ヤマハから、平面磁界型ドライバーを搭載したヘッドホン「YH-5000SE」が発表された。価格は¥495,000(税込)で、12月下旬の発売を予定している(12月9日から予約受付を開始する予定)。

 YH-5000SEは、先に開催された「秋のヘッドフォン祭2022」で参考出品されていたモデルだ。ヤマハでは、1976年にオルソダイナミック振動板と名付けた自社開発の平面磁界型ドライバーを搭載したヘッドホン「HP-1」を発売していた。今回のYH-5000SEは、その技術をベースに、ヘッドホンでの音楽体験を愛する人に向けた製品として仕上げられている。

 そのためには、長時間音楽に没入できるヘッドホンが求められる。この点についてヤマハでは、「TRUE SOUND」「極上の装着感」「ビルドクォリティ」の3点でこだわりを詰め込んだ。

画像: 付属のスタンドに「YH-5000SE」をセットした状態

付属のスタンドに「YH-5000SE」をセットした状態

 TRUE SOUNDは楽器と音響機器を手がけるブランドとしてヤマハが目指しているテーマで、YH-5000SEでは高応答性としなやかな音調を実現するために平面磁界型(オルソダイナミック)ドライバーを搭載した。薄膜フィルムに金属コイルパターニングを施した振動板を平面駆動させるヤマハ独自のドライバー技術を、最新のテクノロジーを導入して再構築しており、クリアーな高域と歪みの少ないサウンドを再現できるという。

 ただし、平面磁界型ドライバーは構造的に複雑で、設計も困難という。今回YH-5000SEのドライバーについては、HP-1のそれを参考に、トライを繰り返して設計を追い込んでいった。例えばHP-1のドライバーはまったりとした柔らかい音調だったが、YH-5000SEではその魅力を残しつつ、耳馴染みがよく、かつ応答性の高い再現を目指している。

 開発には3〜4年の時間がかかったとかで、ドライバーの金型から試作を繰り返し、製造工程も検証することで、期待通りの性能を備えた振動板を実現している。金型は10数回、振動板は1000枚以上試作を繰り返したとのことだ。なおオルソダイナミックドライバーは生産が難しいことを踏まえ、ヤマハ掛川工場で生産、製品組み立てまで行うそうだ。熟練の工員のみが作業を担当し、高い品質を実現している。

画像: 本体ハウジングは材料にマグネシウムを採用することで、本体重量を320gに抑えている(左)。右は平面磁界型ドライバーの振動板

本体ハウジングは材料にマグネシウムを採用することで、本体重量を320gに抑えている(左)。右は平面磁界型ドライバーの振動板

 そのオルソダイナミックドライバーは口径50mmで、フィルム両面に上記の通り独自パターンでボイスコイルをエッティング(正面処理)し、さらに微細コルゲーション(波状の凹凸)を加えて仕上げている。この軽量な振動板がもたらす優れた応答性能により、音楽の微細なニュアンスや空気感まで余すことなく再現できるという。

 その振動板は、微細孔エアダンパーと呼ばれる素材に挟まれてエンクロージャに取り付けられる。平面磁界型ドライバーは小さいギャップの中で駆動するので、振幅制御のためのダンピングが必要で、通常はフェルトや不織布が使われることが多い。YH-5000SEでは中低域のロスが少ない点に着目してこの素材を採用している。

 また密度感と開放感を両立するために、YH-5000SEはオープン型エンクロージャーを採用している。ハウジングは耳をすっぽり覆うサイズで、マグネシウムを使うことにより、軽さと頑丈さを獲得した。

画像: 写真の銀色の部分が圧延平畳織ステンレスフィルター。厳格な通気性の管理の下に製造されており、音の密度感と開放感の実現を可能にしている

写真の銀色の部分が圧延平畳織ステンレスフィルター。厳格な通気性の管理の下に製造されており、音の密度感と開放感の実現を可能にしている

 ハウジングの隙間から見える部分(内側のフレーム)には、日本製の圧延平畳織フィルターが取り付けられた。このフィルターはステンレスの糸を織り込んだ素材を、さらに圧力をかけて仕上げたもの。その際に、狙った通気性、音のバランスを実現するためにプレスの強さも細かく調整しているとのことだ。一般的な紙や樹脂系のフィルターに比べて剛性も高いので、ハウジングを大きくした設計も可能になっている。

 フィルターの外側には三軸織の保護網材を追加。互いに60度の角度で交差する織物で、どの方向からの引っ張りにも強いという特性を備えている。軽量で強度が高いこともあり、宇宙用機器にも用いられる素材とのことだ。

 またYH-5000ESにはレザー(羊革)とスエード(フェルト)の2種類のイヤーパッドが付属する。レザータイプは、耳に当たる部分に適度な吸湿性を持った羊革を、その周囲はクッション性と適度な空気抵抗を備えたパンチング加工を施した合成レザーが使われる。内部は通気性のあるメッシュを搭載。スエードタイプは柔らかくフィットし、長時間付けていても快適さを損なわない東レの「Ultrasuede」を採用し、内側にメッシュが施されている。

 このふたつのイヤーパッドは、微妙に音の印象が変化するそうなので、オーナーになった方はぜひ違いを確認していただきたい。

画像: YH-5000SEには2種類のイヤーパッドが付属。写真左がスエードで、右がレザー

YH-5000SEには2種類のイヤーパッドが付属。写真左がスエードで、右がレザー

 YH-5000SEでは、3.5mmの3極コネクター(6.3mm変換アダプター付)と4.4mm5極コネクターの2種類のケーブルが付属している(ヘッドホン側は3.5mm)。どちらも純度の高い音楽再生に定評がある銀コートOFCを線材に採用、高S/Nと音の密度を引き出せるよう配慮しているそうだ。

 加えて、別売でXLRプラグ型のバランスケーブルも準備されている。最近のヘッドホンアンプでは4.4mmコネクター搭載機が増えているが、XLRプラグを備えたヘッドホンアンプと組み合わせたいという希望にも応えるための配慮だろう。

 もうひとつ、YH-5000SE専用のスタンドも同梱されている。アルミ製のスマートなデザインで、後側にはケーブルを一緒にかけられるバーも備えている。このスタンドも日本製で、高い仕上げ精度を備えているのがポイントだ。なおそれら関連アクセサリーも単品発売される。その詳細は以下の通りで、すべて2023年2月の発売予定(2022年12月9日から予約受付を開始する予定)。

●ヘッドホンスタンド:HST-5000 ¥38,500(税込)
●イヤーパッド(レザー):HEP-5000LE ¥27,500(税込)
●イヤーパッド(スエード):HEP-5000SU ¥27,500(税込)
●アンバランスケーブル:HUC-SC020 ¥60,500(税込)
●バランスケーブル:HBC-SC020 ¥71,500(税込)
●XLRケーブル:HXC-SC020 ¥93,500(税込)

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