昨年、アメリカのオーディオメーカー、マイテックデジタルの輸入代理店担当者が「近いうちにLiberty(リバティ) DACの後継機と、かなり性能のよいヘッドホンアンプが出ます。プロトタイプを聴いたら、音のよさに驚きました」と目を輝かせながら話してきた。彼と僕は好きな製品の感覚が近い。「この言い方は確証があるな」と僕は直感した。

 HiVi5月号でご紹介するのは、その2台。DAコンバーターのリバティDACⅡと、ヘッドホンアンプのリバティHPAである。同社エントリークラスのシリーズに属するが、どちらもエントリーモデルとは思えない強力なスペックを秘めている。

画像1: マイテックデジタルのD/Aコンバーター「Liberty DAC Ⅱ」とヘッドホンアンプ「Liberty HPA」は、大きな進化を遂げた驚愕の音質

D/A CONVERTER
MYTEK Digital
Liberty DAC Ⅱ
オープン価格(実勢価格21万4,500円)

●接続端子:デジタル入力端子5系統(光、同軸×2、AES /EBU USBタイプB)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、ヘッドホン出力1系統(6.3mm)
●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:~384kHz/32ビット、~11.2MHz(DSD)
●備考:MQA対応
●寸法/質量:W140×H44×225mm/2kg

画像: コンパクトな筐体に5系統のデジタル入力と2系統のアナログ出力を完備。大型電源への変更で重量が2kgに増加しており、また12V DC入力やフォーン出力を省略したかわりに、バランス出力を備えたことも前モデルとの大きな違いだ

コンパクトな筐体に5系統のデジタル入力と2系統のアナログ出力を完備。大型電源への変更で重量が2kgに増加しており、また12V DC入力やフォーン出力を省略したかわりに、バランス出力を備えたことも前モデルとの大きな違いだ

 リバティDACⅡのサイズは、幅140×高さ44×奥行225mmとコンパクト。シャーシは筐体剛性が高く、フロントパネルには、白色に統一されたLEDで、入力ソース、ビット深度、サンプリング周波数などが確認できる。

 前モデルとの大きな変化は、60W供給可能な大型トロイダルダンス電源を採用したこと。マイテックデジタルでは2020年からリニア電源とスイッチング電源の比較を行ない、このモデルでは前者を採用した。この製品のみならず、今後のリバティシリーズは可能な限りリニア電源を採用していくという。

 DACチップはESSテクノロジー社のES9038Q2Mに進化。入出力はデジタル、アナログとも充実しており、XLRのバランス出力を搭載したのもアップデートしたポイントだ。

画像2: マイテックデジタルのD/Aコンバーター「Liberty DAC Ⅱ」とヘッドホンアンプ「Liberty HPA」は、大きな進化を遂げた驚愕の音質

HEADPHONE AMPLIFIER
Liberty HPA
オープン価格(実勢価格21万4,500円)

●最大出力:6000mW(16Ω)
●接続端子:アナログ音声入力4系統(RCA×3、XLR/TRS)、アナログ音声出力1系統(RCA)、ヘッドホン出力4系統(6.3mm、3.5mm、4.4mmバランス、4ピンXLRバランス)
●最大サンプリング周波数/量子化ビット数:~768kHz/32ビット(PCM)、22.4MHz(DSD)
●寸法/質量:W140×H44×225mm /2kg
●問合せ先:マイテックデジタル https://www.mytekdigital.jp/

画像: アンバランス3系統、XLR/フォーン兼用のバランス1系統と入力端子が豊富。+6dB、0dB、-6dB、-12dBと4段階のゲインを備え、あらゆるインピーダンスのヘッドホンを駆動する

アンバランス3系統、XLR/フォーン兼用のバランス1系統と入力端子が豊富。+6dB、0dB、-6dB、-12dBと4段階のゲインを備え、あらゆるインピーダンスのヘッドホンを駆動する

 リバティHPAは同社初の据え置き型ヘッドホンアンプ。デザインやシャーシサイズはリバティDACⅡと同一だが、特筆すべきはTHX社のオーディオアンプ用回路の最上位バージョン「THX AAA(Achromatic Audio Amplifier)888」テクノロジーを採用したこと。チャンネルあたり6000mA(16Ω)の高出力と、THD(歪み率)は最大-150dBを達成した点も大きな特徴だ。

 トロイダルトランス電源によるアナログ電源駆動と27mmのALPS製プロフェッショナルグレードの大型ボリュウムアッテネーターを採用。入力は3系統のアンバランス接続に加えてバランス接続を1系統備え、リバティDACⅡとバランス接続で組み合わせて使える。

 バランス回路は作動駆動方式ではないが、きわめて駆動力が高い。高S/N、低歪み設計のTHX AAA888の採用により必要性がないと判断したという。

 ヘッドホン出力も4ピンXLR/4.4mmバランスと6.3mm/3.5mmアンバランスの合計4系統搭載と、バリエーション豊かだ。

解像感と音楽性を両立したフォーカスの合った音

 試聴はヘッドホンと2チャンネルのスピーカー環境で実施。再生ソフトのAudirvanaをインストールしたMacBook Proをトランスポートとして、リバティDACⅡとUSB接続。リバティDACⅡとリバティHPAはバランスケーブルで接続し、ゼンハイザー HD800Sを駆動する。

 あまり大げさには書きたくないと思いつつも、その音質に僕は驚嘆した。ソースに対し、アキュレイトな音色をベースに適度な音楽性を付加した印象だが、何よりも全帯域の音の滲みが極小なのだ。まるでマクロレンズのピントを厳密に合わせたようなフォーカスのあったディテイル。この感動をもっと書きたいが文字数がまったく足りないのが惜しい。

 リバティHPAのクロスフェード機能は4モードあり、「NORM1」はヴォーカル音像が明瞭になり前方へ張り出してくる。「NORM2」ではそれに加え横方向のステージが強調される。「HIGH1.2」はそれぞれの音調を強化し、スピーカーで聴いたような音場感がより付加される印象だ。

 2chのスピーカー環境では、リバティDACⅡとテクニクスのプリメインアンプSU-R1000を接続して、ディナウディオThe Special Fortyで試聴した。ソースに忠実な音色、音調は同一で、価格の割に分解能が高い。小レベルの音がしっかりと解像しているところも気に入った。

 小型かつ本格的な内容を持つ2台は、デスクトップに高品位なヘッドホン/スピーカー試聴環境を構築できるし、本格的な2チャンネルスピーカーの環境に導入してもよいだろう。

 本当にお買い得なオーディオビジュアルを推挙するHi Viベストバイでマイテックデジタルの躍進は周知の通りだが、一人のオーディオビジュアルファンとして、今季、2台の反応が楽しみでならない。

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【 本記事の掲載号は HiVi5月号 】

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