8K/4Kチューナー非内蔵の8Kテレビ、AW1の後継となるBW1シリーズの60型モデルだ。今回はサイズラインナップの拡充(70型の追加)に加え、4Kダブルチューナーを内蔵し、8Kについては外部入力で対応する(HDMI2.1に対応予定)。2K、4Kコンテンツを8K変換して楽しむ8Kレディのテレビというコンセプトだ。
映像エンジンは新開発のMedalist(メダリスト)Z1。既存の8Kテレビ、AX1の回路を集約、ブラッシュアップさせたものだが、今回は色補正の3Dルックアップテーブルに肌色専用の調整軸を追加。より高度な補正により、色再現を追い込んでいるという。
VA液晶と直下型LEDバックライトの組合せで、きめ細かな部分駆動で高コントラスト化を図る8K液晶パネルは60AX1と一緒。広色域パネルを意味するリッチカラーテクノロジー プロ、表面に独自の低反射処理を施し、半光沢に仕上げられたNブラックパネルも搭載済だ。
画質面の提案として注目されるのが、映像モードのひとつとして新設されたスポーツモードだ。内容的には、動画ぼやけを低減するバックライト制御(部分的な黒挿入)と、サラウンド感を演出する音声モードの組合せ。動きのあるサッカー、ラグビーなどの中継を鮮明な8K映像と臨場感豊かなサウンドで楽しんでもらうのが狙いだ。
4K放送を録画した、ラグビーワールドカップ2019の日本対アイルランド戦をスポーツモードで見たが、これが思いのほか、使える。各選手の動きのブレが抑えられ、見た目のフォーカス感が向上し、観客の声援、叫び声が無理なく拡がる。
黒挿入や疑似サラウンド処理では、明確な効果が得られる反面、どうしても画像が暗くなったり、音声の逆相感に違和感を覚えたりするケースが多いが、スポーツモードの場合、こうした副作用がそれほど気にならない。長残光タイプの蛍光体を使用している関係で、赤の残像が見えやすくなるが、これもラグビー中継のような明るい映像では大きな問題にはならないようだ。デフォルトの状態でも充分、実用になるが、色温度を「中」まで抑えることで、より自然な発色が得られるようになる。
アナログ的な風合いは
8Kならではと言える
続いて2001年、BSデジタルでオンエアされたBD録画の『今井美樹ライヴ』を映画モードで見てみよう。東京・品川の小さな教会で行なわれたアコースティックライヴで、基本、暗い空間でステージ上の今井が強烈なスポットライトで照らし出されるという厳しい映像が続くコンテンツだ。
本機の場合、VA液晶で、さらにきめ細かな部分駆動も行なっていることもあって、見た目のコントラスト感は良好。時折、ハイライトの周辺に多少のハロが生じ、反射するマイクの回りに赤のにじみが見えるが、これもそう大きな問題にはならない。
感心させられたのが、2K/4K変換の精度の高さ、フェイストーンの描きわけだ。基本的な情報量については、AX1と同等だが、時間をかけてじっくり見ていくと、S/Nに余裕が生まれ、ライティングによって微妙に変化する顔色の安定感が増しているのが分かる。
8Kコンテンツのパキッとしたハイフォーカスの描写とはいかないが、画素感のないアナログ的な風合いで見せる映像は、実に濃密で、繊細。細部の描写が緻密で、深みのある発色も見応えがある。既存の2K、4Kテレビとは明らかに異なる独特のアナログ的なテイスト。画素感のない8K表示ならではの表現力と言っていいだろう。
最後にUHDブルーレイ『ダンケルク』を映画モードで見たが、これはドンピシャ、はまった。冒頭部、人影のない、ビラが舞うダンケルクの街を数人の兵士が歩いていくシーン。薄く色づいた青と、沈んだトーンの町並みのコントラストが明確で、色味が深い。この独特の色調、階調性、あるいは明るさに対する発色のレスポンスと、フィルム映像の感触に近く、強烈な吸引力のようなものを感じさせる。
正面コントラスト重視のVA液晶のため、視野角による画質への影響が大きいという問題は残るが、この深みのあるフィルム映像は見応え充分。8K液晶の可能性の高さを再認識するくらいの説得力を感じた。
8K LCD DISPLAY
SHARP
8T-C60BW1
オープン価格(実勢価格35万円前後)
●解像度:水平7,680×垂直4,320画素
●内蔵チューナー:地上デジタル(CATVパススルー対応)×3、BS 4K・110度CS 4K×2、BS/110度CSデジタル×3
●接続端子:HDMI入力5系統、デジタル音声出力1系統(光)、LAN1系統、ほか
●寸法/質量:W1356×D290×H871mm/約36.5kg ●消費電力:約510W(待機時1W)
●問合せ先:シャープ(株)お客様相談センター TEL. 120-001-251
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