オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。

画像: 以下の記事はHiVi2010年12月号に掲載されています

以下の記事はHiVi2010年12月号に掲載されています

輝かしき新世代デノン・トーン!
表現力豊かなマルチチャンネルサウンドだ

今秋は20万円台のAVセンターに各社の力作モデルが勢揃いした印象だが、その中でも一、二を争う魅力機が、本機「AVR-4311」。前号で詳しく紹介された創立100周年記念モデル「AVR-A100」のベースモデルだ。定格出力140W(8Ω)×9chアンプ構成の強力モデルで、サラウンドバックchを鳴らしながらフロントハイトchを加えるドルビープロロジックIIzやオーディシーDSX再生が楽しめる。ではその音の魅力に迫ってみよう。

 グロッシーブラック仕上げのAVR-A100は本機よりも約4万円高いが、その根拠としてパーツの違いが3つ挙げられる。インシュレーターの材質が本機が樹脂でA100が鋳鉄、スピーカーターミナルが本機は通常汎用品でA100が金メッキプラグ、ブロックコンデンサーが本機は通常品でA100がデノンオリジナルの特注品という具合だ。音質チューニングも異なるとのことだが、言ってみれば違いはそれだけで、回路や機能面に違いはまったくない。

 さて、これはあくまで個人的意見だが、ここ1〜2年、デノンAVセンターの音には何か迷いのようなものが感じられ、積極的に推す気になれなかった。今回じっくりと本機の音に触れ、ひと頃の迷いが完全に吹っ切れて新世代デノン・トーンが輝かしく刻印されている印象を受けた。うれしくなるくらい音がいいのだ。ここでは同社製ユニバーサルBDプレーヤー「DBP-4010UD」との組合せによるインプレッションをお届けする。

画像1: 輝かしき新世代デノン・トーン! 表現力豊かなマルチチャンネルサウンドだ

 2chの音をCDでチェック。メロディ・ガルドーの最新作をまずアナログ接続で聴いてみたが、キレとコクが両立したノーブルなサウンド、人肌の温もりを実感させる声や楽器のソノリティの豊かさに瞠目した。「ピュアダイレクト」ボタンをオンにすると、ノイズフロアが下がり、すっと音場の見通しがよくなる。同価格帯のプリメインアンプと比較しても引けをとらない、すばらしい音だ。同軸デジタル接続は音場の見通しが曖昧になる印象で、4010UDとの組合せではアナログ接続に及ばない。

 しかし、アナログ接続よりももっとよかったのが、DENON LINK接続。ヴォーカルのニュアンスの豊かさ、ドラムスの響きの厚さが格段に向上、音楽のスケールがより大きくなるのだ。外来ノイズに強いこのリアルタイム バランス・デジタル伝送のメリットを改めて実感した。さらにLANケーブルを、シールドに万全を期したエイム電子のNA1S010(¥18,900、1m)に変更すると、音の重心が下がり、力感としなやかさが増す印象。DENON LINK接続環境にある方は、ぜひ一度この音を体験してほしいと思う。

 なお、本機にはネットワーク・オーディオ機能が搭載されており、NASやPCに収められたデジタルファイルを読み出すことが可能。MP3やAAC、WAVの他、96kHz/24ビットまでのFLACの高音質ファイルが再生できる。

 早速グラフィック画面を見ながら本体のボタンでNASに収めてあったヴァルガの『コダーイ:
無伴奏チェロ・ソナタ』(96kHz/24ビット/FLAC、HQMストア)やイアン・ショウの『ケイス・オブ・ユー』(44.1kHz/24ビット/FLAC、リンレコーズ)等を聴いてみた。なるほどローレベルのニュアンスに富む表情豊かな音で、ハイレゾファイルの魅力が十全に引き出されていると思った。この秋の高級AVセンターの、デジタルファイル高音質競争にもおおいに注目したい。

画像2: 輝かしき新世代デノン・トーン! 表現力豊かなマルチチャンネルサウンドだ

高密度9.1chサラウンドで、至高の映像世界へ没入できる

 では、BD-ROMを用いてHDオーディオ・デコーデッドサウンドのチェックに移ろう。使ったのはドルビートゥルーHD収録の映画『アイ・アム・レジェンド』の冒頭部等。4010UDと本機をHDMI接続し、まず5.1chストレートデコードの音を聴いたが、腰の座った厚みと力感に満ちた音で、高さ方向の音場感の再現も見事。

 次にフロントハイトchを加えたPLIIz 7.1chとサラウンドバックchを加えたPLIIxCinema 7.1chを比較した。一聴して前者はスクリーンchの高さの表現が格段に充実することがわかる。5.1chでも充分と思っていたが、フロントハイトchを加えることで圧倒的に臨場感が高まるし、サラウンドchとの音のつながりも明らかに向上するのだ。後者は後方音場の密度感が厚くなり、音に取り囲まれて映画の世界に没入していける感触。どちらを取るかは好みだが、大画面スクリーンとの組合せでは前者の効果のほうがよりわかりやすいと思った。

 そして最後にフロントハイトchとサラウンドバックchを両方鳴らすPLIIz 9.1ch再生を試してみたが、サラウンド空間に「疎」がなくなり、水平・垂直両方向でみっちりと音が埋めつくされるようになる。アメリカンV8エンジンの咆哮も迫真的で、9ch駆動時でもピシリと音が安定している。本機の電源回路の優秀さを改めて実感した。

 エイム電子のLANケーブルで本機から4010UDにマスタークロックを伝送して同期運転する〈DENON LINK4th〉も試してみたが、この効果は誰の耳にも明らか。声や効果音の空間定位と静寂の表現がより明確になるので「あ、こんな音が入っていたんだ」という新発見が次々に出てくる。本機を購入するならDENON LINK4th対応プレーヤーとの組合せを断固お勧めしたい。

画像: 高密度9.1chサラウンドで、至高の映像世界へ没入できる

AV CENTER
DENON AVR-4311 ¥252,000 ※価格は発売時のもの
●寸法/質量:W434×H171×D414㎜/17.3㎏

This article is a sponsored article by
''.