独創的なアンプ回路の開発で知られる、アンプ設計の名手ネルソン・パス。そんな同氏のプライベートブランドともいえるファーストワットの最新パワーアンプF8をチェックした。

 実は筆者、以前より同ブランドのアンプに強い興味を抱いていた一人。数年前に某所で聴いたSIT1を4台使用したJBLのエベレストDD66000の歪みのない圧倒的なサウンドを今でも鮮明に覚えており、いつかは自分のシステムにファーストワットのアンプを投入したいと考えていた。

 話をF8に戻すが、本モデルは、高い評価を得ていたJ2の回路を改良した2ステージ構成のシングルエンドA級パワーアンプで、出力は25W+25W(8Ω)。東芝製の2SJ74PチャンネルJFETと、セミサウスのR100SiCパワーJFETを信号ゲイン回路に用いるが、これらのパーツは既に生産が終了しており、同ブランドの保管庫にストックされたものを使用しているという。

 また信号増幅回路に使われる半導体素子はJ2のチャンネル6個に比べて今回は3個と、さらにシンプル化されているのも注目点だ。

 本作品(あえて作品と書きたい)も含め、ファーストワットのアンプはシンプルな構成による、恐ろしく鮮度の高い質感とビロードのような音色を持つ事が魅力だ。絶対的なパワーは低いことから高能率なスピーカーを用いることが推奨されているが、相性のよいスピーカーと組み合わせたときに得られる超絶サウンドは、多くのオーディオファンを虜にしている。

 今回は、アキュフェーズのプリアンプと組み合わせ、モニターオーディオPL300Ⅱを駆動、ハイレゾファイルから、女性ヴォーカル、オーケストラ、ポップスなどさまざまな楽曲を再生した。

 シングルエンドA級というアンプの回路構成だけでその描写力を推し量ることは出来ないが、確かに中高域の歪みが少ない。トランジスターアンプではなかなか聴くことができない、すべての音の粒子を細かく砕き凝縮したような抑揚のある音で、低域もレスポンスよく質感もなめらかだ。

 さらに能率の高いスピーカーと組み合わせたり、中高域をパッシブ駆動、低域をアクティブ駆動するハイブリッドタイプのスピーカーと組み合わせたりと、今までにない音を探求できそうである。F8はオーディオマインドを刺激してくれるアンプだ。

画像: ファーストワットの最新パワーアンプ F8。期待に違わぬ鮮烈なサウンドがオーディオマインドを刺激する

POWER AMPLIFIER
FirstWatt
F8
¥572,000(税込)

●出力:25W+25W(8Ω)、15W+15W(4Ω) 
●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)
●寸法/質量:W431.8×H171.5×D406.4mm/12.6kg 
●問合せ先:(株)エレクトリ TEL. 03(5419)1594

画像: 接続端子はRCA端子のみ。歪み率を0.015% (1W、8Ω) に抑えているのもファーストワットの主宰者ネルソン・パス氏がこだわったポイントだ

接続端子はRCA端子のみ。歪み率を0.015% (1W、8Ω) に抑えているのもファーストワットの主宰者ネルソン・パス氏がこだわったポイントだ

本記事の掲載号: 月刊『HiVi11月号』

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