クリエイティブメディアの「Creative SXFI CARRIER」は、ドルビーアトモスに対応したサウンドバーの高級モデル。ドルビーアトモス音声の映画はもちろんだが、テレビ放送やゲーム、音楽などもアップミックスが可能で、高さ方向も感じられるような臨場感溢れるサウンドで楽しめるようになる。ここでは、同機を自宅に長期借用してさまざまなコンテンツを再生。そのイマーシブサウンドを体験してみた。第1回めは、この夏大注目のスポーツ編をお届けしたい。
まずはCreative SXFI CARRIERについておさらいしよう。本機は、サウンドバーとサブウーファーがセットになった2ピース構成のスピーカーシステムで、サウンドバーの横幅は約88cm。最近増えてきているコンパクトな製品と比べると大型で、60インチを超えるような大画面の薄型テレビとの組み合わせにも対応するモデルとなっている。
サウンドバー
クリエイティブメディア
Creative SXFI CARRIER
オープン価格(直販価格¥120,000 税込)
クリエイティブメディアが、Dolby Laboratoriesと共同開発を行なったサウンドバー。サウンドバー本体には7基のスピーカーユニットが搭載されており、ドルビーアトモスの5.1.2再生が可能となっている。ステレオや5.1chサラウンドの音声をアップミックスすることもでき、高さ方向も感じられるサウンドで楽めるようになる。また、HDMIはHDMI2.1をサポートしているので、最新のゲーム機との接続も可能だ
Creative SXFI CARRIERの主な仕様
●スピーカー構成:5.1.2●スピーカー出力:250W RMS(サウンドバー)、200W RMS(サブウーファー)●接続端子:HDMI入力×2、HDMI出力×1(eARC対応)、デジタル音声入力(光)、USB Type-C、アナログ音声入力(3.5mmステレオ)、SXFI出力(USB Type-A)、サブウーファー出力(3.5mm3極)、ヘッドフォン出力(3.5mmステレオ)●寸法:W880×H76×D128mm(サウンドバー部)、W225×H450×D430mm(サブウーファー部)●質量:約3.6kg(サウンドバー部)、約12.8kg(サブウーファー部)
入出力端子は、HDMI入力×2、HDMI出力(eARC対応)をはじめ、光デジタル音声入力、USBオーディオ入力(USB Type-C)、アナログ入力と充実し、さまざまな機器との組み合わせも可能。また、HDMI入力は最大8K/30pまでのパススルーが行なえ、HDR10/HDR10+/Dolby VisonのHDR信号もサポートする。最新の映像コンテンツにもしっかりと対応している。
このほか、同社独自のヘッドホンサラウンド技術「SXFI」を採用したワイヤレスUSBヘッドホン「Creative SXFI THEATER」を接続できるSXFI用USB出力も備えている。これを使えば、テレビ放送をはじめ、Creative SXFI CARRIERに入力した音声をヘッドホンで、しかも立体的なサラウンドで楽しめるのだ。
薄型テレビとの接続はHDMIケーブル1本でOKだし、サブウーファーもワイヤレス接続なので結線の手間は最小限。テレビを置くためのAVラックにサウンドバーを載せ、サブウーファーはラックの端にセットした。サイズはやや大柄だが、接続や設置は簡単だ。これで準備はほぼ完了だが、SXFI CARRIERを存分に楽しみたいなら、スマホ用アプリの「Creative app」をインストールしよう。これを使えばスマホで手軽に操作できるほか、細かなサウンド設定も行なるようになる。
アプリにある「キャリブレーション」がサウンド設定だ。「距離」の項目では、視聴位置からサウンドバーやサブウーファーまでの距離や天井高などを入力する。これをきちんと測って入力することで、設置した環境に適したサラウンド再現ができるようになる。ドルビーアトモスのような立体的なサラウンドを楽しむならば、この設定はぜひ行ないたい。
また、「バス」の項目では、サブウーファーの音量を調整できる。サウンドバーの再生音量に合わせて好ましい低音になるように調整しよう。小さな音で再生するときは、サブウーファーの音量を少し大きめにすると、小音量でも迫力のある低音が楽しめる。これはスマホでいつでも調整できるので、聴いている時の音量に合わせてこまめに調整するといいだろう。
試聴ではまず、常設している120インチのスクリーンと組み合わせてみた。BDレコーダーのHDMI音声出力を、Creative SXFI CARRIER のHDMI入力に接続すれば、BDレコーダーで録画したテレビ番組や放送中の番組の音声が再生できる(筆者は、HDMI音声出力の設定をコンテンツごとに分けていて、パッケージソフトと映像配信(VOD)はビットストリーム出力、放送はリニアPCM変換出力としている)。今回のお題である“スポーツ番組”は、やはり画面サイズは大きいほどいい。果たして、サウンドバーで120インチサイズの大画面に負けないサウンドは楽しめるだろうか。
部屋中が歓声で満たされる! ステレオ音声でもかなりの臨場感
まずは、今や大注目の大谷選手が出場したメジャーリーグの中継を見た。試合開始前のアナハイム・エンジェルス・スタジアムの様子が映し出された。放送の音声はステレオだが、Creative SXFI CARRIERにはいくつかのサウンドモードが用意されていて、ステレオ音声でもドルビーアトモスに近い広々とした音場を楽しめる。
サウンドモードには、映画向きの「ムービー」、音楽向きの「ミュージック」、深夜用の「夜間」、ピュアオーディオ志向の「ニュートラル」などがある。これらをコンテンツの種類や好みに合わせて選ぶといいだろう。ここでおススメなのは、「SuperWide」。ステレオ音声を3次元的なサラウンドにアップミックスしてくれるモードだ。
比較のためにまずは「ニュートラル」で再生すると、ステレオ音声そのままに近い再現となり、アナウンスの声や歓声などはすべて前方から聴こえてくる。薄型テレビならばちょうどいい広がり感だが、120インチのスクリーンの映像だと、やや音の広がりが小さく感じられる。そこで「SuperWide」に切り替えると、音場が一気に広がる。観客席からの声は左右に広がるどころか、自分を取り囲むように部屋中に響くようになり、まさしく観客席から見ているような感覚になる。それでいて、選手紹介などのアナウンサーの声はしっかりと中央から聴こえてくる。この声もサウンドバーのある画面の下から出ているのではなく、スタジアムの様子を映している映像から聴こえてくる感じになる。こうした高さ方向の再現までを可能にしてしまうのが、Creative SXFI CARRIERの大きな魅力だ。
その秘密は、サウンドバーに内蔵された合計7個のスピーカー。前方に3個、左右の側面に各1個、斜め上を向いた上部のスピーカーが左右各1個となっている。ドルビーラボラトリーズと共同開発し、これまでのサウンドバー開発の経験やオーディオ技術を活かして、最適な配置を検討した結果だそうだ。これにより、ドルビーアトモスならば5.1.2構成のサラウンド再生を実現できるし、ステレオ音声などでも、アップミックス機能によって5.1.2構成に近い音場で再現することができるのだ。
大谷選手が出場すると、ワッと歓声が大きくなるのは同じ日本人としてうれしい気持ちになるし、なによりアメリカに行って観戦している感じが強く味わえる。いつものテレビ中継とは段違いの面白さだ。
このほか、日本のプロ野球中継や、テニス大会「ウィンブルドン2021」なども見たが、同じスポーツというジャンルであっても、競技種目やスタジアム(会場)の違いによって、現場の雰囲気(音響)や歓声の聴こえ方が異なるのが、よく分かった(聴き分けられた)。テニス大会では、観衆の声援以上に、テニスボールを打つときの選手の声がよく聴こえてくるし、ボールを打つ音、コートに跳ね返る音などもよく響く。いずれもステレオ音声だが、これらがなかなか豊かなサラウンド音声で再現され、包まれるような歓声とともに試合を応援してしまった。
スポーツ中継もサラウンドで楽しみたいコンテンツの代表格!
Creative SXFI CARRIERで東京2020大会を見れば、さらに盛り上がるはず
サラウンドというと、映画を楽しむものと思われがちだが、実はスポーツ中継もサラウンド音声と相性のよいコンテンツの代表格だ。プロ野球やJリーグのサッカーなど、数多くのスポーツ中継も、Creative SXFI CARRIERのような本格的なサラウンドシステムがあれば、自宅での観戦でもその場にいるような感覚で楽しめる。広いスタジアムの歓声や屋内競技ならではの音の響きなど、サラウンドで楽しむと臨場感が倍増する。
現在開催中の東京2020大会は、開会式のほかいくつかの試合を見たが、NHK BS4Kでは5.1ch音声で臨場感も抜群(BS4KはMPEG4 AAC 5.1ch音声のため、再生機器のHDMI音声出力はマルチチャンネルリニアPCMに変換して出力している)。さまざまな音楽とともに入場する選手たちの様子もじっくりと楽しめたし、注目していた柔道、競泳といった競技も臨場感豊かに味わえた。無観客は残念だが、Creative SXFI CARRIERがあると、テレビ観戦であってもかなりの臨場感が味わえて、とても楽しかった。
第2回(動画配信・アニメ編)はコチラ
関連記事