画像: 【特別企画】Auro-3Dに対応すべくマランツAV8805を導入!

マランツのコントロールAVセンターAV8805が、待望のソフトウェアアップデートを施された。最新のファームウェアで、かねてから予告されていたAuro-3Dのデコードに対応したのだ。そのクォリティを測るべく、Auro-3Dを聴いたのは本機の自宅導入を決めたという麻倉怜士さんだ。(編集部)

 

 ここ数年、Auro(オーロ)3Dにたいへん注目してきた。水平+垂直方向のイマーシブサウンド・フォーマットでは、日本においてはドルビーアトモスとDTS:Xが先行していたが、「第3のイマーシブサウンド」として導入されたオーロ3Dを各所で体験すると、ドルビーアトモスやDTS:Xとはかなり異なる体験が得られたからだ。

 例えばノルウェーの2LレーベルのBDオーディオ盤にはオーロ3D音声が収録されている。オーロ3Dが演出する教会での深い音場再現に感動しない人はいないだろう。教会にて垂直方向に響きが立ち上がり、反射して降ってくる様子がたいへんリアルに体験できる。しかもハイレゾだ。基本の5.1chとハイト(上方)4つのチャンネルがハイレゾで再生される、音場+音質のダブル効果は筆舌に尽くしがたい。

画像: 2LレーベルのBDオーディオを始め、複数のAuro-3D収録コンテンツを試聴。パッケージには明記されていないものの、近年のウィーン・フィル『ニューイヤー・コンサート』(BD)にもAuro-3D音声が収録されている

2LレーベルのBDオーディオを始め、複数のAuro-3D収録コンテンツを試聴。パッケージには明記されていないものの、近年のウィーン・フィル『ニューイヤー・コンサート』(BD)にもAuro-3D音声が収録されている

 この4月に、オーロ3Dを誕生させたベルギーはギャラクシー・スタジオを訪問し、オーロ3Dの開発経緯、その特異な発想、使いこなし……を、深く取材することができた。帰国し、わがシアターにオーロ3D対応機器を導入する段になり、ギャラクシー・スタジオで見聞したさまざまな知見を勘案した結果、マランツのコントロールAVセンター、AV8805の導入を決定した。私にとっての初めてのマランツ製品である。本記事ではその経緯や導入直後のファースト・インプレッションもお届けしよう。

画像: ベルギーの北東部に位置するギャラクシー・スタジオ。現在はAuro Technologiesとは別会社となっている

ベルギーの北東部に位置するギャラクシー・スタジオ。現在はAuro Technologiesとは別会社となっている

画像: エントランスには、多数のAuro-3D音声収録作品を展示。Auro-3Dは特にヨーロッパで支持されている

エントランスには、多数のAuro-3D音声収録作品を展示。Auro-3Dは特にヨーロッパで支持されている

改めて知るオーロ3D
“自然さ”が何よりも重要視される

 まずは、オーロ3Dはいかに開発されたのか。ギャラクシー・スタジオオーナーであり、オーロ3Dの開発者ヴィルフリート・ヴァン・ベーレン氏は開口一番、こう言った。

  「イマーシブサウンドでもっとも重要なこと。それは“自然さ”です。人工的な味付けや強調感はあってはなりません。まるで音楽がその場で鳴り、響きが空間から自然に湧き出るような体験こそが貴重なのです。オーロ3Dの開発では、徹底的に“自然さ”にこだわりました」

 「オーロ3D=自然」というテーゼを紐解くには、ベーレン氏のバックグラウンドを知ることが必要だ。まず、彼は音楽家である。8歳からトランペットを始め、12歳の時にオルガンに出会って感動し、虜になった。15歳の時にはソロコンサートを開いた。その後、音楽教師となり、作曲、編曲も多数手掛けた。その延長で、自宅の庭に鶏小屋を改装したスタジオを建設。

 その後、このスタジオが今のギャラクシー・スタジオに発展することになる。そこでサラウンドに興味を持ち、自分が求めている「自然な音」を実現するためには、垂直方向に反射音情報を持つ3Dサラウンドが必要だと分かった。つまり自分が演奏で伝えたいこと、聴きたいことを実現するために生み出したフォーマットが、オーロ3Dなのた。

 この開発の舞台ギャラクシー・スタジオは、今や世界最高峰のスタジオとの令名も高い。遮音が徹底的に追求され、スタジオの内外の遮音特性は107dBという驚異的な数値。設備が整った理想的な録音場として、世界中のアーティストから引っ張りダコだという。ここで自然に垂直方向にも広がるサラウンドを実現するために、多くの実験が繰り広げられた。

画像: 改めて知るオーロ3D “自然さ”が何よりも重要視される
画像: スタジオ内でもっとも広いという「ギャラクシー・ホール」。330㎡もの広さがあるそうで、60〜70人クラスの大編成録音をすることもあるという。もちろん、マルチチャンネルでの収録に対応する

スタジオ内でもっとも広いという「ギャラクシー・ホール」。330㎡もの広さがあるそうで、60〜70人クラスの大編成録音をすることもあるという。もちろん、マルチチャンネルでの収録に対応する

 オーロ3Dが初めて世に紹介されたのは2006年にパリで開催されたAES国際カンファレンス。「Immersive Sound」(イマーシブ=没入型の)という言葉を提唱したのは、実はベーレン氏だ。ドルビーアトモス、DTS:Xに先駆ける世界初の3Dサラウンド提案であった。開発過程で得たという重要なポイントを挙げよう。

 ① スピーカー配置。人の聴覚は垂直方向に対して感度が低い。それを踏まえて、どのような配置なら、人が聴いて自然で、同時に効果的な立体音場が再現できるか。「まず5.1chをベースに、実験的にフロントL/Rにハイトスピーカーを加えたら、よい結果が得られました。次にサラウンドL/Rにもハイトを加えると、音場がさらに濃密になりました。さらに5.1chスピーカーとハイトが有機的につながり、もっとも自然に響く配置を探るため、数年間で約300通りを試しました」(ベーレン氏)

 その結果、5.1chの上方に4chのハイトスピーカーを置く9.1ch配置がベストと分かった。これが2005年のことだ。5.1chのベースとハイトからの反射音がもっとも自然に緊密につながる位置としては、ハイトスピーカーがメインスピーカーの上方約30度の角度に置かれるのが望ましいという。

 ② イマーシブサウンドの基本は、オブジェクトではなく、チャンネルベース。「自然な音場再現では、チャンネルベースに敵うものはありません。マスタリング情報が保たれるのも、チャンネルベースだけです」(ベーレン氏)

 確かに移動感・距離感の表現はオブジェクトベースのオーディオが得意とするところだが、音場の広がりや深さ、濃密さの表現などはチャンネルベースの方がいい。

 ③ ハイレゾ再生。これこそ、音楽家のベーレン氏ならではのこだわりだ。9.1chのすべてが192kHz/24ビットまで対応する。これは2005年から2009年に掛けて開発に成功した「限りなくロスレスに近いオーディオコーデック」技術の成果だ。実際にオーロ3Dの音を聴いてみると、ハイレゾ+音場の芳醇さが、「場の音楽」を豊かに体験させてくれることが分かる。オーロ3Dはハイレゾ時代にこそ活きるフォーマットなのだ。

画像: こちらは映像作品のリファレンスシアター「オーロトリアム」。座席の中央にコントロールブースが置かれる

こちらは映像作品のリファレンスシアター「オーロトリアム」。座席の中央にコントロールブースが置かれる

画像: 兄弟でギャラクシー・スタジオを興したヴィルフリート・ヴァン・ベーレンさん(左)とガイさん(右)。中央が麻倉さん

兄弟でギャラクシー・スタジオを興したヴィルフリート・ヴァン・ベーレンさん(左)とガイさん(右)。中央が麻倉さん

自宅導入への大きなポイント
品格を得たAV8805の音

 さて、ベルギーのギャラクシー・スタジオで分かったオーロ3Dをわが家で体感するのに選んだAVセンター、マランツAV8805の話に戻ろう。オーロ3Dを聴きたいから、オーロ3D対応製品を導入するわけだが、なぜAV8805に決めたのか。その理由は2点ある。音質とわがホームシアターでのスピーカー設定の対応度の高さだ。さきほども述べたように、現代のイマーシブサウンドにおいては、音場と音質のどちらも均等にきわめて重要である。オーロ3Dを十全に高感動で再生するためには、音質の要素は絶対に欠かせない。

 私はAV8805を試聴して、従来機よりも遙かに音質向上したと聴いた。特に音の情報量、品位感など、格段によくなった。以前から私はマランツの音は「誠実」だと聴いてきた。基本に忠実で、バランスがよく、誇張や強調のない音……が、マランツのアイデンティティと認識してきたのだ。AV8805にはここに品格/高品質感が加わった。これがわがシアターに迎えるべき音だ。

 私のUAレコード合同会社の第一回リリース作、情家みえのCD『エトレーヌ』を聴くと、ひじょうに明確、明瞭。どこまでも透明感が高く、ハイフォーカスだ。特筆すべきは、ヴォーカルの質感、潤い、そして情緒感。音楽をさらに深く愉しむことを可能にする表現的な再現が、このアンプは上手い。情感豊かで、声にキレと輪郭感とヴィヴィッドさがあり、言葉のニュアンスをとても大切にしている歌い方が分かる。

 第2のポイントがスピーカーのチャンネル配置。実はわがシアターでは、この日が来るのを見越して(?)、ハイトスピーカーを考えうる(設置しうる)最大の数でインストールしていた。長方形の部屋の長辺にほぼ1.5mおきに5本、両辺で10本、つまり10のハイトチャンネルをすでに用意していたのである。

 でもこれまで使用していたAVセンターは最大4本のトップスピーカー対応なので、せっかく10本もあるのに、うち4本しか使っていなかった。AV8805はトップスピーカー6本まで設定可能になる。

 そこで、作戦はこうだ。オーロ3Dでは「5.1.4ch」、ドルビーアトモスは、「5.1.6」と別々に運用する。

 オーロ3Dでは、ベースとなる床置きスピーカーの近辺上方(30度の関係)にペアのハイトスピーカーを配置することを推奨しているので、5.1chシステムの場合は、必然的にハイトスピーカーは2ペア(4本)となる。ところがドルビーアトモスでは、ハイト/トップスピーカー3ペア(6本)の設定も可能なのだ。

画像1: 自宅導入への大きなポイント 品格を得たAV8805の音
画像: 麻倉さんの視聴室は、5組10本のハイトスピーカー(リンのClassik Unik)が設置された状態。これは来るべきAuro-3Dに備えてのことで、Auro-3Dでは②と④を、ドルビーアトモスでは②と③と④を鳴らす……といった具合に使い分けることを想定している。①や⑤の運用は試聴を重ねて検討していくとのこと

麻倉さんの視聴室は、5組10本のハイトスピーカー(リンのClassik Unik)が設置された状態。これは来るべきAuro-3Dに備えてのことで、Auro-3Dでは②と④を、ドルビーアトモスでは②と③と④を鳴らす……といった具合に使い分けることを想定している。①や⑤の運用は試聴を重ねて検討していくとのこと

画像2: 自宅導入への大きなポイント 品格を得たAV8805の音
画像: Auro-3Dは、5.1chのベースに対して2組4本のトップスピーカーを組み合わせることを基本とする(Auro 9.1)。さらに7.1chをベースにトップスピーカーを増やすAuro13.1も用意され、AV8805ではこれも再生可能だ

Auro-3Dは、5.1chのベースに対して2組4本のトップスピーカーを組み合わせることを基本とする(Auro 9.1)。さらに7.1chをベースにトップスピーカーを増やすAuro13.1も用意され、AV8805ではこれも再生可能だ

オーロの理念を実感できる
AV8805のイマーシブサウンド

 オーロ3Dを「5.1.4ch」で聴く。 ウィーン・フィル2017年のニューイヤー・コンサートのBDは、演奏会場の響きの臨場感が実に生々しい。ウィーン・フィルならではの独得な芳醇なる質感は、まるで眼前で聴いているよう。ウィーン楽友協会の大ホールはステージが高く、着座位置よりも高いところから音が振ってくる。厚くて同時にクリアーという大ホール特有の響きがリアリティを持って体験できた。ベーレン氏の徹底的に「自然さ」を目指した開発成果が、AV8805を通して私に熱く語り掛けているような気がした。

 ニューイヤー・コンサートは完全な音場型の音源だが、ハイトchにもしっかりとその音像が割り当てられるジョージ・マックレーのBDオーディオ『LOVE』もたいへん面白い。ソウルミュージックを構成するドラムス、ギター、ベースなどの楽器が、各チャンネルに割り当てられ、リスナーは立体的に展開するバンドの中で音楽を聴くことになる。平面サラウンド時代にも、こうしたミックスの作品はあったが、イマーシブではさらに興趣が高まる。しかもハイレゾだ。

 AV8805を迎え入れ、私はさらにイマーシブサウンドの虜になりそうだ。

CONTROL AV CENTER
marantz
AV8805     ¥500,000+税
●接続端子:HDMI入力8系統、HDMI出力3系統、アナログ音声入力9系統(XLR、RCA×8)、7.1chアナログ音声入力1系統(RCA)、15.2chプリアウト2系統(XLR、RCA)、他 ●寸法/質量:W440×H185×D410mm/13.7kg ●問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター ☎︎0570(666)112

 

画像: オーロの理念を実感できる AV8805のイマーシブサウンド

基本システムを共有するデノンのAVC-X8500Hも、ソフトウェアアップデートでAuro-3Dのデコードに対応した

特別企画/協力:ディーアンドエムホールディングス

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