ハイファイ機器を手掛けるサウンドマネージャーによる音づくり
サウンドバーがHiVi誌上でしっかり採り上げられることは少ないし、関心のある読者の方もそう多くはないかもしれないが、このDHT-S216はデノンのハイファイ機器を手がけるサウンドマネージャーが企画初期段階から関わった〝本気〟のサウンドバーだという。実売価格は2万3000円前後、パッと見はよくあるサウンドバーと何ら変わらない。そのパフォーマンスは評判通りなのか? 自宅の32型液晶テレビと組み合わせて、1週間ほど試用してみた。
ユニットは、25㎜トゥイーターと45㎜×90㎜楕円型ミッドレンジ、75㎜ウーファーを左右それぞれに1基ずつ。ウーファーは底面に下向きで取り付けられ、本体の両側面には開口部が大きめのバスレフポートを備えている(ポートは底面と背面にもあり)。振動の低減のために底面のインシュレーターを一般的なものよりも厚めの6㎜としたり、DSPを通過せず再生信号をダイレクトにアンプに送るPUREモードを搭載したりするところはデノンのハイファイ機器に通じるマナーと言える。890㎜という横幅は、だいたい49型から55型ぐらいのテレビと組み合わせてフィットするサイズ感だろう。
Hi-Fiマナーで作られたサウンドバーは
PUREモードで音の本領を発揮する
映画を観ても音楽を聴いても、本機の素性が一番よく活かされるのは2ch音声をPUREモードで再生した音だ。多くのサウンドバーのような定位の曖昧さや低域の不自然さを感じさせず、テレビの横に置かれた2chスピーカーで音を聴いている感覚に近い。
コーネリアスのBD『Mellow Waves Visuals』からMVの5.1ch音声をMUSICモードで再生すると、緻密にレイアウトされたサラウンドの再現性の高さがすぐにわかるが、音の間合いや演奏のダイナミズム、細部に込められたアレンジ面の仕かけをより生々しく聴き取ることができるのは、2ch音声をPUREモードで再生したとき。ドルビーアトモス収録の映画でも、作品によってはDTSバーチャル:X再生よりもPUREモード再生の方がセリフや劇伴が引き立つと感じた。
サウンドバーという製品企画のなかでしっかりデノンらしさを打ち出しているという点で、AVファンにも訴えるものがある意欲的な製品だ。