YAMAHA

画像: 「YH-5000SE」

「YH-5000SE」

 ヤマハでは、新製品の平面磁界型ヘッドホン「YH-5000SE」を参考出品、中野サンプラザ15Fのアクアルームで試聴デモを行った。このモデルについては事前告知もされており、開催前から大きな注目を集めていたのは間違いない。その証拠に試聴券は開場5分でなくなってしまったという。

 さて、同社では1976年に、オルソダイナミック振動板と呼ぶ、自社開発の平面磁界型ドライバーを搭載したヘッドホン「HP-1」を発売していた。今回はその技術をベースに、”ヘッドホンでの音楽体験を愛する人” に向けた製品として送り出すそうだ。

 搭載された平面磁界型ドライバーは口径50mmで、インピーダンスは34Ω(1kHz)、再生周波数帯域は5Hz〜70kHzと発表されている。重さは320g(ヘッドホンケーブル除く)と、このサイズにしてはかなり軽い。

画像: 平面磁界型ドライバー

平面磁界型ドライバー

 ヘッドフォン祭の会場で、開発担当者からこのモデルについてのこだわりや苦労した点について聞いてみた。

 そもそも、1970年代のヤマハ製品が持つプロダクトとしての存在感、独創性に魅力を感じていたという。そんな中でHP-1で使われている平面磁界型の技術にインスパイアされ、高級ヘッドホンでの搭載を企画したそうだ。

 YH-5000SEの開発は6年という長い時間をかけて行われたそうで、中でも平面磁界型ドライバーの開発には苦心した。HP-1のドライバーはまったりとした柔らかい音調だったそうだが、新開発ドライバーではその魅力を残しつつ、今の音楽ソースも充分再生できるよう、耳馴染みがよく、かつ応答性の高い再現を目指している。

 変更点としては、HP-1のそれはエッジと中央部で振動板を支えていたが、今回はエッジ部のみで支える方式に変更されている。だがそれだと真円にならない、中心部がたわんでしまうといった問題も発生したそうだ。

画像: こだわりの詰まったパーツ群。左端は試作したドライバーの金型とのこと

こだわりの詰まったパーツ群。左端は試作したドライバーの金型とのこと

 YH-5000SEではドライバーの金型から試作を繰り返し、さらに製造工程も検証することで、期待通りの性能を備えた振動板を実現している。実に3〜4年をかけ、金型は10数回、振動板は1000枚以上試作を繰り返したとのことだ。

 その振動板は、微細孔ダンパーと呼ばれる素材で挟まれているが、これは主に振動板の低域振幅を制御するためのものという。通常はフェルトや不織布が使われることが多いそうだが、YH-5000SEでは中低域のロスが少ない点に着目してこの素材を使っている。

 YH-5000SEはオープン型エンクロージャーを採用しているのも特長だ。ハウジングはマグネシウムを使い、軽さと頑丈さを備える。その隙間からみえる部分(内側のフレーム)には圧延平畳織ステンレスフィルターという通気性を備えた素材とすることで、音の密度感と開放感を両立したそうだ。

 この圧延平畳織ステンレスフィルターは、ステンレスの糸を織り込んだ素材をさらに圧力をかけて仕上げているそうだが、最適な通気性を実現するためにプレスの強さも細かく調整しているとのことだ。

画像: プリアンプ「C-5000」のヘッドホン出力に「YH-5000SE」をつないだサウンドも素晴らしいとのこと

プリアンプ「C-5000」のヘッドホン出力に「YH-5000SE」をつないだサウンドも素晴らしいとのこと

 ちなみにYH-5000ESにはレザー(羊革)とスエード(フェルト)の2種類のイヤーパッドが付属している。このふたつでも微妙に音の印象が変化するそうなので、オーナーになった方はぜひ違いを確認していただきたい。

 ケーブルについても3.5mm3極と4.4mm5極コネクターの2種類のケーブルが付属している(ヘッドホン側は3.5mm)。どちらも銀コートOFCを線材に採用し、編み方まで指定することで、高S/Nと音の密度を引き出せるよう配慮しているそうだ。

 これほどのこだわりが詰まった製品ということもあり、YH-5000SEはドライバーの製造はもちろん組み立ても難しいそうで、今回は日本国内の工場で、熟練の工員のみが作業を担当する予定という。この点からも同社のYH-5000SEに対する真剣さがうかがえるだろう。

Bowers & Wilkins

画像: Bowers & Wilkins

 ディーアンドエムホールディングスでは、7月下旬に発売されたB&W(Bowers & Wilkins)
のノイズキャンセリングヘッドホン「Px7 S2」(市場想定価格5万円台後半、税込)の試聴が可能だった。

 40mmカスタムドライバーを搭載し、Bluetoothコーデックは、aptX Adaptiveに対応。高音質、低遅延、音途切れに対する接続性能を備えており、無線受信環境の変化に合わせて自動的にビットレートを調整して音切れを回避してくれる優れものだ。

 なおPx7 S2リリース時に告知されていた新しいフラッグシップモデル「Px8」の開発も順調のようで、近日中に何かお知らせがありそうな雰囲気だった。

NTT sonority

画像: パーソナルイヤースピーカー「MWE001」

パーソナルイヤースピーカー「MWE001」

 NTTソノリティでは、秋のヘッドフォン祭2022で独自開発した「耳元だけに音を閉じ込める」PSZ(Personalized Sound Zone)技術をデモしていた。この技術は、ドライバーユニットから一定距離のところで、オリジナルの音の逆相成分を再生し、音波同士を打ち消し合うことで周囲への音漏れを防ぐものだ。

 そしてPSZ技術を採用した製品としてパーソナルイヤースピーカー「MWE001」も展示、実際の効果を確認できるようになっていた。MWE001は12mmドライバーを搭載し、このユニット本体を耳の上側にぶら下げるように装着する(イヤホンを耳の穴には入れない)。

 この状態でも、装着者には音がしっかり聴こえるが、PSZ技術の効果で近くの人が音漏れを感じることはなかった。しかも電源が必要なく、パッシブ処理で可能な点もポイントだろう。結果としてMWE001は小型、軽量(9g)が実現できている。

 MWE001は現在クラウドファンディングを実施しているそうなので、興味のある方はチェックしていただきたい。( https://greenfunding.jp/lab/projects/6208

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