マランツのオーディオ製品というと、中央に丸窓があったり星形の通電表示灯があったりするけれどむやみに飾らず、ちょっと古風にしてあか抜けた意匠が身上だ。その外観が大きく変わり型番系列も変わった「30」シリーズが登場した。左右対称配置の安定感と有機EL表示窓の大きさに特徴があり、両脇の干渉縞風の光彩模様は工芸品の印象を与える。しかも、最新の技術要素を小ぶりの筐体にたっぷり注ぎ込んだ意欲作なのである。

しっかりと物量を投じた
本格派SACDプレーヤー

 まずはSACD 30nから。SACDドライブを搭載したプレーヤーであり、各種ハイレゾ音源、圧縮音源のネットワーク再生、またディスクからの再生が可能。USB DAC機能も充実している。さらにはAirPlay2、マランツ独自の操作環境HEOS(ヒオス)など、使い勝手にもぬかりなく配慮している。

画像: しっかりと物量を投じた 本格派SACDプレーヤー

SACD/CD PLAYER
MARANTZ SACD 30n  ¥270,000+税
●再生可能ディスク:SACD、CD、DVD-R/RW他
●接続端子:アナログ音声出力2系統(RCA固定/可変)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、
ヘッドホン出力1系統、デジタル音声入力3系統(同軸、光×2)、USBタイプA 1系統、USBタイプB 1系統、LAN1系統 他
●対応サンプリング周波数/量子化ビット数(USBタイプB):〜384KHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz/1ビット(DSD)
●寸法/質量:W443×H130×D424mm/13.7kg

画像: A/B両タイプのUSB端子(Bタイプは最大DSD11.2MHz、PCM384kHz/32ビットまで再生可能)やネットワーク再生用のRJ45端子、無線LAN(Wi-Fi)/Bluetooth用アンテナなど、デジタルファイル再生のための機能が充実

A/B両タイプのUSB端子(Bタイプは最大DSD11.2MHz、PCM384kHz/32ビットまで再生可能)やネットワーク再生用のRJ45端子、無線LAN(Wi-Fi)/Bluetooth用アンテナなど、デジタルファイル再生のための機能が充実

 ただし、こういう当世風の機能を確認したところで本機の凄みは理解出来ない。まずSACDプレーヤーとしては、SA12のドライブメカと同じ回路、部品を搭載したSACDM 3Lが注目される。ディスクローダーなど一部はコストを削減しているけれど、充分な物量を投じた逸品だ。D/Aコンバーターも看板機種であるSA10と同一の回路構成を採用したMMM(マランツ・ミュージカル・マスタリング)を搭載。これはすべてのPCM音声データをDSD(1ビット系データストリーム)に変換し、アナログ信号に変換する全体をマランツ独自の回路とデバイスで実現したもの。音声系のクロックにしても低位相ノイズ型の水晶発振子を採用。また高性能のジッタークリーナーや、アナログ音声出力系については伝統の完全ディスクリート部品によるモジュール構成であるHDAMを採用している。高性能アナログラインアンプをICではなく個別部品で密集配置するというマランツ最高級機にも投入されている高音質志向の要技術だ。

 AirPlay2、Bluetoothなど携帯端末とのリンクは最新の仕様。アマゾンアレクサ搭載デバイスからの音声コントロールにも対応。

高密度にして大迫力の音
驚異の高性能プリメインアンプ

 MODEL 30は近年マランツが起用し続けているハイペックスのデジタルパワーアンプNC500を採用。小サイズなのに200W(4Ω)という驚異的なパワーの持ち主だ。しかもダンピングファクター値500を誇っている。これは大型スピーカーユニットの制動力にかかわる性能値だ。通常のデジタルアンプでは出力端からアナログNFBを掛けにくいのでこの値はずっと低いものだ。

画像: 高密度にして大迫力の音 驚異の高性能プリメインアンプ

INTEGRATED AMPLIFIER
MARANTZ MODEL 30 ¥270,000+税
●出力:200W×2(4Ω)、100W×2(8Ω)
●接続端子:アナログ音声入力5系統(RCA)、フォノ入力1系統(MM/MC)、パワーアンプ入力1系統(RCA)、プリアウト1系統(RCA)、REC出力1系統(RCA)、ヘッドホン出力1系統、マランツリモートバス(RC-5)入出力1系統
●寸法/質量:W443×H130×D431mm/14.6kg
●問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター TEL 0570(666)112

画像: アンバランス回路構成機PM-12をベースに開発されているため、入出力端子はアンバランスのみ。MM/MC両対応のフォノを装備し、フォノ入力はMM用イコライザーアンプとMC用ヘッドアンプを組み合わせたフルディスクリート型

アンバランス回路構成機PM-12をベースに開発されているため、入出力端子はアンバランスのみ。MM/MC両対応のフォノを装備し、フォノ入力はMM用イコライザーアンプとMC用ヘッドアンプを組み合わせたフルディスクリート型

 またパワーアンプ部専用のスイッチング電源を搭載しているのも特徴。出力音声に応じた電流の変化が大きいのでデジタルアンプ部に独立した電源をあてがう意義は大きい。プリアンプ部はトロイダル電源トランスを使用したアナログ電源だ。純銅削り出しスピーカー端子、真鍮削り出しRCA端子など独自の端子を搭載しているのにも注目したい。

 SACDやCDの音質はよく磨かれ、繊細にして濃密な楽音が三次元的に展開する音場を十全に充たしている。しかも個々の音像が彫り込まれ、各パートの前後の重なり具合がきれいに透視できるのが爽快だ。室内オーケストラや小編成バロックアンサンブルなど瑞々しい響きと音色美だし、ゲルギエフ指揮の『春の祭典』など、大型ウーファーをよく制動して暗騒音のレベルからCDの限界を感じさせるピークまで、実に表現の幅が広い。ブラインドテストしたら、このサイズのアンプとはまず分からないだろう。特に感嘆したのはボサノバ系の声の成熟味や官能美だ。優秀な過渡特性にわずかにマランツ流の香味をそえたというべきか。

 ネットワーク系の音だが、ストリーミング配信はやはりノイズにまとわりつかれて単調になりがちだ。本命は手元にデータがあるミュージックサーバー(NAS)経由でのデジタルファイル再生だ。ハイレゾではない音源もビット数が増えたような柔軟性と瞬発力が印象深い。そしてUSB DACは鮮度や分解能が一番秀でている。高純度にして高密度。瞬発力の凄み、大オーケストラの怒濤の押し出し、そしてわずか一挺のバロックリュート(演奏:O.M.ドンボア)が天空に音の星座を結ぶ壮観にめまいがするほどだ。これは、デジタルアンプに疑念をお持ちの方も万難を排して試聴してほしい傑作だ。

HEOS(ヒオス)を使った多彩な音楽再生

HEOS(ヒオス)はD&Mグループ独自のネットワークオーディオ機能。無料のアプリをスマートフォンやタブレットにダウンロードすることで、本体のセットアップ、操作などが手軽に行なえる。Amazon Music HDやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービス、スマートフォン・タブレット内の音楽ファイル、さらにNASやUSBメモリーに保存されている音楽ファイルと、さまざまなデータをひとつのAV機器で手軽に聴けるシームレスな使い勝手のよさが魅力だ。SACD 30nで再生中の音楽を同一のネットワークに接続した他のHEOSデバイスに配信することもできる

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