クリプトンは3月30日午後、東京国際フォーラム6F G605会議室において、漆塗りスピーカー「KX-0.5UR/UB」の試聴体験会を開催した。

画像: 国際フォーラムの会議室には、ハイレゾとSACDの再生機器が準備され、kX-0.5ベーシックモデルとKX-0.5UBの聴き比べも行なわれた

国際フォーラムの会議室には、ハイレゾとSACDの再生機器が準備され、kX-0.5ベーシックモデルとKX-0.5UBの聴き比べも行なわれた

 同社ではさる3月15日にKX-0.5UR/UBの価格を¥400,000(ペア、税別)から¥298,000(ペア、税別)に改訂しているが、今回はそれ以降で初めて、エンドユーザーに試聴してもらう機会となった。

 会場にはKX-0.5UBとベースモデルのKX-0.5(¥185,000、ペア、税別)が準備され、漆塗りで仕上げることで音がどのように変化するのかが実演された。その進行・解説を務めてくれたのは、お馴染の山本浩司さんと、クリプトン オーディオ事業部長の渡邉勝さんだ。

 おふたりは現在発売中のHiVi2019年4月号で「KX-0.5UR/UB」誕生について対談を実施しており、今回の試聴会ではその内容も含めた解説が行なわれた。詳細についてはHiVi4月号を参照いただくとして、ここでは山本さんが選んだ試聴ソフトとその印象を紹介したい。

画像: <当日の試聴システム> ●スピーカー:クリプトンKX-0.5UR/UB ●SACDプレーヤー:デノンDCD-SA11 ●オーディオサーバー:デラD100 ●プリメインアンプ:ソウルノートA-2 ●D/Aコンバーター:ソウルノートD-2

<当日の試聴システム>
●スピーカー:クリプトンKX-0.5UR/UB
●SACDプレーヤー:デノンDCD-SA11
●オーディオサーバー:デラD100
●プリメインアンプ:ソウルノートA-2
●D/Aコンバーター:ソウルノートD-2

 まずは「漆の奏で」恒例ともいえるオリジナルモデルKX-0.5とKX-0.5UBとの聴き比べでは、カメラータトウキョウのハイレゾ音源『驚異のデュオ』を再現。録音現場の雰囲気がどこまで再現されるかをチェックした。

 KX-0.5UBでは音の静けさまで再現され、音色の艶やかさ、抑揚がわかるようになる。音楽としてのダイナミックレンジも広くなった印象だ。オリジナルモデルと漆塗りモデルは、表面仕上げの最終段階で漆のコーディングを3段階加えているだけの違いというが、それでも一聴してわかる違いが出てきている。

 女性ヴォーカルからは、ダイアナ・パントンの「Destination Moon」の11.2MHz DSDを再生した。渡邉さんによると、両機の違いはヴォーカルの方がわかりやすいとのことで、確かにKX-0.5UBでは声に生気がみなぎってくる印象だ。「オリジナル機ではダイアナ・パントンの年齢が少し高い印象ですが、KX-0.5UBではぴちぴちで元気溢れる声になります」(山本さん)という。

画像: HiVi4月号で漆塗りスピーカーについての取材を担当してくれた山本さんは、その際の印象も交えて製品解説を行なってくれた

HiVi4月号で漆塗りスピーカーについての取材を担当してくれた山本さんは、その際の印象も交えて製品解説を行なってくれた

 続いてステレオサウンド社の11.2MHz DSD BD-ROM『ロイヤル・バレエ・ガラ』から、「チャイコフスクー・くるみ割り人形」をチョイス。この音源では、ロンドンのキングスウェイ・ホールの下を走っている地下鉄の音まで録音されており、高品質な機器で再生するとその走行音が聴き取れる事が知られている。

 今回もKX-0.5UBではそのニュアンスが聴き取れた。山本さんによると、バスレフ型よりも密閉型の方がこの超低域を聴取できることが多いとかで、それだけ低音の分解能が高いのではないかと話してくれた。

 その後は、サックス奏者のチャールズ・ロイドがノラ・ジョーンズをゲストに迎えた「You Are So Beautiful」を再生したが、たいへん滋味深い演奏とヴォーカルを聴かせてくれた。

画像: スピーカーグリルのあり/なしで音が変化するかも試している

スピーカーグリルのあり/なしで音が変化するかも試している

 なおKX-0.5UR/UBには京都・誉田屋源兵衛が製作した絹を使ったスピーカーグリルが付属している。渡邉さんによると、絹は音をほとんど吸収せず、かつ折り目がひじょうに複雑なので音の拡散効果もあるのだという。

 それもあり、高域がほとんど減衰しないで、かつKX-0.5UR/UBに使われているリングラジエーターの指向特性(左右30度ほど)を自然に広げてくれるというメリットもあるそうだ。

 そのスピーカーグリルを取り付けた状態と外した状態の聴き比べとして、11.2MHz DSDで配信されている『メジューエワ・プレイズ・ベーゼンドルファー』から「ラフマニノフ:プレリュード 作品32-12」を再生した。

 グリルのあり/なしの違いはかなり微妙だったが、グリルを付けた状態でも重量感がありつつ、きらびやかな音が再現されている。またグリルを外すと、音の輪郭が引き締まる方向に変化する。「ここは好き好きですので、お好みの状態で使っていただきたいですね」(渡邉さん)とのことだ。

 ここからソースをSACDに変え、山本さんが選曲・構成した『東京・青山骨董通りの思い出』から、サイモン&ガーファンクル「アメリカ」とヴァレリー・カーター「ウー・チャイルド」、ボブ・ディラン「運命のひとひねり」を再生する。これらの曲はSACDに収録されるのは初めてとのことで、かなり貴重な音源といえる。

画像: 当日視聴したSACD。左は山本さんが選曲・構成を担当してくれた『東京・青山骨董通りの思い出』で、右は『テレサ・テン』のベスト盤。どちらもステレオサウンドストアで好評発売中(下のリンクからぜひ!)

当日視聴したSACD。左は山本さんが選曲・構成を担当してくれた『東京・青山骨董通りの思い出』で、右は『テレサ・テン』のベスト盤。どちらもステレオサウンドストアで好評発売中(下のリンクからぜひ!)

 「アメリカ」は1960年代のアナログ録音とのことだが、ジョー・オズボーンのベースやハル・ブレインのタムドラムの再現など、低音感も充分でかつ解像感も高い。

 「運命のひとひねり」では、「この曲はうまく再生すると、スピーカーの間にディランが立って見えるんです」という山本さんの希望で室内の照明を少し落として再生。ナチュラルエコーが本当に室内の響きを活かして収録されていたとかで、その雰囲気も自然に再現できていた。

 そして、試聴会の最後に山本さんが選んでくれたのは3月30日に発売されたばかりのSACD『テレサ・テン』。ここから、「再見、我的愛人(グッドバイ・マイ・ラブ)」と「愛人」の2曲をKX-0.5UBで鳴らしてくれた。

 試聴会に参加してくれた皆さんは40〜50代が中心のように見受けられたが、みんな一度ならず耳にしたことのある楽曲で、しかもオリジナルマスターテープにきわめて近い再現ができていたこともあってか、テレサ・テンの声にじっと耳を傾けてくれていた。

 「今日はKX-0.5UBで色々な楽曲を聞いていただきましたが、小型2ウェイスピーカーの傑作機誕生といえるでしょう。漆の美しい仕上げと、それが音にも貢献していることを感じていただけたのではないでしょうか」という山本さんの言葉で試聴会はお開きとなった。

This article is a sponsored article by
''.