アルミニウム・インゴットから押し出し成形されたエレガントな外観が特徴的なスイスのスピーカーブランド、ピエガ。エンクロージャーにアルミ素材を使うのは、デザインの自由度を拡げ、同時にトランデューサーとしての性能を追求するため。

 本体を真上から見ると、背中側がキレイなC型形状に絞られているのが分かるが、これは見た目の美しさもあるが、最大の狙いは内部の共鳴と定在波を抑えること。さらにアルミ製エンクロージャーには薄さと高剛性が両立させやすいという強みがある。

 つまりスマートな外観に仕上げつつ、音の歪みを抑え、なおかつ筐体内部の容積が充分に確保できるということ。見た目以上に、スケール感にに富んだ雄大なサウンドを奏でるスピーカーシステムが設計できるというわけだ。

 この特徴的なエンクロージャーの内部には、補強リブが配置され、全体の響きを制御するアルミ製のブレーシングを装備している(TIM技術/Tension Improvement Module)。これは筐体壁に生じる微細な振動を抑え、クリアーで、演出のない、ありのままのサウンドを実現するのが狙いだ。

 同ブランドを語るうえで、もうひとつ忘れてはならないのが、「PIEGA」というブランド名の由来となるリボン型トゥイーターだ。リボン型ドライバー自体は、レスポンスに優れ、超高域再生を得意としているが、ピエガでは、450Hz~50kHzというワイドレンジ再生が可能な同軸型に配置した2ウェイ構造のリボンユニットを実用化している(数値は新Coaxシリーズの場合)。

 トゥイーターの振動膜をミッドレンジの振動膜に囲んでいる構造で、2つの振動膜自体を同じ平面状に配置させることで、事実上の点音源ユニットとして動作させて、均一に音を放射することが可能。ユニット軸上正面を外れたとしても、各々の周波数帯域の再生に変化は生じにくく、本来あるべきサウンドを広範囲にリスナーに届けられるのが強みだ。

 

SPEAKER SYSTEM

PIEGA
Coax 411
¥1,650,000(ペア)税込 ※スタンド別 写真左

●型式:3ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:リボン型トゥイーター/ミッドレンジ・同軸、160mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:450Hz、3.5kHz
●出力音圧レベル:90dB/W/m 
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W210×H450×D310mm/25kg
●カラリング:シルバー(¥1,540,000ペア税込)、ブラック/ホワイト(¥1,650,000ペア税込・写真)
●オプション:専用スタンド(Stand 300、¥286,000ペア税込)

Coax 611
¥3,124,000(ペア)税込 ※写真右

●型式:3ウェイ3スピーカー・パッシブラジエーター型
●使用ユニット:リボン型トゥイーター/ミッドレンジ・同軸、160mmコーン型ウーファー×2、160mmコーン型パッシブラジエーター×3
●クロスオーバー周波数:450Hz、3.5kHz
●出力音圧レベル:90dB/W/m 
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W210×H1,170×D310mm/45kg
●カラリング:シルバー(¥2,915,000ペア税込ボトムプレートなし/¥3,014,000ペア税込ボトムプレートあり)、ブラック/ホワイト(¥3,025,000ペア税込ボトムプレートなし/¥3,124,000ペア税込ボトムプレートあり・写真)

●問合せ先:フューレンコーディネートTEL. 0120-004884

 

 

筐体構造と同軸ユニットが進化。大きく改良された新Coaxシリーズ

 新世代のCoax Gen2(Generation Second)シリーズとなるCoax 811、同611、同411では、「アルミニウム筐体」と「同軸型リボンドライバー」という、2つの技術に注目すべき新機軸を投入している。

 まず一定の張力でエンクロージャーの共振を抑えるTIM技術だが、従来、本体内部から外側へ圧力をかけることで共振を抑えていたが、新Coaxシリーズが採用している「TIM2」では内部へ引っ張る機構も追加され、よりきめ細かな共振制御が可能になった。

 本体内で「押す」と「引く」という相反する力が与えられる特殊な機構で、それぞれのテンションの最適化が可能。Coax 811が4枚、Coax 611では5枚、ユニットの境目に設置して、それぞれの干渉も抑えているという。

 「同軸リボン型ユニット」は、振幅の大きいミッドレンジ部の振動膜背面に慎重に吟味されたダンプ材を追加、持ち前の応答特性の速さを活かしつつ、より正確な駆動を実現している。さらにリボンユニットを支えるフレーム部もより厚いプレートに変わり、そこへ棒状のネオジム磁石9本を、程よい制振特性を持つ接着剤を用いて固定している。

 その結果、フロントプレートのダンピングが改善され、微小レベルの振動が激減。その副産物としてユニット中心部にも磁石を配置できるようになり、高域部トゥイーターのプッシュプル駆動が可能になったという。なおこの新しい同軸ドライバーの特性に合わせて、アルミニウム振動板のUHQDドライバー(ウーファーユニット)もチタン製ボイスコイル、サスペンションなどのファインチューニングが施されている。

「Coax GEN2 Series」と名付けられたピエガの新しいハイグレードラインの最小モデルとなるCoax 411。最小とはいっても、高さ45㎝、質量が1台で25㎏となる、堂々としたスピーカーシステムであり、ピエガらしい上質なアルミニウムエンクロージャーに、最新の同軸型リボンドライバーと、160㎜口径のUHQDウーファーを搭載。ウーファーはアルミニウム振動板を、チタン製ボイスコイルで駆動する強力なユニットとなる。UHQDとは、Utra High Quality Driverの意味だ

フィニッシュは、シルバーとブラック、ホワイトの3種類。アルミニウム素材をポリッシュ磨きによる美しい仕上げもポイントだ

スピーカーターミナルは、バイワイヤリング接続にも対応したドイツWBT社のハイグレードタイプとなる。ターミナル部分はエンクロージャーが削り込まれる加工が施されており、アルミニウム筐体の分厚さがわかる

 

 

生々しく豊かなニュアンス再現に驚く。ムービーサウンドも見事なCoax 411

 今回、試聴したのはブックシェルフのCoax 411と、フロア設置のトールボーイCoax 611という2モデルだ。いずれも450Hz~50kHzの再生を受け持つ「C112+」同軸ドライバーと16㎝UHQDウーファーの組合せで、Coax 611はダブルウーファー+パッシブラジエーター3基という構成となる。

 まず可愛らしいデザインが特徴的なCoax 411で、ヴォーカル、ピアノなど、普段から聴き慣れた楽曲を選んで聴いてみたが、品位の高さを感じさせる響きの緻密さ、粒子のきめの細かさが特徴的だ。

 ストレスなく、フワッと浮かび上がる歌声は、口の動き、表情までもが感じ取れるほどの生々しさで、そのニュアンスの豊かさにゾクッとするほど。雄大な空間の描写といい、雑味のない響き、余韻といい、ここまでの表現力は他のスピーカーではなかなか体験できない。

 UHDブルーレイ『トップガン マーヴェリック』を2chで再生。ならず者国家が建設中のウラン濃縮プラントを破壊し、敵機の追撃をなんとか退け、マーヴェリックとルースターの2人が無事母艦に帰還するチャプター14、15を中心に確認したが、セリフをしっかりと定位させつつ、奥行方向への空間描写が実に意欲的だ。体全体を揺さぶり、浸透するような爆発音、飛行音の再現はさすがに難しいが、低域から中、高域からにかけてのグラデーションの描き分けが見事。その緻密さ、なめらかさが空間の臨場感を盛り上げる。

 そしてエンディング。マーヴェリックはP-51マスタングにペニーを乗せ、夕日に向かって飛び立って行くが、そこに流れるレディー・ガガの「Hold My Hand」がまたいい。大音量で再生したが、声と演奏がともに刺激的にはならず、伸びやかに響く。背後に響くエンジン音の吹き上がりも勢いがあり、スケール感に富んだサウンドを描き上げだ。ストーリーを刻々と刻み、盛り上げるムービーサウンドは聴き応え十分。特にレディー・ガガのおおらかな歌声には大いに感動した。

画像5: 余韻、気配までも見事に描写する。新型同軸リボン搭載の高品位機誕生 PIEGA「Coax 411」「Coax 611」

Coax 611とCoax 411に共通して搭載されている「C112+」型同軸リボンドライバー。縦型スリットから銀色のリボン振動板が見えるが、中央の2ヵ所のみ正方の折り目になっているのがわかるだろうか。そこが3.5kHz以上の高域再生を受け持つトゥイーター部。そこがプッシュプル動作とした点が大きな進化点。周辺のミッドレンジ部は裏面にダンプ材を加えて、より正確な振幅特性を実現したという。この同軸ユニット全体で、450Hz〜50kHzという広大な帯域を受け持つ

 

 

余裕のある低域をベースに緻密な描写力が魅力のCoax 611

 続いてパッシブラジエーターを備えたトールボーイタイプのCoax 611。基本的には、Coax 411と同じ音源を再生したが、声はニュアンスに富み、定位の明確さなど、音のキャラクターがよく似ている。ギター、ベース、ピアノと、各楽器の響きの色合いまで感じさせる高い解像力で、音の芯を明確に描き出す。Coax 411と比べると大型機になるわけで、そのぶん低域表現に余裕があるのは当然として、高さ方向、奥行方向に拡がる空間の描写力に目を見張るものがあった。

 反田恭平のデビュー作に収められた「ラ・カンパネラ」は、ニューヨーク・スタインウェイCD75の独特な響きと、その余韻がホールにフワッと拡がり、染み込むように消えていく感じが実に生々しい。ペダルの踏み込み音とリリース音が低く響き、その空気の動きまで感じさせるほど。ダブルウーファーとパッシブラジエーター3基のコンビネーションは絶妙だ。

 この良質な低音を目の当たりにすると、おのずとムービーサウンドへの期待は高まる。ここでも『トップガン マーヴェリック』のチャプター14、15を中心に再生したが、思い通り、いやそれを大きく越えるパフォーマンスを演じてみせた。

 まずチャプター14、飛行中のF-14機内から始まるが、まずこの時のマーヴェリックとルースターの会話の後ろに拡がる、風切り音の鋭さとエンジン音の重さ、激しさにドキっとさせられた。地鳴りを思わせる厚みのある響きが、聴き手を覆い包むように拡がり、その場の臨場感が一気に高まる。

 第5世代機である敵機に挑むのか、逃げるのか……。2人のやり取りが明瞭で、その話しぶりからそれぞれの気持ち、感情まで感じ取れる。そして敵機への攻撃に打って出る瞬間、エンジン音が一気に吹き上がり、戦闘モードに入るが、この時のレスポンスの良さは格別。やはり強化されたスピーカーユニット、エンクロージャーは伊達じゃない。

 ここで気がついたのは、左右に配置した2本のスピーカーの中心位置の延長線上から外した場所で移動して聴いても、声と効果音のどちらも聴こえ方に大きな変化がなく、自然な質感を保ったまま楽しめたことだ。2時間近く続く映画鑑賞では、頭の位置を動かしたり、姿勢を変えたり、場合によっては視聴位置を移動することもあると思うが、それでも安定した音質が得られる新型同軸ユニットのメリットは極めて大きい。

 そしてエンディング。レディー・ガガの艶っぽい歌声といい、P-51マスタングの軽やかなレシプロエンジンの排気音といい、見通しのいい音場が拡がり、その空気感が清々しい。空間の余韻、気配までも克明に描き出され、目を閉じても各場面の状況が浮かび上がってくるほど。この描写力は見事だ。

Coax 611。同軸ユニットの下に配置されている5つのコーン型ドライバーは、上2つが磁気回路を備えたウーファーユニット。その下に見える3基のユニットは、パッシブラジエーターとなり、磁気回路が備わらない。カラリングは、シルバーとブラック/ホワイトの3種で、それぞれボトムプレートのありなしが選べる。205ページ掲載の写真の個体はプレートを装着している仕様だ

 

[視聴機器]
●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニックDP-UB9000(Japan Limited)
●プロジェクター:JVC DLA-V9R
●スクリーン:キクチ グレースマット100(120インチ/16:9)
●SACD/CDプレーヤー:デノンDCD-SX1 LIMITED
●プリメインアンプ:デノンPMA-SX1 LIMITED

[視聴ソフト]
●SACD:『リスト/反田恭平』
●CD:『Famous Blue Raincoat/Jennifer Warns』
●UHDブルーレイ:『トップガン マーヴェリック』

 

結論

素性のよいハイファイサウンド
音楽はもちろん映画再生も楽しい

緻密な音でリアルな空間を作り出すCoax 411と、場面、場面の情景をスケール豊かに描き出すCoax 611。音離れの良さが際立ち、空間表現力をしっかりと押し上げた素姓のよいハイファイサウンドで、映画ががぜん楽しくなる。次はぜひサラウンド再生にもトライしてみたい。

 

 

本記事の掲載は『HiVi 2023年冬号』

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