プロ向けの「ADI-2 Pro」をコンシューマー向けにリファインしたモデル

画像: プロ向けの「ADI-2 Pro」をコンシューマー向けにリファインしたモデル

 本機は、好評のプロ機AD/DAコンバーターの「ADI-2 Pro」を家庭用にモディファイしたバリエーションといえる存在。基本性能や機能はADI2Proに準じたものだが、近年のヘッドホン/イヤホン市場の隆盛を受け、ヘッドホンリスニングに関わる機能を強化しているのが特徴だ。

 具体的には、イン・イヤー・モニター(IEM)で良好なパフォーマンスが得られるよう、低インピーダンスに最適化された3.5mmのヘッドホン・ミニジャックを装備した(ADI2Proでは、バランス接続に対応した標準ジャックを2基装備)。こうした仕様は、RMEの開発者が、自ら欲しい、使いたいDAC兼ヘッドホンアンプを考えたことに基づくようだ。

画像: 中央から左側がデジタル入力と電源部、右側がアンバランスとバランス端子によるアナログ出力部となっている。ADI-2 Proで搭載されていた主にプロ用途のAES/EBUデジタル端子や、TS(6.3mm標準フォーン)アナログ端子などは廃止されている

中央から左側がデジタル入力と電源部、右側がアンバランスとバランス端子によるアナログ出力部となっている。ADI-2 Proで搭載されていた主にプロ用途のAES/EBUデジタル端子や、TS(6.3mm標準フォーン)アナログ端子などは廃止されている

 本機のサイズは、ハーフラック(9.5インチ)1Uサイズ。天面をクリアにして中身が覗けたADI2Proアニバーサリーモデルとも異なり、マットブラック仕上げの標準的な曲げ加工の筐体だ。入力はUSBタイプBを含めてデジタル3系統に絞られ(ADI2Proはアナログ入力を1系統装備)、出力は家庭用ということでアンバランス/バランスを各1系統備えている。接続するスピーカーやアンプに応じて、出力のリファレンスレベルを4段階から選択できるのも嬉しい。

 DACチップは旭化成エレクトロニクス製で768kHz/32bitに対応し、DSD 11.2MHzもサポート。クロックには、アナログPLL回路を改善したSteadyClock FSを新たに実装し、ジッターをさらに抑制している。

 便利な機能としては、5バンドのパラメトリックEQを搭載。バス/トレブルのトーンコントロールとクロスフィード(ヘッドホンリスニングでもスピーカーで聴いているような自然なアンビエンス感が得られるもの)、ラウドネスといった音質調整もDSPでコントロールできるようだ。

画像: Crossfeed(クロスフィード)とは、ヘッドホン再生時にスピーカーで聴いている時のような音場再現に近づける補正技術。オフのほか、クロスフィード量の違いによる5段階が選択できる。その下のDA Filterは4種類のオーバーサンプリングフィルターの設定項目で、初期設定はもっともリニアな周波数帯域を持つとする「SD Sharp」

Crossfeed(クロスフィード)とは、ヘッドホン再生時にスピーカーで聴いている時のような音場再現に近づける補正技術。オフのほか、クロスフィード量の違いによる5段階が選択できる。その下のDA Filterは4種類のオーバーサンプリングフィルターの設定項目で、初期設定はもっともリニアな周波数帯域を持つとする「SD Sharp」

 前面のIPS液晶パネルには、ピークレベルメーターや30バンドアナライザー等が表示されるほか、デジタル入力信号のフォーマットやクロック等が表示される。また、主な操作が可能なカード型リモコンも付属する。

画像: プロ用機でよく知られるRMEだが、ADI-2 DACはコンシューマー向けモデルのため操作リモコンを付属している。電源スタンバイ状態からのオン/オフ、ボリュウム操作、入力切り替えなど基本操作はもちろん、4つの数字ボタンには、EQやラウドネスなど20種類のコマンド/動作の登録ができる

プロ用機でよく知られるRMEだが、ADI-2 DACはコンシューマー向けモデルのため操作リモコンを付属している。電源スタンバイ状態からのオン/オフ、ボリュウム操作、入力切り替えなど基本操作はもちろん、4つの数字ボタンには、EQやラウドネスなど20種類のコマンド/動作の登録ができる

S/N良好でレンジが広いニュートラルなサウンド

 まずオープンエア型ヘッドホンのシュア「SRH1840」を標準ジャック出力にて試聴。S/Nがすこぶる良好で、周波数レンジも広く、偏りのないフラットな印象だ。細部の描写力の高さ、分解能のよさは、プロ機を生い立ちとしたブランドの血統だろう。正確、忠実、ニュートラルという形容詞が即座に思い浮かぶ音である。

 次に3.5mmジャックに挿し込んで、フィットイヤーのカスタムIEM「MH334」で試聴。ひじょうにタイトな低域で、ステレオイメージの立体的再現力が出色だ。カスタムIEMならではの耳へのフィット感のよさが、本機の高S/Nをさらに補完する形となり、音楽の没入感が半端ない。微細な音の実在感、実体感が素晴らしいのである。

 内蔵パラメトリックEQは、まさしく痒いところに手が届くといえよう。視覚的にディスプレイも表示されるので使い勝手がよく、ヘッドホンやイヤホンで不足に感じられる部分を的確に補ってくれる。本体に備えつけられた3つのノブがロータリーエンコーダーになっており、回転で選択、プッシュで実行という一連の動作もわかりやすい。中心周波数や傾き、レベル等をグラフィックで見ながら操作できる。パラメトリックEQを使わずとも、バス/トレブルのトーンコントロールだけで大概は好みのトーンに調整できると思うし、その質や具合も優れていると感じる。

画像: パラメトリックEQの設定画面。5バンドに分かれておりそれぞれ調整が可能で、最大で20のプリセットを登録できる。ライン出力のほか、ヘッドホン出力、IEM出力でも使用可能。右/左の音声出力にそれぞれ別のEQ補正をかけるDual EQ機能も搭載している

パラメトリックEQの設定画面。5バンドに分かれておりそれぞれ調整が可能で、最大で20のプリセットを登録できる。ライン出力のほか、ヘッドホン出力、IEM出力でも使用可能。右/左の音声出力にそれぞれ別のEQ補正をかけるDual EQ機能も搭載している

 最後にバランス出力からホーム用パワーアンプに接続し、ステレオ装置で試聴した。このシステム系統においても本機のS/Nのよさは光っていた。それ故、微小信号の再現力に長けているのがすぐにわかる。音場感を立体的に提示し、駆動力も高い。

 本機はデスクトップのパワードスピーカーとの組合せに最適なサイズといえるが、DAC内蔵のホーム用プリアンプとしても充分ハイクォリティ。もちろんヘッドホンアンプとしても申し分ないパフォーマンスと実感した。

D/A CONVERTER+HEADPHONE AMPLIFIER
RME
ADI-2 DAC
オープン価格(実勢価格15万円前後)
●接続端子:アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、デジタル音声入力3系統(同軸、光、USBタイプB)、ヘッドホン出力2系統(6.3mm標準フォーン、3.5mmステレオミニ)●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:[USBタイプB]〜768kHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz/1ビット(DSD)●寸法/質量:W215×H52×D150mm/1kg●備考:バランス出力HOT=2番ピン

ADI-2 DACの製品紹介ページ
https://synthax.jp/adi-2dac.html

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