エプソンの家庭用プロジェクター、ドリーミオの4Kプロジェクター入門機だ。TW7100とTW7000の2ラインからなり、上位モデルのTW7100は光学回路にコントラスト補償板が組み込まれ、ダイナミックコントラストは10万:1をクリア(TW7000は4万対1)。さらに、ステレオスピーカー(10W)も内蔵していることがTW7000との違いだ。
フルHD仕様の透過型高温ポリシリコンTFT液晶パネル(0.61型)を3枚配置(RGB用)し、独自の4Kエンハンスメントテクノロジーにより高画素化を実現するという表示方法は上級機のEH-TW8400からそのまま受け継いだもの。
これはフルHDの映像データをフレーム単位で、半画素分、斜め方向にずらすことで、4K化を図る独自のシステム。平坦なガラスプレートを高速で振動させることで光軸を屈折させ、画素ずらしを行なうため、明るさへのダメージは生じないという。実際、3000ルーメンという光出力は、家庭用プロジェクターとしてはトップレベルだ。
そして設置時の自由度の高さはドリーミオならでは。投写レンズは1.6倍ズームとし、上下60%、左右24%のシフト機能を備える。またやむを得ずスクリーン面に対する斜めに設置する場合、あるいは上下に傾けた設置を強いられる場合、台形歪みを補正することも可能だ(ヨコ台形歪み補正/タテ自動台形歪み補正機能)。
映像回路面では4K&HDR収録作品再生時、ダイナミックレンジが設定できるHDR調整機能の充実に注目したい。不自然な白飛び、明るさ不足が回避できる独自の調整機能だが、今回、対応可能なダイナミックレンジが100nit(最低値)から1万nit(最高値)にまで拡大され、同時にHDR10、HLGそれぞれ16段階の設定が可能になった。
つまり一部で「通常の放送よりも暗くて、見づらい」という声のある4K放送でも有効。明るさ不足が気になった場合は、リモコンのダイレクトキーで積極的に設定を変えながら、最適なポイントを探しだせるというわけだ。また「ダイナミックレンジ」『オート』では、SDR、HDR10、HLGを自動判定し、「HDR10設定」はデフォルトの『8』(中点となる500nit)となる。
マットスクリーンと好相性。
深みのある色彩は見応え充分
まずBD『きみに読む物語』をシネマモードで見ていこう。冒頭部の朝焼けのシーンでは、深みのある赤の発色と引き込みの強い黒が印象的だ。メリハリをつけて、そこに厚みのある色をしっかりとのせていくという絵づくりとみた。
油絵を思わせるような濃密な映像は、なかなか見応えがあるが、反面、組み合わせるスクリーンによる画質の変化も大きい。今回はHiVi視聴室リファレンスのスクリーン、オーエスのレイロドールと、キクチのグレースマット100の2種類のスクリーンを試してみたが、相性がよかったのは後者。
レイロドールは持ち前の明るさ、鮮やかさを生かし、デイライトシーンを中心に、見栄えのする映像を楽しませる反面、ローライトから中間調にかけて、色が薄くなる傾向があり、階調の推移もややぎこちない。
対するグレースマットは、発色、階調性ともに癖っぽさがなく、TW7100が狙っていると思われる凝縮した厚みのある映像を描き出す。映像のインパクトではレイロドールに分があるが、総合的な表現力ということでは、グレースマットが好ましい。
ということでスクリーンをグレースマットに固定して、UHDブルーレイ『グレイテスト・ショーマン』を視聴。チャプター10、11を中心に「シネマ」モードを「明るさ」『高』の状態で確認したが、持ち前の明るさ、鮮やかさを生かした見栄えのする絵づくりで、色彩描写も深みがあり、単調にならない。
人肌は若干、赤みが強いが、高級な衣装の生地、分厚いカーペット、さらにはドレスを飾る貴金属と、その質感、風合いまでていねいに描き分けている。このあたりの表現力は、まさにRGB3板式の強みと言っていいだろう。
「HDR10設定」は、明るさとコントラスト感が高い次元の両立できる『8』を選択。高輝度部の情報はやや飛び気味だが、力強く、濃密な光で照らしだされる映像は、見応え充分。最後の微調整として、フェイストーンを整えるために「肌色調整」を『3』から『4』にシフトして、赤みを軽減。明るさ、色調、コントラスト感と、全体のバランスを整えることができた。