確かなクォリティと快適な操作性を追求し、各方面から高い評価を得ているデラのミュージックライブラリー、N1シリーズ。筐体構造や電源回路に物量を投じた上級モデルN1Zと、フルサイズコンポーネントとの組合せを想定したスタンダードモデル、N1Aの2ラインの構成で、サポートする音楽ファイル形式や基本機能も変わらない。

 前面パネルに大型の主電源スイッチ、有機ELディスプレイを配置した外観は、オーディオコンポーネントそのもの。しかも各種設定や動作状況、曲名、フォーマット、ストレージの残量などが日本語で表示され、その時の動作状況がひと目で把握できる。

 実動作時の信頼性の高さも大きな魅力だ。例えば、リンのネットワークプレーヤー、DSシリーズとの組合せでも、他社のサーバーに比べ立ち上がりが早く、コントローラーアプリからのアクセスにもスムーズに反応する。また、6年に渡り継続的にシステム全体の動作を常に改善し、互換性も向上させることでトラブルを未然に防いでいるという。

 そしてファームウェアのアップデートによる機能アップも意欲的だ。USB DACとの組合せによる内蔵音源の再生機能に始まり、CDリッピング機能、ハイレゾファイルの自動ダウンロード機能、USB接続したディスクドライブを活用したダイレクトCD再生機能、さらにはUSBメモリーやUSB接続したHDDなどからの音源取り込み機能など、新たなフィーチャーを随時追加し、オーディオ機器としての可能性を大きく拡げている。

 ここで紹介するデラの第三世代のミュージックライブラリー、N1Z/3、N1A/3では、これまで地道に培っていた技術、機能性をしっかりと活かしながら、ラインナップを一新(下表参照)、同時にシステムソフトウェア4.00を搭載している。

 

画像1: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場

Music Server
N1Z/3-S40 ¥850,000+税(写真上)
N1A/3-S20 ¥240,000+税(写真下)

 

N1Z/3 Seriesのラインナップ

画像2: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場
画像3: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場
画像: DELAミュージックサーバーのトップモデルが、N1Z/3シリーズの3製品となる。高剛性を追求した金属筐体に、強化電源を組み込んだN1Zのオリジナルモデルのコンセプトはそのままに、大容量4TバイトSSD仕様を新たにラインナップ。カラリングもシルバーとブラックの2色が通常仕様として同価格で用意される

DELAミュージックサーバーのトップモデルが、N1Z/3シリーズの3製品となる。高剛性を追求した金属筐体に、強化電源を組み込んだN1Zのオリジナルモデルのコンセプトはそのままに、大容量4TバイトSSD仕様を新たにラインナップ。カラリングもシルバーとブラックの2色が通常仕様として同価格で用意される

N1A/3 Seriesのラインナップ

画像4: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場
画像5: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場
画像: N1Aは、DELAミュージックサーバーのスタンダードシリーズで、第3世代に進化した。従来機とはストレージ容量の変更が主な違いで、HDDシングルドライブモデルが3Tバイト、HDDダブルドライブモデルが6Tバイト(3Tバイト×2)となった。またN1Aシリーズ初のSSD搭載モデル(容量は2Tバイト)も用意された

N1Aは、DELAミュージックサーバーのスタンダードシリーズで、第3世代に進化した。従来機とはストレージ容量の変更が主な違いで、HDDシングルドライブモデルが3Tバイト、HDDダブルドライブモデルが6Tバイト(3Tバイト×2)となった。またN1Aシリーズ初のSSD搭載モデル(容量は2Tバイト)も用意された

 

 システムソフトウェア4.00は、ハーフサイズのミュージックライブラリー、N10/N100シリーズと共通化されたもの。つまりN1/3シリーズでの新機能はすべてN10/N100シリーズでも利用できる。その特徴は多岐にわたるが、本体の画面表示をネットワーク上のスマホやタブレット、PCの画面上にそのまま再現し、タッチやクリックで自在に操作できたり(Webリモコン機能)、デラ内の音源をUSB接続したDACで再生する際(メルコ・ローカルプレイ時)に、経過時間のほか曲名、アーティスト名が確認できるようになったり、より快適な使い勝手を提供する。

 

システムソフトウェア4.00で実現した新機能

画像1: システムソフトウェア4.00で実現した新機能
画像2: システムソフトウェア4.00で実現した新機能

① メルコ・ローカルプレイ時の表示内容充実
サーバーやレンダラーを使わずに、本体ボタンでダイレクトに選曲・再生できるメルコ・ローカルプレイ時に、従来の楽曲経過時間に加えて、曲名、アーティスト名の表示に対応した

 

画像3: システムソフトウェア4.00で実現した新機能

② メルコ・Webリモコン機能の追加
本体表示部とボタン操作を、タブレット/PC等のウェブブラウザー経由で実行できるのがメルコ・Webリモコン機能。ブラウザーにIPアドレス(ネットワーク上の住所を示す番号)を打ち込むことで利用可能に。リスニングポイントにいながら、事実上、本体操作が可能になり利便性が高まった

 

 

 そして同時に発表されたオーディオ専用のスイッチングハブ、S100。デラではネットワークスイッチと称している。すでに既存の業務用機をベースにしたバッファローブランドの、オーディオ用ハブ(BS-GS2016/A)が存在するが、今回のS100は完全な新規開発モデル。N1シリーズ同様の大容量コンデンサーバンク基板を組み込んだ電源回路や、2mmの鋼鈑を採用したシャーシ設計など、随所で〝DELAクォリティ〟の実現にむけたこだわりが見て取れる。

 機能面でも100Mbps(主にネットワークオーディオ機器用)を4ポート、1000Mbps(主にサーバーやルーター用)を4ポート、光ファイバー等に対応SFPを2ポート搭載。さらに各ポートのLEDのオフが消灯可能なボタンも備えている。電源供給はACアダプターで行なう仕様だ。

 

画像6: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場

Network Switch
S100
¥138,000+税

● 接続端子:LAN(RJ-45)×8(100Mbpsポート×4、1000Mbpsポート×4)、SFPポート×2
● 寸法/質量:W215×H61×D270mm/約2.5kg

 

画像7: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場

ギガレベルでの高速伝送を必要としないオーディオ機器は左側の100Mbpsの端子に、サーバーやルーターなどのいわゆるネットワーク機器は右側の1000Mbpsのギガビット対応端子につなぐといいだろう

 

画像8: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場
画像9: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場

幅215mmのハーフコンポサイズにまとめられた、ネットワークスイッチ(いわゆるハブ)S100。N100(ミュージックサーバー)やD100(ディスクドライブ)、E100(外付けHDD)と同サイズだ。背面には8系統のRJ45端子と、2系統のSFPポートを装備している。RJ45端子は、左側の4端子が100Mbps対応、右側が1000Mbps(ギガビット)対応端子となる。右端のRJ45端子と下側のSFPポートは排他仕様なので、10端子9系統の端子構成となる。中央のボタンはLEDのオンオフ用だ

 

画像10: “躍動のDELA” N1シリーズの新世代機とオーディオ用スイッチングハブ登場

S100の内部。比較的シンプルな回路構成となるが、筐体内の空間を活かした設計で、オーディオ的マインドを感じる内部のつくりとなっている。写真下側に見える電解コンデンサー群が、デラがコンデンサーバンクと呼ぶ回路。ミュージックサーバーづくりで培った高品位給電のノウハウが、ネットワークスイッチのS100で活かされている格好だ

 

定番音楽サーバーの新世代機N1A/3とN1Z/3の違いは?

 今回試聴した主なシステムは①USB DAC接続機能、②ネットワークプレーヤー連携によるミュージックサーバー機能を活用した再生の2パターンを中心に、さらに③S100の効果をミュージックサーバー再生とストリーミング配信で試した。

 では早速、N1A/3S20(SSD2Tバイト仕様)とアキュフェーズのSACD/CDプレーヤーDP750をUSB接続して、ハイレゾ音源を聴いてみよう(パターン①)。

 帯域バランスの整った穏やかな音調が特徴的で、空間の拡がりも天井が高く、ストレスを感じさせない。個性を強く主張するようなタイプではないが、全帯域にわたってレスポンスが素早く、アップテンポのリズムを軽快に、確実に刻んでいく。

 ノラ・ジョーンズの声はやや淡白で、クールな聴かせ方。アコースティックな響きは無理なく空間に浸透し、消え際もスムーズ。再生機側で意図的に化粧をすることなく、そのまま素直に描き出す生なりのサウンドが持ち味だ。

 そのまま再生機をN1Z/3S40(SSD4Tバイト仕様)に入れ替えて再生してみると、声のニュアンス、楽器の響き、そして空間の大きさや厚みなど、目の前に拡がる風景の変化が実感できる。特定のトーンを強調せず、ニュートラルに聴かせるという基本スタンスは一緒だが、しなやかなテイストをそのままに、全体に音の厚みが増して、中低域が気持ちよく吹き上がる。

 反田恭平のピアノでは空間の大きさ、静けさまで感じ取れるほどのS/N感にハッとさせられ、厚く、繊細な響きが聴き手をやさしく覆い包むように拡がる。そしてズンと低く響くペダルのリリース音がホール全体に浸透する様子がリアル。まさに上級機の存在価値を実感させるクォリティ感と言っていいだろう。

 続いてネットワークプレーヤーとしてリンのクライマックスDSMを用いて、N1Z/3S40との連携でサーバーとしての再生音の確認(パターン②)。声の実在感や低音の浸透力といった部分で、パターン1とは明確な差があり、サウンド全体のグレードがワンランク押し上げられる。

 音の粒子まで感じさせるような繊細な感触はDP750との組合せで聴いたパターン1での再生とよく似ているが、微小信号の再現性に余裕が生まれ、レコーディング現場の気配、雰囲気まで感じさせる。特にハイレゾ音源の再生ではその傾向が顕著で、充分なダイナミックレンジを確保しつつ、声、ピアノ、ウッドベースと、音そのものの鮮度の高さが印象的。情報量の違いというよりも、再生システムが持つ個性、能力の違いと言った方が正しいかもしれない。

 

オーディオ用ハブの効果大!ストリーミングの音質も向上

 最後は期待のスイッチングハブS100の検証(パターン③)。まずクライマックスDSMとN1Z/3の組合せで、既存のBS-GS2016/Aとの比較試聴を行なったが、微小信号の解像、空間の静けさ、ピアニシモの再現性と、S100の優位性は明らかだ。

 高域、低域を問わず、表現がオーバーにならず、ニュートラルな質感で聴かせるBS-GS2016/Aも悪くはないが、S100に入れ替えると、にわかに再生空間のスケールが拡大され、響きのグラデーションがより緻密に、きめ細かく描き出される。フォーカスの鋭さ、音離れのよさも際立ち、実に見通しがいい。スイッチングハブを変えただけで、ここまで音質が変わってしまうとは……。驚きだ。

 おのずとストリーミング再生への期待が高まるが、S100はここでもしっかりとした存在感を示した。TIDAL(日本未サービス)でビヨンセやチョ・ソンジンなど、聴き慣れた曲を中心に再生してみたが、まず空間を覆い包むように優雅な響きに圧倒される。

 拍手と歓声のなか、ベースが躍動し、あたかも目の前のステージで歌い、演奏しているかのような"生っぽさ"は格別。それはけっして大袈裟ではなく、「音源自体の情報量が違うのではないか」と疑いたくなるような傑出したパフォーマンスだった。

 現在、メルコシンクレッツでは従来のN1およびN1/2シリーズを対象としたアップグレードサービスを受け付け中だ。最新のN1/3と同じシステムソフトウェア4.00となり、内部ドライブ(HDDあるいはSSD)の容量アップにも対応する。有料サービスとなるが、既存のユーザーに対して、最新モデルと同等の機能性を担保する意義は大きい。

 

取材に使った機器
● SACD/CDプレーヤー:アキュフェーズDP-750(USB DACとして使用)
● ネットワークプレーヤー:リンKLIMAX DSM(プレーヤーとして使用)
● プリメインアンプ:デノンPMA-SX1 LIMITED
● スピーカーシステム:モニターオーディオPL300II
● スイッチングハブ:バッファローBS-2016/A
● LANケーブル:エイムNA3

 

● 問合せ先:バッファローサポートセンター ☎ 0570-086-086

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