モンキー・パンチさんのホームシアター愛が堪能できるこだわりのムックと『ルパン三世』の極上音質サントラSACDが登場

 1971年のテレビシリーズでの初放映以来、多くのファンの人気に支えられている『ルパン三世』。『ルパン三世 カリオストロの城』をはじめとする数々の劇場映画、現時点で27作におよぶテレビスペシャルの放映など、数多くの作品が生み出された。現在ではテレビシリーズ最新作となる『ルパン三世 PART6』が放送中(2021年12月17日現在)。比較的最近のテレビシリーズは、PART4がイタリア編で、PART5がフランス編と活躍する舞台が国際的になっているのも魅力。

 PART6はロンドンが舞台となっていて、ライバルとしてシャーロック・ホームズの名を継ぐ男が登場するなど、本格的なミステリーを主軸とした内容。ルパン三世自身も人殺しをも厭わぬ悪党として描かれている。また、ゲスト脚本家として、辻真先さん、押井守さん、芦辺拓さんらが参加しており、それぞれの持ち味を活かしたミステリー短編がオムニバス形式で盛り込まれているのも興味深い。こうした過去のエピソードは、現在では動画配信サービスで見ることができる。

モンキー・パンチさんが愛した
ホームシアターの魅力が詰まった1冊

 そんな『ルパン三世』を生み出した原作者、モンキー・パンチさんが大のAVファンだったのはHiVi誌の読者ならばよくご存じだと思う。潮晴男さんの人気連載「AVルーム・クリーニング大作戦」に登場したことをきっかけに、本格的なホームシアター作りに邁進していった。

 その様子はHiViでも継続的に記事となり、モンキー・パンチさんがホームシアターに憧れた思い出からはじまり、大好きなJBLのスピーカーが、K2 S9800/S9900、エベレストDD66000とグレードアップしていく様子などが報告されていた。こうしたモンキー・パンチさんの記事の数々は、別冊の『モンキー・パンチさんが教えてくれた〜天才漫画家が愛した音楽とホームシアターのすべて〜』で網羅されている。連載時に寄稿していただいた画稿はもちろん、未公開イラストまでもぜいたくに盛り込んだ内容だ。

 イラストギャラリーでは、手描き時代のデッサンやカラーイラストから、パソコンでのデジタルによるものまで数多い。さらには、声優の小林清志さんと増山江威子さん、音楽を担当した大野雄二さんらのインタビュー、HiViでもお馴染みの氷川竜介さんや数々のサウンドトラックを手掛けた高島幹雄さんの寄稿などもある。漫画家としてのモンキー・パンチさんのファンには、彼の知られざる一面であろうし、『ルパン三世』ファンにとっても貴重なイラストやインタビューがあり、モンキー・パンチさんと『ルパン三世』の魅力がいっぱいに詰まった一冊だ。

画像: HiVi誌の人気企画『潮晴男のAVルーム・クリーニング大作戦』に多数登場いただいたモンキー・パンチさんのホームシアター変遷記事の再録のほか、豪華イラストレーションやアニメーション作品『ルパン三世』の次元大介役の小林清志さんや二代目峰不二子役の増山江威子さんのインタビューなども掲載。ここでしか読めない、見られない貴重な記事/イラスト満載の一冊です

HiVi誌の人気企画『潮晴男のAVルーム・クリーニング大作戦』に多数登場いただいたモンキー・パンチさんのホームシアター変遷記事の再録のほか、豪華イラストレーションやアニメーション作品『ルパン三世』の次元大介役の小林清志さんや二代目峰不二子役の増山江威子さんのインタビューなども掲載。ここでしか読めない、見られない貴重な記事/イラスト満載の一冊です

別冊ステレオサウンド
『モンキー・パンチさんが教えてくれた
  〜天才漫画家が愛した音楽とホームシアターのすべて〜』 ¥2,530 税込
  ご購入はこちら→ https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/bss_bst/9784880734613

 『ルパン三世』の話に戻ると、PART6の第0話で、長く次元大介役を演じてきた小林清志さんが降板。ついにルパン三世のメインキャストはすべて入れ替わってしまった。しかし、変わらないものはある。音楽を担当する大野雄二さんだ。氏が音楽を担当したのはPART2からとなる。『ルパン三世』の音楽といえば、往年のファンならばチャーリー・コーセイの主題歌を思い出す人もいるだろうが、事実上現在まで続く人気を確立したPART2で使われた『愛のテーマ』や『ルパン三世’79』を思い出す人が多いだろう。

 大野雄二さんはピアニストとしてデビュー後、作曲家としても活躍し、映画『犬神家の一族』などでも知られる。『ルパン三世』では、作曲を手掛けるだけでなく、自身とそのバンドメンバーが参加して演奏も行なっている。

いっさい手抜きなしで制作された
『ルパン三世』サウトラSACD

 そんな大野雄二さんが手掛けた『ルパン三世PART2』の劇伴『ルパン三世オリジナル・サウンドトラック』、『ルパン三世・2』、『ルパン三世・3』。これらは現在、アップルミュージックなどでも配信されているが、それらから厳選した20曲をSACD化したのが、『LUPIN THE THIRD 1977〜1980 ORIGINAL SOUNDTRACK for Audiophile』だ。

 もちろん、日本コロムビアの全面協力のもと、LP制作当時のオリジナル・マスターテープを使用。スチューダーA80テープデッキで再生し、マージングテクノロジーズ社のHapi プレミアムタイプでDSD2.8MHzに変換。CD層のためにはdCSのA/Dコンバーター902で96kHz/24bit化した後で、44.1kHz/16bitのマスターとしたものだ。音質面においていっさいの手抜きなし、だ。

 インターネットでの音楽配信もロスレス化、ハイレゾ化が普及しつつあるが、CDやSACDなどの円盤にも未だ根強い人気がある。前述のように今回のディスクに収録された音源もサブスク配信されているが、ただしそれはCDと同じ44.1kHz/16bitスペックで、オーディオファンに向けたマスタリングがされているわけではなく、今回のSACD/CDの方がよりマスターに近い音で楽しめるのは間違いない。

 若い人も含めて人気の高い『ルパン三世』の楽曲とあって、本ディスクも好評を博しているという。ツイッターなどでのつぶやきでも音質のよさについて触れている書き込みが少なくない。

画像: いっさい手抜きなしで制作された 『ルパン三世』サウトラSACD

SACD/CDハイブリッド
Stereo Sound ORIGINAL SELECTION Vol.12
ルパン三世 1977〜1980 ORIGINAL SOUNDTRACK 〜for Audiophile〜

(日本コロムビア/ステレオサウンドSSMS-054)¥4,950 税込
●マスタリング・エンジニア:山下由美子(日本コロムビア)●問合せ先:㈱ステレオサウンド 通販専用ダイヤル03(5716)3239(受付時間:9:30〜18:00 土日祝日を除く)
●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/4571177052810

■収録曲
1. ルパン三世のテーマ
2. 愛のシルエット
3. デンジャラス・ゾーン
4. サンセット・フライト
5. マグナム・ダンス
  〜ロンリー・フォー・ザ・ロード
6. 愛のテーマ
7. ルパン三世 '79
8. トルネイド<次元大介のテーマ>
9. 螺旋飛行〜黄昏のサンジェルマン
10. 黒い陰謀

11. スーパー・ヒーロー<ルパン三世のテーマ>
  歌:トミー・スナイダー
12. 斬鉄剣<石川五右衛門のテーマ>
13. ラヴ・スコール<峰不二子のテーマ>
  歌:サンドラ・ホーン
14. ルパン三世'80
15. そよ風の誘惑
16. ラヴ・イズ・エヴリシング  歌:木村 昇
17. C-DAG〜非常線突破
18. モンマルトルにて
19. 貿易風
20. サンバ・テンペラード〜C-DAG

画像: ディスクはSACDとCD層を一体化させたハイブリッドディスク仕様。SACDプレーヤーをお持ちの方であれば、高品位なSACD層を、CDプレーヤーではCD層が再生できる。どちらの信号層もそれぞれのフォーマットの器を最大限活かすような、こだわりの制作が行なわれている

ディスクはSACDとCD層を一体化させたハイブリッドディスク仕様。SACDプレーヤーをお持ちの方であれば、高品位なSACD層を、CDプレーヤーではCD層が再生できる。どちらの信号層もそれぞれのフォーマットの器を最大限活かすような、こだわりの制作が行なわれている

素晴らしい演奏と実体感に溢れた音で
愛聴曲が存分に堪能できる

 というわけでぼくも聴いてみた。1曲目の「ルパン三世のテーマ」には、ルパン三世や銭形警部のちょっとした会話による導入がある。間奏では次元大介らの面々の自己紹介も入る。昔のサントラにはよくあった演出だ。この声が実に生々しく、山田康雄さんをはじめとする初期キャストの声がリアルに甦った。現在のキャスト陣も違和感はないが、やはり子供の頃からずっと聞き親しんできたこの声こそ、ぼくにとっての本物。その声のよさだけでも本ディスクの音のよさがわかる。

 もちろん、演奏も素晴らしい。ジャズを採り入れた楽曲が多いが、この曲はマカロニ・ウエスタンの音楽を意識したそうで、流行に左右されず、さまざまなアレンジにも耐える旋律が欲しいと考えたとか。その判断が間違いでなかったのは現代でも世代を問わず愛されていることが証明している。こうして現在聴き直してみても楽曲にいっさい古さを感じさせないし、トランペットの吹き上がりはスリリング、リズムセクションのキレ味のよいリズムも気持ちいい。

 わが家のシステムはB&Wのマトリクス801シリーズ3にベンチマークのプリアンプHPA4、パワーアンプAHB2(2台)となっていて、往年の名機である801S3とは思えないキレ味のよい音が出るようになっているが、本SACDでも音像が分厚く、実体感に溢れた音を楽しむことができた。スリリングでセクシーな楽曲とは相性もばっちりで、ずっと愛聴してきた「ルパン三世のテーマ」を存分に堪能できた。

 そして、ヴォーカル曲もいい。トミー・スナイダーの「スーパー・ヒーロー」は、劇中のルパン三世の活躍が目に浮かぶようだし、セクシーでしかもカッコイイ。そして、サンドラ・ホーンの「ラヴ・スコール」はまさに峰不二子そのものの色気がよく伝わる。こんな大人っぽいヴォーカル曲の数々も『ルパン三世』の魅力で、改めて今の自分の好む音楽の根っこに『ルパン三世』があることがわかる。そんな当時の思い出まで蘇るような鮮度の高い音が素晴らしい。

 極めつきは、「サンバ・デスペラード〜C-DAG」。サンバの曲調でスリリングに展開する曲だが、逃走シーンやアクションパートで使われるフレーズと言った方がわかりやすいだろう。現在でもアレンジを変えて使われている曲のひとつだ。サンバのリズムにスリリングなメロディが重なり、どこか哀愁さえ漂わせる曲の展開が泣かせる。

 優れた楽曲は時代を超えて生きる力を持っているが、曲のよさだけでなく基本的な品質の高さも重要だと改めてわかる。ぼくのように『ルパン三世』を見続けてきた者にとって、このアルバムはこれからも愛聴盤のひとつになるだろう。

※本記事は「HiVi」1月号に掲載↓

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