8KアソシエーションはIFAに向けて、8K機器の推奨スペックを発表した。8K AssociationのExecutive Director、Chris Chinnock氏にその狙いを聞いた。
麻倉 まず、8K Associationについて教えてください。
クリス 今年の一月に発足した、8Kのエコシステムの確立を目指した非営利団体です。当初の構成は、創業メンバーのSamsung Electronics,Hisense、TCL、Panasonic and AU Optronicsでした。この5社がボードメンバーとしてスタートしました。CEメーカー、パネルメーカーの集合でした。初めは、まだ8K時代も来ていないのに、ほんとうに組織としてやれるのか、かなり心配しました。でも、ここに来て時代が変わってきました。
麻倉 と、言いますと。
クリス 日本では8K放送が始まりましたし、8Kコンテンツも作られ始めた。大事なことは、ネットを経由するディトリビーションの動きが出てきたことです。機器はまだまだ高いですが、ディスプレイも制作機器もコストダウンの道が見えてきました。1年前とは大違いですね。
中国のパネルメーカーは、大きなマザーガラスをつかって8Kディスプレイを切り出すので、供給過剰になりやすいのです。そうなると、パネルコストが下がり、最終的には8Kテレビの価格も下がります。
麻倉 確かに、そうした見通しは当たっていますね、ところで1月のCESでのスタート時点では5社でしたが、それから9ヵ月経ったIFA時点では、メンバーは増えましたか。
クリス かなり増えました。ボードには、当初のSamsung Electronics、Hisense、TCL、Panasonic、AU Optronicsに加え、サムスンエレクトロニクスの子会社のディスプレイメーカーSamsung Display、OTTのTencent America、DTSのXperiがボードメンバーになりました。
Principal MembersにはNovatek Microelectronics、V-Siliconという技術会社が、Associate Membersには台湾のパネルメーカーのInnolux、OTTのChili、Louis Picturesが来ました。いま16社です。来年のCESまでに20社に拡大するとみています。
麻倉 なるほど。急速に拡大していることは分かりました。8K Associationの具体的なミッションについて教えてください。
クリス われわれの機関のミッションは、
①8Kテレビと8Kコンテンツがコンシューマーとプロフェッショナルの許にプロモーションされること、
②8Kエコシステムをコンシューマーとプロフェッショナルの人たちに“教育”すること、
③8Kのデモコンテンツを作りメンバーの間で共有すること、
④OTTの人たちに、8K配信サービスを行うよう推奨すること、
⑤8Kのディスプレイと入力信号について最低限のスペックを定めること……です。
今回のIFAでそのスペックが発表されましたので、紹介しましょう。
Resolution: 7680 x 4320 pixels
Input Frame Rate: 24p, 30p and 60p frames per second
Display Luminance: More than 600 nits peak
Codec: HEVC
Interface: HDMI 2.1
これらはあくまでも最低限のスペックであり、120Hz駆動や、さらに高輝度などこれ以上の高性能も、もちろん可能です。今後、8K製品がこれらの基準に達しているか、透明性をもってチェックするコンプライアンステストも、実施予定です。基準を満たした製品にロゴマークを付与する計画です。
麻倉 なるほど。着々と進んでいますね。今後、8Kを展開するに当たって重要なことは何でしょう。
クリス やはりコンテンツです。世界のコンテンツクリエイターに頑張っていたたきたいところですが、すでに8Kをディトリビートする会社も複数が名乗りをあげています。スペインのRakuten TV、イタリアのChili、アメリカのUltraFlix、ロシアのMEGOGO、フランスのThe Explorersは積極的に8Kデリバリーを推進する構えです。
もうひとつが2K、4Kからのアップコンバート。まだまだリアルな8Kコンテンツは少ないので、8Kテレビとしては2K、4Kからのアップコンバート性能がひじょうに大事です。私はAI処理にて、アップコンバートがより高性能になったことに注目しています。リアル8Kへの架け橋ですからね。
麻倉 8Kの今後は大いに期待できますね。ありがとうございました。