タイムロードは2月1日、東京・日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」にて、昨年12月に販売開始した同社オリジナルブランド「Architectura」(アーキテクチューラ)のスピーカーシステム「Alina」(アリーナ)の試聴会を開催した。

画像: 視聴システムのひとつ。パトスのプリメインとAlinaの組み合わせ

視聴システムのひとつ。パトスのプリメインとAlinaの組み合わせ

 アリーナは、エンクロージャーに信楽焼を用いたスピーカーシステム。タイムロード代表取締役社長の平野至洋氏が約50年前に発売されていたジョーダン・ワッツの壺型陶器スピーカー「FLAGON」を現在の技術で作るとどうなるか、というところから開発をスタートした製品だ。市場想定価格はペアで50万円前後とのこと。

 ドライバーには振動板素材にアルミニウムとマグネシウムを用いた、アメリカAudienceの52mm径ユニット「A3S」を採用。ダブルボイスコイルという凝った作りで、フルレンジユニットでありながら、バイワイヤリング接続に対応している。

画像: Alinaに搭載するフルレンジユニット(左)。陶器ゆえ後から穴が開けられないためユニットはサブバッフルを介して取り付けられる(右)

Alinaに搭載するフルレンジユニット(左)。陶器ゆえ後から穴が開けられないためユニットはサブバッフルを介して取り付けられる(右)

 試聴会には開発に関わった陶芸家の田篠麻衣子氏も参加。前半は平野氏と田篠氏による開発秘話の披露、後半は平野氏ナビゲートによる試聴という形で進められた。

 田篠氏は、「平野さんから試作の設計図を見せられた時、とても驚きました」と当時を振り返りながら、「陶器は焼き上がってから穴を開けるのは難しいのです。また焼くと13%ほど縮むので、その点を考えて作らなければなりません。最初は硬い方がいいと思い、硬い土を選んで焼いてみました」とのこと。

 こうして出来上がった試作機を色々な方に聴いてもらい、それが好反応だったので手応えを掴んだという平野氏は、田篠氏と共に量産を視野に入れた二次試作に取り掛かった。

画像: 開発時の苦労話を語る、田篠氏

開発時の苦労話を語る、田篠氏

 「厚みを2mm増やしてくださいと言われても、その計算や火の加減などが難しく、泣きそうでした」という田篠氏だが、平野氏は二次試作だけでは満足できず、さらに信楽焼の窯元へ。田篠氏の師匠にあたる奥田氏の紹介を受け、そこから様々な方の協力を得ながら、約2年の歳月と5回の試作を経て完成に至ったという。

 こうして完成したアリーナだが、1日1個しか制作できず、乾燥などを含めると、注文してから1ヵ月近くの時間がかかるとのこと。しかもそのほとんどが職人による手作業で、湿度など気候変動を受けやすいことから、匠の業が随所に求められるという。

画像: 試聴会の様子

試聴会の様子

 試聴はデジタルファイルをパトスのプリメインアンプで再生する形で行なわれた。ドイツ発、黒人女性ヴォーカルとアコースティックギターからなるアコースティック・ソウルユニット『フレンドン・フェロー』では、その場にいた誰もがサイズを超えたスケール感と透明度の高い音に魅了された。

 また鈴木秀美による『バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)』は、チェロのボディ感と凛とした空気感が会場を包み込み、さらに世界で5指に入ると言われるスペインのヴォーカリスト「ボラーニ」の情熱的な歌声がダイレクトに心に染み入ってくる。最後にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるビゼーの交響曲を見事にプレイバックして試聴会は幕を閉じた。

 サイズを超えた適度でキレのいい低音と明るい音色で魅力する「Alina」。ハイエンドオーディオとわが国の伝統工芸のマリアージュを一度聴いてみてはいかがだろうか。(取材・文:栗原祥光)

画像: タイムロード代表取締役社長の平野至洋氏

タイムロード代表取締役社長の平野至洋氏

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