イギリスの名門スピーカーメーカー、モニターオーディオのブロンズシリーズがフルモデルチェンジした。現在、同社スピーカーの基本ラインナップは上位クラスからプラチナム、ゴールド、シルバー、とあり、ブロンズシリーズはもっともスタンダードな位置づけ。モニターオーディオはこの 4シリーズを1年ごとに1シリーズ刷新しているのだが、今年はブロンズシリーズが新しく6世代目になったというわけだ。
売れ筋シリーズらしく、ラインナップは全7種類と豊富である。ブックシェルフスピーカーのブロンズ50-6Gとブロンズ100-6G。トールボーイスピーカーのブロンズ200-6Gとブロンズ500-6G。センタースピーカーのブロンズC150-6G。サブウーファーのブロンズW10-6G(以下、『-6G』は省略)。そしてサラウンド用スピーカーのブロンズFX-6Gに加え、今回はイネーブルドやハイトスピーカーとして使えるブロンズAMS-6Gも加わり、ドルビーアトモス/DTS:Xなどのイマーシブサウンドにも対応可能な万全のラインナップとなった。
シリーズに共通する特徴として、まず目につくのは新世代に進化したキャビネットデザインだ。各ユニットの配置などベーシックな部分でのデザインに統一感があり、サテン仕上げされたフロントバッフルの質感も秀逸だ。
限られたコストの中で洗練された外観デザインを施しているのだが、象徴的なのがトゥイーター部に備えられたUD(Uniform Dispersion)ウェーブガイドである。このガイドにより、ブロンズシリーズの特徴であるアルミ・マグネシウム合金にセラミック処理を施した、C-CAM Goldドームトゥイーターの放射特性をコントロールし、クロスオーバー付近の帯域の指向性と、ミッドレンジ/ウーファーとのタイムアライメント特性を向上させている。
そのミッドレンジ/ウーファーのユニット周りも進化している。コーン形状は刷新され、DCM(Damped Concentric Mode)技術を採用した新C-CAMドライバーを採用した。さらにドライバーユニットをキャビネット後方よりテンションロッド1本で固定し、長期間安定した固定と性能を実現するボルト・スルー・ドライバー・デザインとするなど、前モデルの長所はそのままに各所が刷新されている。
SPEAKER SYSTEM
Monitor Audio
Bronze-6G Series
●Bronze-6Gの新製品仕様一覧
型番 | 価格 | 型式 | 使用ユニット | 出力音圧レベル | クロス オーバー 周波数 | インピー ダンス | 寸法/質量 |
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Bronze 100-6G | ¥75,000+税 (ペア) | 2ウェイ2スピーカー・ バスレフ型 | 25㎜ドーム型トゥイーター 200㎜コーン型ウーファー×2 | 87㏈ / 2.83V/m | 2.2kHz | 8Ω | W231×H376× D328㎜ / 7.8㎏ |
Bronze 200-6G | ¥140,000+税 (ペア) | 3ウェイ3スピーカー・ バスレフ型 | 25㎜ドーム型トゥイーター 140㎜コーン型ミッドレンジ 140㎜コーン型ウーファー | 88㏈ / 2.83V/m | 700Hz / 2.4kHz | 8Ω | W229×H909× D304㎜ / 12.8㎏ |
Bronze 500-6G | ¥175,000+税 (ペア) | 3ウェイ3スピーカー・ バスレフ型 | 25㎜ドーム型トゥイーター 200㎜コーン型ミッドレンジ 140㎜コーン型ウーファー | 90㏈ / 2.83V/m | 550Hz / 2.7kHz | 8Ω | W294×H974× D364㎜ / 18㎏ |
Bronze C150-6G | ¥45,000+税 | 2ウェイ3スピーカー・ 密閉型 | 25㎜ドーム型トゥイーター 140㎜コーン型ウーファー×2 | 88㏈ / 2.83V/m | 2.7kHz | 8Ω | W451×H166× D228㎜ / 7㎏ |
Bronze W10-6G | ¥120,000+税 | アンプ内蔵サブ ウーファー・密閉型 | 250㎜コーン型ウーファー | - | - | - | W321×H366× D364㎜ / 13.4㎏ |
3つのモデルを2chで比較。価格を超える音に感嘆
試聴は本誌視聴室のリファレンスシステムを用いて、MacBook ProとデノンのSACDプレーヤーDCD-SX1リミテッドのUSBデジタル入力をエイム社製のUSBケーブルで接続。このシステムで、ハイレゾ楽曲ファイルから最新のポップス音源、ザ・ウィークエンド「ブラインディング・ライツ」と、オーディオファイルに人気急上昇中のフルオーケストラで演奏される映画音楽、ジョン・ウィリアムズ『ライヴ・イン・ウィーン』を再生した。
まずは基本となるステレオ再生から。スピーカーセッティングは、左右のスピーカー間を約2.5mとして若干内ぶりに配置した。また、今回のモデルチェンジで全モデルがバイワイヤリングに対応したので、スピーカーケーブルはウーファー側に接続している。
はじめに試聴したブロンズ100は、前モデルより大口径となった200㎜ウーファーと25㎜トゥイーターを搭載したリアバスレフ型のブックシェルフスピーカー。手頃なサイズながら、まずは低音域のボリュウムの豊かさとダンピングのよさに感心する。トゥイーターとのつながりもシームレスで、過度な誇張とは無縁の正統派サウンド。かなりコストパフォーマンスが高い。ザ・ウィークエンドのヴォーカルは口元の輪郭が明瞭な上、バックミュージックとヴォーカルの位置関係、つまり位相表現も的確に再生する。ジョン・ウィリアムズ「帝国のマーチ」は絶対的な低域の伸びこそ後から聞いた上位モデルに譲るものの、サウンドステージには広がりと奥行があり聴き応えがある。
トールボーイスピーカーのブロンズ200は、140㎜のウーファー/ミッドレンジドライバーと25㎜トゥイーターを搭載した3ウェイ・リアバスレフのトールボーイ型スピーカー。先に聴いたブロンズ100の印象もよかったが、3ウェイ化された恩恵は大きく、一聴して周波数レンジが広くなるのがわかる。ヴォーカルは生々しくて浸透感が増すし、140㎜のバスドライバーはキックドラムやベースにスピード感を与えてくれる。比較的安価なシリーズの中で、ブックシェルフ型もラインナップされる場合、時としてトールボーイスピーカーは中低域のダンピングがブックシェルフタイプより悪くなることもあるが、本モデルは、キャビネットのつくりがよいためか、付帯音が少なく大変印象がよい。
ブロンズ500はシリーズ最大のトールボーイスピーカーで、200㎜のウーファー/ミッドレンジドライバーと25㎜トゥイーターを搭載した3ウェイモデルだ。本機でもシリーズに共通して感じるクセのない帯域バランスと適度な押し出しある音はそのまま。ユニット数と口径、シリーズ最大のキャビネットサイズを生かし、絶対的な情報量向上を果たし、リアリティある低域を手に入れた。ザ・ウィークエンドはバックに配置された楽器が本来持っている質感の表現力が高く、音像の実体感も大きく上がり、リアルなヴォーカルが一歩前へ出てくる。ジョン・ウィリアムズは、大編成のオーケストラの魅力が充分に伝わる壮大な表現。録音会場の音響条件なども明瞭に再現される。音場表現力は、この価格帯のスピーカーでは珍しいくらい高い。
7.1ch再生ではレースの細かな音を活写する
最後は、デノンのAVセンターAVC-X8500Hを使って7.1ch再生を試した。フロントにブロンズ500、センターに同C150、サラウンドに同200、サラウンドバックに同100、サブウーファーに同W10を用いる。
『フォードvsフェラーリ』のチャプター1、夜間のレースシーンでは、車内に充満するエンジンのメカノイズが絶対的な再生能力を聴き分けるポイントとなるが、ピストンがエンジンブロックを擦りタペットが高速振動する1970年代のレーシングエンジンのサウンドがリアルに伝わってくる。この価格帯のスピーカーではなかなか聴けないであろう分解能とリアルさがある音だ。さらにサーキットを300㎞オーバーで駆け抜ける車両の移動感も明瞭で、サラウンドスピーカーとしての基本性能の高さを実感するし、センタースピーカーから聴こえるセリフもなかなか明瞭である。さらにチャプター21のマジックアワーの場面からテスト走行中の爆発事故が描かれる箇所は、本作品中もっとも低域の再生能力が試されるシーンで、サブウーファーの能力が赤裸々になるが、ブロンズW10は爆発の絶対的な迫力を素早い立ち上がりとリアリティのある音でしっかりと表現してくれたのが嬉しい。
また他にもよいと思ったポイントは、特にブロンズ50とブロンズ200はキャビネットの横幅が約23㎝と圧迫感がなく場所を取らないので、室内空間を稼ぎつつ本格的なサラウンド再生が楽しめそうだということ。HiViがリファレンスで使用するプラチナムシリーズと比べて、コンパクトに視聴室に収まっていた。
今回は最新のポップスとクラシック、そしてホームシアター用途として使用したが、キャビネットデザインから音質まで前モデルから多くの進化を遂げており、どんな音楽/映画ソースを鳴らしても不満がなかった。
1972年の創業以来、同社のスピーカーは、キャビネット、スピーカーユニット、ネットワークまで自社生産することで、コストメリットを最大に発揮している。特にブロンズシリーズは、上位モデルの技術が数多くスライド投入されることを含め、その恩恵を大きく受けているように感じた。他社にとってベンチマークとなるような優れた音質と価格設定は、本シリーズの大きな魅力のひとつと言える。また、イネーブルドスピーカーも用意されていることは天井にトップスピーカーが付けられないビジュアルファンにとって朗報だろう。
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