オーディオテクニカから真空管を搭載したバランス対応ヘッドフォンアンプのAT-BHA100と、高性能DAC素子を採用するD/AコンバーターのAT-DAC100が登場。同社は超弩級のAT-HA5050H(国内未発売)や小型のAT-HA22TUBE(生産完了)で真空管を扱うノウハウを蓄積してきた。
Headphone Amplifier
オーディオテクニカ
AT-BHA100
オープン価格(実勢価格12万円前後)
●ヘッドフォン出力:4系統(Φ6.3mm標準フォーン×2、XLR、Φ4.4mmバランス)
●LINE出力:1系統(RCAアンバランス)
●LINE入力:2系統(RCAアンバランス、XLRバランス)
●適合インピーダンス:16Ω〜600Ω
●最大出力:〜680mW(16Ω、標準フォーン)、〜1,500mW(16Ω、XLR)
●使用真空管:ECC83S(JJ Electronic)×4
●寸法/重量:W210×H44×D266mm/約1.8kg
●備考:縦置き用スタンドを付属
●問合せ先:(株)オーディオテクニカ TEL. 0120(773)417
新製品のAT-BHA100は、プリアンプ回路に双3極管ECC83Sを4本も投入するという贅沢な布陣である。ヘッドフォンを駆動する出力回路には、ハイインピーダンスの負荷にも対応するパワートランジスターを使用している。両機は縦置きにも対応しており、試聴はその縦置き状態で行なっている。
一般的なヘッドフォンジャックによる接続では2つの出力端子があり、それぞれ音量が調整できる。すなわち、シングルエンドのステレオパワーアンプが2系統あるわけだ。バランス出力ではブリッジ接続に転じて、BTL接続の1系統ステレオパワーアンプとなる。4本の真空管ECC83Sは、それぞれ左右のホット用とコールド用に使われている。本機はACアダプターによる電源供給(15VDC/2.4A)を行なうのだが、本体内部には真空管用と左右チャンネルのパワーアンプ用に独立したレギュレーター回路を装備している。
D/A Converter
AT-DAC100
オープン価格(実勢価格8万5,000円前後)
●アナログ出力:1系統(RCAアンバランス)
●デジタル入力:4系統(RCA同軸、TOS光、USB-B、USB-C)
●最大サンプリング周波数/ビット数:〜768kHz/32bit(PCM)、〜22.4MHz/1bit(DSD)
●寸法/重量:W210×H44×D135mm/約1kg
●備考:縦置き用スタンドを付属
ハイレゾ対応DACであるAT-DAC100は、2系統のUSB接続(B端子とUSBタイプC)で768kHz/32ビットのPCMと22.6MHzのDSD(DSD512)に対応するハイスペック機。DAC素子は、AKMのAK4452VNということだ。奥行きは前述のヘッドフォンアンプの半分ほどで、同等のACアダプター電源が使われている。
両機の音は本誌試聴室で聴いた。ヘッドフォンには同社最高級オープンエアーのATH-ADX5000を採用。別売のバランスケーブルAT-B1XA/3.0も用意した。
最初に聴いたのは両機の組合せだ。この場合はRCA端子による接続で、主にシングルエンド出力の音を聴いている。CDリッピングの手嶌 葵「月のぬくもり」では、音の爽やかさと声色に上品さが宿った質感に惹かれる。河村尚子が弾くベートーヴェンも音抜けが良好で、DSD録音らしい鮮度の高さも漏らさず表現できている。ビッグ・ファット・バンドの新作「ゴーディアン・ノット」は、音数の多彩さと、ハイレゾ音源(96kHz/24ビット)らしいワイドレンジ感が爽快だ。
ここでDACをアキュフェーズのDC950に交換すると、真空管による音の語り口の上質さが客観的に把握できるようになった。特にバランス接続〜バランス出力にした音は駆動力に優れており、ビッグバンドを聴くと制動感がアップしたことがわかる。シングルエンド出力の音も品位が高く、個人的には好き嫌いの範疇かと思う。手嶌 葵はシングルエンド出力の清楚な雰囲気が印象的だった。
AT-BHA100とAT-DAC100は、小型ながらも本格的な音を聴かせてくれる。両機とも完成度の高さを感じさせた。