克明優美な音色表現に思わず驚く
エラックの新製品で、Debut B6.2(本邦では未発売)をベースにしたスペシャルヴァージョン。ただし台数限定などではないレギュラーモデルである。Debut(デビュー)シリーズは、名称どおりホームオーディオ向けエラック・スピーカーの入門機だ。
スペシャルヴァージョンというと、なにか付加価値をつけたヴァージョンアップ版が思い浮かぶかもしれないが、当機はそうでなく、各部の設計をつぶさに見直した別の製品になっている。共通項は16.5㎝径ウーファーと2.5㎝径ソフトドームトゥイーターによる2ウェイということだけで、それらの仕様もエンクロージュアも異なる新設計。
いずれにせよ、Debutの系列なら真空管アンプによるドライブなど想定外だろうから、内心どうかなと思った。ちょっと以前に半導体アンプで聴いたDBR62の印象は反応が軽やかで堅すぎず緩すぎず。どちらかというと肩の凝らない、カジュアルなまとまりのよさを訴求した。それはエラックの新境地にちがいないが、つかいかたを誤ればドイツ流儀の骨格が細る可能性もありそうだから。
結果は意外にもだった。ヴォーカルやピアノの艶やかな響きがいっそう厚みを増すし、ウッドベースはいささかの箱鳴きをともなって膨らむにせよ、節度を保って心地よく弾む。そしてなにより驚いたのは弦楽器や木管の克明優美な音色表現。華麗というより優しくしなやかに、球の味をすんなり聴かせた。