高精度な木工CNCによって複雑な形状に加工されたという大型の木製ハウジングが特徴的なヘッドホン。一見、重そうだが、本体重量は337g、手にとってみると、その軽さに驚かされる。実際に装着してみても、適度な側圧で、両耳をすっぽりと覆い包み、重さによるストレスはほとんど感じさせない。これなら1時間、2時間の連続再生も苦にならないだろう。
ドライバーは50mm径のダイナミック型で、特殊なナノ粒子コーティングを表面に施したトポロジー振動板が特徴的だ。そのサイズと素材の合わせ技により、ダイアフラム(振動板)の歪みをより細かく制御、除去し、理想に近い音響特性を獲得している。
その恩恵はもちろんワイヤード接続、ワイヤレス接続ともに得られるが、特に解像力が後退する傾向になりがちな後者について、より明確な効果が感じやすいという。ちなみに接続はアナログ有線、および付属BlueMiniモジュールを使用したBluetooth/USB TypeC接続に対応している。
まずワイヤード接続で「THE FIRST TAKE」(YouTube)の「優しい彗星/YOASOBI」を再生してみたが、この声がいい。ヘッドホンのメカノイズや衣擦れの音、息づかいと、一発撮りならではの緊張感を感じさせつつ、ソッと歌い始めるが、その声が静寂の空間に染み込むように拡がっていく様子が実に生々しい。
独特の世界観を感じさせるYOASOBIのヴォーカルikuraだが、息の流れのようなものを感じさせる透明感に溢れたサウンドで、中高音域のファルセット(裏声)の拡がりもざらつくことなく、微妙なニュアンス、微細な音階の変化までしっかりと感じとることができた。
HEADPHONE
HIFIMAN
HE-R10 Dynamic Version
¥138,800(税込)
● 型式:密閉型ヘッドホン
● 使用ドライバー:50mmダイナミックドライバー
● インピーダンス:32Ω
● 質量:337g
● 付属品:接続用ケーブル×3(3.5mmミニフォーンプラグ[1.5m]、6.3mm標準プラグ[3m]、XLRバランス[3m])、Bluetooth/USB接続アダプター(BlueMini[AAC/SBC/LDAC/aptX/aptX HD])
● 問合せ先:(株)HIFIMAN JAPAN info@hifiman.jp
付属アダプターとの連携で高音質Bluetooth再生を実現
続いてBlueMiniモジュールを用いたBluetooth接続に変更。コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX HD、さらにLDACまでサポートしているが、今回はaptXで試聴している。ワイヤード接続に比べると、わずかながら優しいタッチの音調にはなるが、基本的な帯域バランスに大きな変化はなく、ikuraの息づかいを感じさせる歌声も、鮮度が落ちることなく、体全体に響きわたる。
トポロジー振動板の恩恵なのかどうか、判断するのは難しいが、一般的なBluetooth接続に比べると、情報量のダメージは明らかに少なく、ストレスのない空間の拡がりを満喫することができた。
USB DAC/Bluetooth/HEADPHONE AMP
HIFIMAN
HM1000
¥66,000(税込)
先頃発表されたHIFIMANのポータブルUSB DAC/ヘッドホンアンプHM1000。Bluetooth接続やUSB TypeCなど多彩な機能を備えた製品だ。今回は、スマホとつなぎDAC機能を利用してハイレゾ音源を含むストリーミング音源を中心に試聴してみたが、その効能は歴然。無音の空間にスネアドラムの濃い響きが勢いよく張り出し、音の軸がぶれない。スマホとのダイレクト接続に比べると、ボリュウム感に富んだ落ち着きのあるサウンドで、特に潤いのある声の表情が新鮮だ。特に女性ヴォーカルがしっとりとして、耳に心地いい。HE-R10 Dynamic Versionの潜在能力の高さを再確認できた。(藤原)