超軽量振動板(振動幕)ならではの応答性に優れた透明感のあるサウンド
久しぶりの静電型である。マーティン・ローガンは、スピーカーらしからぬルックスと水平指向性の広い静電パネルで一世を風靡した米国発祥のブランド。金属コーティングを施した透明振動幕を縦方向に張ることで湾曲面を構築している、ひじょうに巧妙な設計だ。現在は研究開発を米国で行ない、カナダで生産されている。ここで紹介するEM-ESL Xはスリムな静電パネルが特徴で、前後に配した約20㎝口径のダイナミック型ウーファーが400Hz以下の低音域を担当する、ハイブリッド構成となっている。管球王国試聴室で音を鳴らしてみた。
超軽量振動板(振動幕)ならではの応答性に優れた音には透明感が宿っており、CD音源で聴く手嶌 葵「月のぬくもり」は、清楚な音の雰囲気を能弁に語り掛けてくる。同じくCD音源のイーグルス「ホテル・カリフォルニア」では、ライヴ収録ならではの観客のざわめきや口笛などの音を疎かにせず、キレの素早い音数の多さで魅了する。最初はパワーアンプのエアータイトATM3を8Ωで繋いでいたが、それを4Ωに変更することでわずかに控えめだった低音の量感がうまく確保できてきた。SACDで聴くマスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、ソプラノやテナーを筆頭にする歌声の通りがよく、やはり静電型らしい長所が感じられる。
EM-ESL Xは細身のスピーカーなので、個人的には6畳間くらいの空間で鳴らしてみたい。静電型らしい個性を発揮する美音といえる。