いて潮さんにお持ちいただいたUHDブルーレイから映画作品『エルヴィス』『NOPE/ノープ』『マイ・フェア・レディ』を再生しました。これらは「HDR10」収録なので、画質モードは「Frame Adapt HDR1」を選んでいます。

 V90RLTDは、輝度だけじゃなく、色の諧調再現も本当に凄い。『エルヴィス』ではチャプター10のステージシーンを見ましたが、黄色や赤といった派手な色使いのステージ衣装のテクスチャーが見事に再現できていました。

清水 『マイ・フェア・レディ』も素晴らしかったです。チャプター21〜22のヘプバーンの肌色も美しいし、ドレスの白がクリアーでとてもクリーンな映像でした。

画像: V90RLTDは起動時に25周年記念モデルのオープニングロゴが表示される。文字のキレは限定モデルならでは

V90RLTDは起動時に25周年記念モデルのオープニングロゴが表示される。文字のキレは限定モデルならでは

 「LDパワー」は「低」のままですが、明るさも充分でしたね。このUHDブルーレイは8Kマスターを使っているのですが、その情報量がしっかり再現できていると感じました。

 よく言われることですが、映画の35mmフィルムには4K相当、70mmなら8K相当の情報を持っているそうです。今日のV90RLTDの映像は、まさに70mmフィルムらしい絵だなと感じました。おそらく当時の映画館でも、誰もここまでの映像は見ていないでしょうね。それくらいリッチな表現力です。これを自分のホームシアターで楽しめるなんて、まさに “贅沢の極み”。

清水 『マイ・フェア・レディ』のUHDブルーレイは、イベントでもV90RやV80Rで見せてもらったのですが、まさか自分の家でこんなに高画質で再現できるとは思ってもいませんでした。この作品はNHK BS8Kで放送されていて、どれくらいの画質なのか気になっていたんですが、この絵が見られるなら気にしなくても良さそうですね。

 8K/e-shiftXで見るUHDブルーレイの映像は、8K放送にも負けていませんよ(笑)。しかも音はロスレスだから、こっちの方が作品に没入できるかもしれない。

 ヒギンズ教授の家の内装の本物感が素晴らしかったですね。時代を経た家具の光沢や調度品の素材の再現など感動的でした。これだけの色の深み、黒の再現ができるのは、D-ILAの凄さですね。

 それもあるし、やはり “LIMITED” ならではのパフォーマンスとも言えるでしょうね。S/Nが素晴らしく、ノイズがほとんど目につかないので、画面全体が本当にクリーンです。

清水 『NOPE/ノープ』で驚いたのが、チャプター5の暗い中で背後の奥行情報が綺麗に再現できていたことです。ネイティブコントラストが高いとここまでの表現ができるんだと感動しました。ロケのシーンということもあるかもしれませんが、自然な立体感がとても良かったですね。あと、暗い中での黒人の肌の再現なども凄い。

 あれは本当にびっくりした。黒人の褐色の肌と言っても、男性と女性で若干色味が違うんだけど、その違いがしっかり表現できていました。また、闇の中で目を見開くカットでも、白目が強調されてギョロっと睨みつけるような力強さが出てきました。同じ画面の中に、車のヘッドライトの明るい部分と、細かな星の瞬きが同時に再現できていたのも凄い。

UHDブルーレイからLDまですべてを高品質に楽しみたい。清水さんが想いを注ぐシアタールーム

画像: 清水邸のシアタールームは広さ8畳の専用ルームで、100インチ映像と5.1chスピーカーという組み合わせ。室内には清水さんを慕う教え子たちが作ってくれたフィギアが所狭しと並んでいる

清水邸のシアタールームは広さ8畳の専用ルームで、100インチ映像と5.1chスピーカーという組み合わせ。室内には清水さんを慕う教え子たちが作ってくれたフィギアが所狭しと並んでいる

画像2: “これが「DLA-V90Rリミテッド」の究極映像美だ! 国内25台限定モデルの大画面に、ただただ感動しました” ビクター、D-ILAプロジェクターに魅せられた男達(前)

<清水邸の主なAVシステム>
●プロジェクター:ビクター DLA-V90RLTD
●スクリーン:キクチ MALIBU(100インチ/4:3)
●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニック DP-UB9000
●LDプレーヤー:パイオニア HLD-X0
●AVアンプ:ヤマハ CX-A5200
●パワーアンプ:パイオニア M-AX10×2
●スピーカーシステム:ビクター SX-9000(フロント)、SX-L5(サラウンド)、B&W Nautilus HTM2(センター)、

 さて、4K放送も今では重要なホームシアターのソースです。そこでBS4Kを録画した『4KPR 新しい世界へ〜上原ひろみVer.』も再生していただきました。この番組はHLG収録ですので、V90RLTDの映像タイプ・画質モードとも「HLG」が選ばれています。

 デモコンテンツということもありますが、とにかく色が鮮やかで、キリッとして目が覚めるような映像でした。HLGはうっかりすると白ピークが強調されたような印象になることもあるんですが、今日はそんなこともありません。高精細な写真が動いているようです。

清水 NHK BS4Kの映画はSDR収録が多いので、注意してHLGの絵を見たことがありませんでした。でも、この番組は凄いですね。絶対録画します。

 細かい情報もしっかり出てきていた。収録は8Kカメラのはずですから、その情報がきちんと復元できているということでしょうね。

 最後に、清水さんの思い出の作品を再生してもらいました。

清水 95年に初めて潮さんにおいでいただいた時に再生したLD(レーザーディスク)で、軽井沢の風景を収めた音楽ビデオです。28年越しにもう一度同じディスクを見てみたらどう感じるかなと思って、準備しました。

 清水邸ではLDプレーヤーのパイオニア「HLD-X0」が現役です。そのビデオ出力をヤマハのAVプリアンプ「CX-A5200」に入力してHDMIに変換し、さらにV90RLTDで8Kにアップコンバートしています。V90RLTDの映像タイプは「SDR」、画質モードは「ナチュラル」です。

 いや〜これも面白かったなぁ。まさかLDがあんなにすっきりとした映像で再生できるとは思わなかった。斜め線はさすがにがたつくけれど、絵に爽やかさがある。うちにもLDが大量に残っているから、見直したくなりました。

DLA-V90RLTD導入の背中を押した潮さんに聞く、清水邸の映像はいかがでしたか?

 清水邸での視聴では、改めて「DLA-V90RLTD」の懐の深さに感心してしまった。V90RとV90RLTDでは、D-ILAパネルが描き出す映像が相当に違っていうことを改めて認識した。

 D-ILAパネルにはまだそれだけの能力が潜んでいるということで、その実力を十全に引き出し、製品づくりに活かしたビクターの技術陣にも敬意を表したい。もっともV90RLTDでは、パネルの選別工程が一筋縄ではなかったようで、台数を制限するほかなかったようだ。国内での発売は25台。清水さん同様にこのモデルを手にしたユーザーは本当に幸せだと思う。

画像: 潮さんのニコタマシアターでは「DLA-V9R」が活躍中。こちらは光源は高圧水銀ランプ、e-shiftテクノロジーは2方向タイプ(8K/e-shift)という仕様だが、ネイティブコントラストはV90Rと同じ100,000対1で、100mmオールガラスレンズも同一部品が使われている

潮さんのニコタマシアターでは「DLA-V9R」が活躍中。こちらは光源は高圧水銀ランプ、e-shiftテクノロジーは2方向タイプ(8K/e-shift)という仕様だが、ネイティブコントラストはV90Rと同じ100,000対1で、100mmオールガラスレンズも同一部品が使われている

 しかしながら、プロジェクターのパフォーマンスが上がると使い手にも様々な要求が突き付けられる。そのひとつが迷光対策だ。白っぽい壁だとどうしても反射光、迷光が発生するため、微妙な暗部のニュアンスが失われる。こればかりは「明るさ」や「コントラスト」などの画質調整を施しても収まらない。

 そうした事象を含め、清水さんには室内環境を整えるようにアドバイスした。と言っても全暗にするのではなく(実現可能な方はトライしてもいいが)、チャコールグレーか茶系の塗料、例えば柿渋やオイルスティン系の塗料を壁面に塗って違和感のない仕上がりにすればいいだろう。

画像: スクリーンは115インチ/シネスコサイズのスチュワート「SNOMATTE」(ゲイン1.0)。完璧な遮光、調光が施されていることもあり、きわめてハイコントラストで、色も鮮やか、しかも解像度感の高い映像が再現されている。こういったプロジェクターの実力を引き出す使いこなしも重要です

スクリーンは115インチ/シネスコサイズのスチュワート「SNOMATTE」(ゲイン1.0)。完璧な遮光、調光が施されていることもあり、きわめてハイコントラストで、色も鮮やか、しかも解像度感の高い映像が再現されている。こういったプロジェクターの実力を引き出す使いこなしも重要です

 素晴らしいツールが手に入ったら、それを使いこなすべきだ。そうしなければいくら高みを目指しても、その先にある “未知なる世界” には到達できない。ハイエンド製品を手にするということは、苦楽を共にする覚悟も求められるのである。

 それにしても、こんな絵に絵が違うのなら、ビクターにはぜひ「DLA-V100R」としてラインナップして欲しいと思った(受注生産でもいいのでぜひ!)。 (潮 晴男)

清水 V90RLTDでLDを見たのは実は今日が初めてだったんですが、予想以上に満足できるクォリティだったと思います。それに音もいいですね。やはりリニアPCM収録だからでしょうか。

 非圧縮デジタル収録だし、プレーヤーのX0も今では考えられないくらい贅沢な作りですから、音質的には有利ですね。

清水 こうなると、LDだけでなく、お気に入りの作品がV90RLTDでどんな風に再現されるのか、改めて見直したくなりますね。

 そうだね、見直したくなるし、誰かに見せたくなる映像かもしれません。映画好き同士でこの絵を見ていたら、一晩中でも語り合えます。

 UHDブルーレイや4K放送だけでなく、LDのようなレガシーコンテンツまで、どんなソースも満足いく画質で再現してくれるのが、V90RLTD、ひいてはD-ILAプロジェクターの素晴らしさですね。

清水 実は、これまでは音に比べて映像が少し物足りなく感じることもあったんです。しかしV90RLTDになって、映像と音のバランスが取れてきたというか、違和感がなくなってきた気がしています。

 ホームシアターでの映像と音のバランスは本当に重要で、どちらかが良くなると、もう一方もグレードアップしたいと感じるものです。清水邸の場合は音が先行していたのかもしれませんね。

清水 そうかもしれません。でもV90RLTDの映像はまだまだ先がありそうだし、そうなったら次は音の弱点が気になりそうで怖い気もします。

 確かに、V90RLTDはそんな気持ちにさせてくれる製品だね。もっともっと高みを目指したくなるというか。

画像: V90RLTDが再現する映像に、あの作品も見ていたい、これも見たいと映画&音楽談義が止まらない3人でした

V90RLTDが再現する映像に、あの作品も見ていたい、これも見たいと映画&音楽談義が止まらない3人でした

 さてここまでV90RLTDの映像を楽しませていただきましたが、清水さんご自身は本機を導入して一番変わった点はどこだとお感じでますか?

清水 何を見ても感動できることです。今まで凄く綺麗だと思っていたソフトが、V90RLTDで再生するともっと綺麗になる。こんなところまで写っていたんだっていう驚きがありました。これまで気がつかなかったことを、いっぱい教えてくれて、さらに感動できるんです。

 先日も『レヴェナント:蘇えりし者』を見たのですが、あまりのリアルな映像に自分も雪山に行ったようで、手足が冷たくなった気がしました(笑)。

 まさに没入型ホームシアターの理想ですね。潮さんは、清水邸のV90RLTDの映像をご覧になっていかがでしたか?

 正直、参りました。V90RLTDの凄さは充分認識していたつもりだったけど、実際に清水さんのホームシアターの絵を見たら予想以上。あのコントラスト、映像の落ち着きは、我が家のV9Rでも再現するのは難しい。オーディオビジュアル評論家として、悔しいです!(笑)

清水 過分なお褒めのお言葉、ありがとうございます。本当に潮さんに背中を押してもらわなかったら、V90RLTDは導入していなかったと思います。そしたらきっと後悔していたでしょうね。

 今後はV90RLTDの実力を引き出す環境作りがテーマかな。先ほど話に出ていたスクリーンの大型化もそうだし、室内の反射光対策も徹底したいですね。

 特にスクリーン両脇の白壁と天吊りしてあるLVP-2001が光を反射しているので、これを抑えるだけで黒がさらに締まってくるでしょう。壁をペンキで塗ってもいいし、光を反射しない布を下げるだけでも効果はありますから、まずはここから試してください。スクリーン周りのフィギアも整理しようよ。

清水 ……このフィギアは教え子たちからのプレゼントで、一生懸命作ってくれたものなので、そういうわけにはいかないんです(編集部注:清水さんは高校の先生をされていました)。でもアクリルケースが反射しないようにカバーをかけるなどの対策を考えたいと思います。

 せっかくこれだけのものを手に入れたんだから、今後も究極の絵と音を目指すしかない。V90RLTDほどの製品ですから、小さな環境の変化にもきちんと反応してくれるのは間違いありません。ぜひ末長く使いこなしてください。

清水 ありがとうございます。頑張りますので、ぜひ今後ともアドバイスをお願いいたします。

 今回は清水邸でV90RLTDの究極の映像を体験させていただきました。次回はリビングシアターでD-ILAプロジェクターをどう使いこなしたらいいのかについて、我が家で検証してみたいと思います。お楽しみに。

(後編に続く)

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