昨年末に発表され、早くも大きな話題となっていた新しいRシリーズ。
上級機の技術が盛り込まれ、ボディをスリム化して3色のカラリングを揃えるなど、使いやすさやインテリア性も高めている。そんなRシリーズの実力を、ステレオ再生および7.1chサラウンド再生で詳しくチェック。
最新世代のUni-Qドライバーを採用したことで、優れた音場感や自然な音の再現力がどう進化したかをじっくりとレポートした。
全面新設計で生まれ変わったRシリーズ
KEFのミドルクラスとなるRシリーズが全面新規設計で生まれ変わった。進化点は1043にもなるといい、中でもポイントになるのは第12世代Uni-Q(ユニキュー)ドライバーの採用と、上位モデルであるReference(リファレンス)シリーズのデザインや技術を盛り込み、大幅な改善・変更を行なったことだろう。
シリーズには、ウーファーを4基搭載した3ウェイモデルのR11をはじめ、ウーファー2基搭載のR7とR5、ブックシェルフ型のR3、3ウェイ構成のセンタースピーカーのR2c、ドルビーイネーブルドスピーカーのR8aがある。また、エンクロージャーの横幅はR11とR7、R3が200㎜(R5のみ横幅175㎜)。従来機に比べR11ではR900比で40㎜ものスリム化を実施した。さらに、R11/R7/R5は床面からのUni-Qドライバーの搭載位置が揃えられており、クロスオーバー周波数も統一。サラウンド再生での音場再現の向上を狙っているという。
また、カラーも光沢のブラックとホワイト、さらにウォールナットの3色を用意。各色ともユニットやユニット周辺のリング、グリルネットまで色を揃えており、全体がスリム化されたことと合わせてインテリア性を高めている。
中高域の鮮度が高くキレ味抜群
パワフルな低域も存分に楽しめる
まずは、ブックシェルフ型のR3から聴いてみた。125㎜口径のUni-Qドライバーに165㎜のウーファーを組み合わせた3ウェイ構成だ。エドガー・モローの『オッフェンバック、グルダ:チェロ協奏曲集』からグルダのチェロ協奏曲を聴いたが、音場の広がりやステージの楽器の配置が明瞭に再現された。鮮度の高い中高域もあり、ハツラツとした演奏を楽しめると言えよう。ただし、低域は量感がやや多めで、キレ味のよい中高域に比べて少々遅れ気味。そこで、背面バスレフポートに付属のウレタンプラグを装着すると、低域の量感が抑えられ、音の立ち上がりの速さも改善された。ブックシェルフ型とは思えないパワフルな低音なので、設置する部屋の広さや壁との距離などと合わせて低音の量感をうまくコントロールすることが使いこなしのポイントだと感じた。
続いてR3と同じUni-Qドライバーにウーファーが2基となるR7では、低音の力感や伸びがさらに増す。こちらも量感がやや多めの傾向はあるが、立ち上がりの遅れは気にならない程度で、チェロの低音弦も解像感の高い再現だ。鮮度の高い中高域はほぼ同様で、低域とのマッチングを含めてかなりバランスがよい。サイズ的にもこのモデルが日本のリビング環境にマッチしそう。
最後に聴いたウーファー4基のR11の低音域はさすがの迫力。グルダのチェロ協奏曲でのアグレッシブな演奏でも、ドラムの力強さやギターの骨太な鳴り方をとてもパワフルに描く。音場のスケールも雄大で、低音の質感がますますよくなる。少し大きめの音量でしっかりと鳴らした方が持ち味を活かせるので、10畳以上の広い部屋に向くと思うが、雄大なステージの再現や、低音の底力はかなりのものだ。
サラウンド再生は立体性が高く躍動感に溢れた音が印象的だ
サラウンド再生では、フロントにR11、サラウンドにR7、サラウンドバックにR3を使い、センターをR2c、サブウーファーを従来シリーズのR400bとした。この構成での音のスケール感や迫力はかなりのもの。ただ、フロントをR11とするとR2cはやや力不足でセリフが埋もれ気味になる。R7とR2cの組合せの方がバランスがよさそうだ。サブウーファーのR400bもR11と比べると力不足になるので、2個遣いか、よりグレードの高い製品を選ぶとよいだろう。
試聴ではUHDブルーレイ『イコライザー2』の台風の中での銃撃戦を観たが、強風に伴なう低音の迫力が見事だった。チャンネルのつながりもよく、うなるような風の移動が目に見えるよう。狙撃用ライフルの重々しい銃声も迫力満点。シリーズ共通の音の定位のよさ、音場再現性の高さは見事なもので、7.1ch再生とはいえ、かなり立体感のある音場と自在な音の移動を楽しめた。ダイアローグもくっきりとした定位で力を感じるし、迫力ある打撃音からかすかな足音まで、キレ味抜群の鮮度の高い音も絶品だ。
新Rシリーズは、従来からの定位のよさに加え、鮮度の高い音色でさらに魅力が増加した。充実した低音のおかげかスケール感も立派で、進化の度合いは著しい。音楽再生でも満足度は高いと感じるが、サラウンド再生での躍動感に溢れた音が特に印象的だった。