スイスのルボックスというと、我が国のベテラン・オーディオファイルはみなテープレコーダーの名機を思い浮かべることだろう。しかし、21世紀に入ったあたりから同社は〈ライフスタイル・オーディオ〉に注力するようになり、エンクロージャーにガラスを用いたスピーカーRe:Sound Gシリーズなどで欧州を中心に高い評価を得てきた。
オープン価格(実勢価格9万2,000円前後、ペア)
●型式:2ウェイ1スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:14mmドーム型トゥイーター+116mmコーン型ウーファー同軸
●出力音圧レベル:89dB/W/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:H140×W140×D158mm/2.1kg
●カラリング:ブラック(写真)、ホワイト
●備考:ボールジョイントブラケット(実勢価格ペア14,000円前後)
ここにご紹介する「ピッコロ」との愛称が付けられたS60は、一辺14㎝のキューブ型スピーカー。専用のウォールブラケットが用意されており、リスニングルームのみならずさまざまな用途に対応できる仕様。本機の先代機は、アルミ・エンクロージャーが採用されていたが、本機のそれは木質材のラッカー仕上げである。採用されたドライバーは11.6㎝ウーファーの中心に14mmトゥイーターを配置した同軸ユニット。背面のオフセットした位置に小さなバスレフポートの穴が穿たれている。
14cmのキューブが奏でる 生気に満ちた音に驚く
まず、S60を視聴室に常備された汎用スピーカースタンドに載せ、パイオニアのAVセンターの新製品VSX-LX304で鳴らしてみた。とても小さなスピーカーなので、あまり期待せずに聴き始めたのだが、「え?」と思わず声が漏れるほどの本格サウンド。ジェイムソン・ロスが歌うジャズ・バラードはエネルギーバランスが真っ当で、ヴォーカルの生々しさ、ピアノのきらめくような粒立ち、ベースのふくよかな響き等、その生気に満ちた音に驚かされる結果となった。同軸スピーカーならではの音像フォーカスの鋭さも出色。中低域の実在感の豊かさは信じられないほどだが、スペック表記通り(65Hz~20kHz)低域は伸びておらず、物足りないのは否めない。
そこで視聴室の倉庫にあったフォステクスのアクティブサブウーファーCW250Dを引っ張りだしてきて、L/Rスピーカーのほぼ中央に設置、VSX-LX304の「スピーカー構成」を2.1chに設定して聴いてみることに(S60とのクロスオーバー周波数は80Hzに固定)。サブウーファーのレベル設定にちょっとしたコツが必要だが、サブウーファーの存在が気にならないポイントを見つけると、音楽のスケール感が増し、音場が雄大に広がりながら、もう眼前の小さなキューブスピーカーが鳴っていると思えない、すばらしいパフォーマンスが得られる。チェロとコントラバスが親密な会話を繰り広げるハイレゾファイル『驚異のデュオ』など、目の前をカーテンで閉じられたら、10インチ・ウーファー搭載の大型スピーカーが鳴っていると勘違いしてしまいそう。本機のオーナーはぜひ2.1ch再生を試していただきたい。
●問い合わせ先:(株)イースタンサウンドファクトリー 045(548)6592