テクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット
サエクの新製品SBX10Rは、ダイレクトドライブ方式ターンテーブルのテクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット。その重量は35.8kgもある。もちろん、SP-10Rを含まないキャビネット単体の数値だ。この重さは無垢のS303ステンレススチール鋼だからこそで、アルミニウム製なら大幅に軽くなるはず。
すべての面は丁寧なフライス加工で平面に仕上げられており、SP-10Rが収まる丸穴は放電ワイヤー加工で開けられている。製造はWE4700トーンアームと同じく、東京・国立の内野精工によるもの。筐体の奥側と左側にはトーンアームを増設するためのネジ穴があり、別売で2種類の専用ブラケットが用意されている。
フォノカートリッジにフェーズメーションPP2000を使いWE4700トーンアームと組み合わせて試聴したが、その音は鮮烈極まりない躍動感に満ちている。フォノカートリッジの発電エネルギーがまったく損なわれることなく、振動伝達系が圧倒的な質量と硬さで支えられていることが実感できる音なのだ。持参したアナログ盤は、いずれも一音一音がキリリと立った明確さが印象的で、しかもローエンドまで逞しさを感じさせる重厚さも特筆できる。アンセルメ指揮「三角帽子」やデイヴ・グルーシンのダイレクト盤は、これまで聴いたことのない溌溂とした演奏だった。SBX10Rは、サエクらしさを体現した強烈な個性派製品といえる。私は拍手喝采を贈りたい。