完全ワイヤレスイヤホンは、巷の音楽再生のメインストリームとなった。それと同時に、ワイヤレスの安定度やバッテリーの持ち時間など、選択時のポイントは増えつつ、価格は下落傾向にある。
しかし、オーディオ/音楽好きにとっては、完全ワイヤレスイヤホンに満足感を得られるか否かの大きな要素は音質だ。私たちは機能やコストだけでなく音質を大きく求める〝うるさ型〟の人種なのである。
ドイツの名門メーカー、ゼンハイザーの新作、CX Ture Wirelessは、そんな欲張りな人も満足させるコストパフォーマンスの高い1台だ。本モデルは、2020年の秋頃に発売されたCX 400BT Ture Wirelessの後継モデル。現在の実勢価格は1万円台中盤で、名門メーカーの製品として大変お買い得だ。
しかし内部は本格派で、ドライバーには同社上位モデルMOMENTUM Ture Wireless 2と同等の7㎜径ダイナミック型ドライバーを搭載する。価格を抑えられた理由は、ハウジング周りのパーツを前モデルと共通化していることや、ノイズキャンセリング機能を省略していることなどが挙げられる。
デザインは、スクエアなフォルムで無駄がない。カラーはブラックとホワイトの2色でいかにも同社らしい質実剛健な印象だ。
バッテリーの持続時間は、イヤホン単体で最大9時間、ケース併用で最大27時間。合計24時間以上の持続時間が必要とされる現在のトレンドにも合致しており、急速充電にも対応している。マイクは片側ふたつずつ搭載され通話時の品質を担保し、IPX4防水や片側での独立使用機能も採用する。
このように機能的な完成度が高いモデルだが、本機最大の魅力は音のよさだ。結論から言うと、この価格帯のトップグループに入っている。
アステル&ケルンのDAP「KAN」を使用し、aptXによるブルートゥース接続で試聴した。ダイアナ・クラール「ディス・ドリーム〜」を再生、一聴して帯域バランスがアキュレイトだ。高域の鋭さが少なく、分解能の高さでしっかりと聴かせる。ヴォーカルとピアノの質感は忠実で、音色的に少し色艶がつく。低域は迫力よりも質感で聴かせるなど、本質的な音のよさが印象的だった。