脱・家電見本市を宣言して以来、CEATECではオーディオビジュアル機器に関する展示が減ってしまっている。CEATEC2019も同様で、IT系、通信系の展示は多いが、テレビやプロジェクターといった身近なアイテムをほとんど見かけなくなっているのだ。
しかし今回のシャープブースには、StereoSound ONLINE読者諸氏にぜひ注目して欲しい3つのディスプレイ機器の展示があった。
その第一として、120インチの8K/120p液晶ディスプレイが参考展示されている。これは同社の堺工場で製造されたもので、現状の8Kディスプレイとしては最大サイズとなる。主なスペックは現在発売されている8Kテレビと同等とのことで、会場でも明るい8K映像が再現されていた。
白ピークの再現ではわずかに飛び気味の印象もあったが、このディスプレイはあくまで試作品だそうで、画質についてはこれから追い込んでいくのだろう。製品化等の予定も決まっていないそうで、今の段階で値段をつけるとすると数千万円になってしまうようだ。
第二は60インチ4Kディスプレイを4枚組み合わせた、120インチマルチディスプレイ、通称「ビデオウォール」だ。4Kディスプレイ×4枚ということで、スペック的には120インチ8Kディスプレイと同等の表示能力を持っている。
これまでの同様のマルチディスプレイではパネルの継ぎ目が目立っていたが、今回は3.4mmの狭ベゼルであり、画面サイズが大きいこともあってつなぎ目はほとんど気にならなかった。
このディスプレイは車やバイクを実物大イメージで再現でき、会場ではCGIデータを使ったデザインモックの表示が行なわれていた。しかもその映像はコントローラーで360度自由自在に向きを変えることも可能なので、より具体的なイメージがつかめるようになっている。
そのCGIレンダリングやコントロールソフトは他社製のようだが、シャープではディスプレイとのセットでB to Bへの展開を考えているのだろう。ちなみに色域はBT.2020に近い範囲をクリアーしており、実物に近い色再現も可能という。
最後は90インチのシースルーディスプレイだ。その名の通り、透明なパネルの表面に動画や静止画の情報を表示できるもので、主にサイネージ用として開発されたという。解像度は2Kを備える。
会場にはノーマリーブラックタイプとノーマリーホワイトタイプの2種類が展示されていた。前者は電源を切ると表面が黒くなり、後者は逆に白(透明)になる。このふたつは用途によって使い分けてほしいとのことだが、サイネージ用としてはノーマリーホワイトの方が使い勝手がいいかもしれない。
ちなみに同じパネルを使った家庭用テレビも期待したくなるが、その場合はバックライトをどうするかといった点が問題になりそうだ。というのも、会場の展示では透明パネルを大型のボックスに取り付けているが、これはボックスの中を明るくすることで、バックライトの機能を持たせているためだという。
ということは、家庭用に展開するためにはエッジバックライトで光源を得ることになるわけで(なにせ透明だから)、そのスペースやドライバー回路をどこに収納するかなどを技術的に解消しなくてはならないのだ。
とはいえ、これまで夢だと思われていた透明テレビが実現するかもしれないわけで、ぜひその展開には期待したい。映像を楽しむ場合は大型8Kテレビを使い、ニュースやネットの情報は透明テレビで、といった2ウェイ生活も楽しそうだと思いませんか。