オーディオビジュアル専門店のavac(アバック)とJVCケンウッドは、去る10月22日に「Victorプロジェクター特別視聴会」を開催した。

 同社のプロジェクターについては、25周年限定モデル「DLA-V90RLTD」が話題を集めているが、実は同モデルはほとんど予約済みで、また生産真っ最中のため、イベント等でのデモは予定していないという。今回は、「DLA-V90R」「DLA-V80R」「DLA-V70R」の3モデルについて、最新ファームアップデートの効果を体験してもらおうという内容だった。

画像: 25周年限定モデル「DLA-V90RLTD」は製品展示のみ

25周年限定モデル「DLA-V90RLTD」は製品展示のみ

 まず、今回の視聴会で講師を務めた麻倉怜士さんからD-ILAプロジェクターの歴史について解説が行われた。そもそもD-ILAデバイスの歴史は長く、1997年の0.9インチのSXGA解像度パネルからスタートしている。その後2000年には1.7インチの4Kパネル、2008年には1.75インチの8Kパネルと高精細化を進めてきた。

 家庭用モデルとしては2007年にフルHD解像度の「DLA-HD1」を発売、その後2011年にe-shift 4K技術を搭載した「DLA-X90R」で2Kパネル搭載機ながら4K相当の大画面が楽しめる製品をリリースした。2016年にはネイティブ4Kパネルとレーザー光源を搭載した「DLA-Z1」が登場、続いて4Kパネルを使ってスクリーン上に8K相当の映像を投写する8K e-shift技術も開発された。現行モデルのDLA-V90RとDLA-V80Rには8K e-shift Xが搭載されている(DLA-V70Rは8K e-shiftを搭載)。

画像1: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 ちなみにビクタープロジェクターは今年の7月から生産拠点を横須賀事業所に移管した。これは円安等を見据えた処置だったが、その結果 “Made in YOKOSUKA” モデルが再登場したわけで、日本のユーザーにとっては嬉しい変化といえるだろう。視聴会の司会を勤めたJVCケンウッドの西窪英博さんはこの出来事を「陽はまた昇る」と表現していた。

 その西窪さんはまず、「私がプロジェクターの担当になったのはDLA-HD1が発売された頃で、既に15年以上前のことです。それだけの間プロジェクターを発売しつづけてこられたのは、皆さんが弊社のプロジェクターを愛してくれたからです」と来場者にお礼を述べていた。

 続いて最新ファームウェアアップデートの概要が紹介された。詳細は以下の関連リンクで確認していただきたいが、今回の視聴会では、レーザーダイナミックコントロールに追加された「きらびやかな映像を再現する新しいモード」や、「Frame Adapt HDR」選択時に明るさを重視したHDRレベルとなる「オート(ワイド)」を追加したことによる絵の変化を体験してもらおうという内容になっていた。

ファームウェアアップデートの詳細はこちら

 そしてここから麻倉さんによる解説がスタート、視聴会第一部として、DLA-V70RとDLA-V80Rを使った映像比較が行われた。会場前方には120インチスクリーンがふたつ設置されており、そこに両機の映像を投写している。

 この2モデルはどちらも4K解像度のD-ILAパネルを搭載しているが、上記の通り8K e-shiftの世代や、輝度(DLA-V80Rが2,500ルーメンで、DLA-V70Rは2,000ルーメン)といった違いがある。そのため過去の視聴会でも両モデルの絵を並べて再生すると、DLA-V80Rの方が画面の明るさやコントラスト、絵の緻密さで勝っていた(価格も違うから当然だが)。

画像2: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 DLA-V70Rのレーザーダイナミックコントロールをアップデートされた新モードに、DLA-V80Rを従来のモードにセットして、ビコムのUHDブルーレイ『宮古島~癒しのビーチ』を再生する。麻倉さんは海の間をまっすぐに伸びた池間大橋のシーンを選び、背景に見える島の稜線や空に浮かんだ雲の階調感、さらに追い越し禁止のオレンジの線やアスファルトの黒色がどう見えるかをチェックポイントに挙げていた。

 その他にも映画UHDブルーレイ『マリアンヌ』のロンドン爆撃シーンも確認したが、夜空を覆い尽くす爆撃機や暗い中での主人公達の衣装の質感もきちんと再現されており、「DLA-V70R+新モード」と「DLA-V80R+従来モード」の画質差は以前より少ないことが確認できた。麻倉さんも、新機能が加わったことでDLA-V70Rの魅力が格段に向上していると話してくれた。

画像3: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 続く第二部では、DLA-V70R、DLA-V80Rの画質モードを「Frame Adapt HDR 2」に、HDR Levelを「オート(ワイド)」にセットして両機の違いを確認した。

 まず麻倉さんからFrame Adapt HDR機能について、「HDR10は作品全体を通してメタデータがひとつしかありませんでした。しかしそれでは明るいシーンや暗いシーンが混在するコンテンツではそれぞれの一番いい映像を引き出すことはできなかった。そこでビクターは映像を解析してシーンに最適なHDR映像を再現する機能としてFrame Adapt HDRを開発したわけです。これはその後に登場したHDR10+を先取りしたものといってもいいでしょう」という解説があった。

 「Frame Adapt HDR」の効果がわかりやすいコンテンツとして麻倉さんが選んだ一枚がビコムの『8K空撮夜景 SKY WALK』。新横浜駅やコンテナ埠頭、渋谷の夕景〜夜景シーンでは、夕暮れの赤みを帯びていく街並みや高層ビル屋上のディテイルの再現性、煌びやかな渋谷スクランブル交差点を上空から見下ろしたカットなど見どころが多い。

画像4: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 映画『グレイテスト・ショーマン』では、ベッドに座っている主人公の妻・チャリティの柔らかな衣装の素材感や、ふたりの子供が屋外に駆け出すカットでの木々や花の色彩がいかに鮮やかに再現できるかがポイントになる。またフォーカスが合っている部分とボケている部分の対比がいかに自然に描かれるかも重要だ。

 その他にもいくつかのコンテンツが再生されたが、「Frame Adapt HDR 2」にセットしたDLA-V70RとDLA-V80Rでは、やはり基礎体力の違いがわかる。DLA-V70Rは黒が沈んで、夜景シーンではビルの窓の明かり、航空障害灯や車のテールランプといった小さな煌めきまで輝度差を伴って再現されている。元気いっぱいの、若い絵づくりという印象だ。

 これも充分満足できる映像だが、DLA-V80Rでは黒の微妙な階調、光のピークの中にあるグラデーションまでわかるようになり、画面全体に落ち着きが出てくる。『グレイテスト・ショーマン』の屋外の風景も目に鮮やかだ。DLA-V70Rはスペック上のネイティブコントラスト比が40,000:1で、DLA-V80Rは80,000:1という違いがあるが、その差が映像にもでてきたということだろう。とはいえDLA-V70Rの元気のある映像も魅力的で、好みで選び分けてもいいレベルだと思った。

画像5: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 休憩を挟んで第三部がスタート、スクリーンを150インチに入れ替えてDLA-V90Rの映像が上映された。映像モードは「Frame Adaput HDR 3」で、HDR Levelを「オート(ワイド)」にセットしている。

 『8K空撮夜景 SKY WALK』で同じシーンを再生すると、来場者全員の目がスクリーンに釘付けになった。ここが違う、という具体的なポイントがあるわけではないのだが、空気がさらに澄んできて、立体感、奥行の再現が増してきいる。

 麻倉さんはその違いについて、「立体感が凄いですね。ひじょうに情報量があって、なおかつ輝度表現も卓越している。DLA-V90Rは100mm径のレンズを搭載しています。他の2モデルは65mmで、その差が絵に出ていますね。それもあり、DLA-V90Rはネイティブコントラストも100,000:1をクリアーしています」と話していた。

画像6: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 また今回は8K出力が可能なPCも準備されており、ネイティブ8K映像をDLA-V90Rに入力した映像も投写された。ビクターのデモコンテンツからブルガリアの風景を再生すると、こちらも圧巻のクォリティ。窓から現実の風景を見ているようで、8Kの実力を改めて感じた次第だ。

 さらに麻倉さんは、ブルーレイ『サウンド・オブ・ミュージック』を取り出し、2Kからのアップコンバート映像も再生した。プレーヤーのパナソニック「DP-UB9000」で2K→4K変換し、さらにDLA-V90Rの8K e-shift Xで8Kにアップコンバートしている。

 マリア先生がカーテン生地で作った子供達の洋服の素材感もリアルだし、ドレミの歌を歌う俯瞰シーンの山並み、古いお城の自然なぼけ感など、一見しただけでは2Kからのアップコンバートとは思えないほどで、フィルムライクな映像にも感じた。

画像7: ビクターのプロジェクターが今年も進化を遂げた! そのパフォーマンスを余すことなく体験できる視聴会を、アバックとJVCケンウッドが開催。その現場に潜入した

 「これは2011年に発売されたソフトですが、本当に解像感も高くて驚きました。この組み合わせなら2Kのブルーレイも充分楽しめますね」と麻倉さんも太鼓判を押してくれた。

 その後もお薦めソフトが再生され、視聴会は2時間半に及んだ。しかしその間、来場者は一心不乱に麻倉さんの解説に耳を傾け、スクリーンの映像に目を凝らしていた。最近は直視型ディスプレイの大型化も進んでいるが、大画面の王様はやはりスクリーン&プロジェクターだろう。その最先端を走るビクター機の実力を、来場者はみんな実感していた。(取材・文:泉 哲也)

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